「大腸がんの検査」にはどのような方法があるかご存知ですか?検査費用も解説!
大腸がんは初期に自覚症状が現れにくく、患者さんが気づかないうちに進行してしまっていることがあります。
各市区町村が大腸がん検診を実施しており、結果によっては内視鏡検査やCT検査などの精密検査が必要です。そこで、この記事では精密検査について詳しく解説します。
また、患者さんが受診を検討できるよう症状についても詳しく解説していますので参考にしてください。
この記事が、患者さんの健康な生活に役立てば幸いです。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
大腸がんとは?
大腸がんとは、その名の通り「大腸のがん」で初期では自覚症状が現れにくいのが特徴です。大腸がんには、以下のような2つのタイプがあります。
腺腫という良性のポリープががん化して発生するがん
正常な粘膜から直接悪性の腫瘍が発生するがん
大腸は結腸と直腸よりなり、結腸には、盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸があります。日本人で多いのは、直腸がん・S状結腸がんです。次いで上行結腸がん・直腸S状部がん・横行結腸がん・盲腸がん・下行結腸がんの順で多いといわれています。
大腸がんの初期症状は血便・便秘や下痢など排便習慣の変化・便が細くなる(狭小化)・残便感・貧血などで、患者さん自身が病気だと認識しにくい症状です。そのまま放置していると、粘膜の大腸がんが大腸の壁から腹腔内に侵入して散らばる腹膜播種が起こります。
また、大腸がんは大腸のリンパ液を通じてリンパ節転移をしたり、血液を通じて肝臓・肺など別の臓器に遠隔転移したりする可能性がある病気です。
初期で自覚症状があまりないだけに、大腸がんの発見は難しいといえます。そのため、検診などで40歳以上の方には大腸がんの検査が実施されているのです。
大腸内視鏡検査について
大腸がんの検診では、最初に「問診」と「便潜血検査」をします。その結果「大腸がん」の疑いがある場合は、内視鏡などによる精密検査が必要です。
大腸内視鏡検査では、肛門から内視鏡を挿入して直腸から盲腸までの大腸全体を検査します。画像強調観察や拡大観察という手法を用いれば、病変部をより精密に検査することも可能です。画像強調観察では白色光を変換して粘膜の表面の模様・血管の輪郭・色を強調して観察をします。
なお、検査の前には大腸内をきれいにするために下剤の服用が必要です。大腸の内視鏡検査には、以下のような特徴があります。
病変組織を採取し確定診断がつけられる
小病変であれば検査中に切除可能
拡大内視鏡により病変の評価が可能
検査時に疼痛を伴うことがある
狭窄部位があればその奥は確認できない
順番に解説します。
病変組織を採取し確定診断がつけられる
検査時にポリープなどの病変が見つかった場合、病変の一部あるいは全体を採取して(生検)悪性か良性かを判断する悪性度を調べることが可能です。
病理を専門とする医師が確定診断を行います。
小病変であれば検査中に切除可能
大腸の内視鏡検査では、検査中に小さい病変やポリープを切除して治療することが可能です。
内視鏡による治療方法としては、以下の2つが挙げられます。
内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)
内視鏡的粘膜切除術(EMR)
ポリープの形状や大きさに合わせて治療方法が選択されています。
拡大内視鏡により病変の評価が可能
大腸がんの内視鏡検査でも拡大内視鏡が多く使用されるようになってきました。拡大内視鏡を使用すれば、病変部の表面を最大100倍まで拡大して見ることが可能です。
特に、血管構造を強調して診断を補助する特殊光NBI(Narrow band imaging)と拡大内視鏡を使用すると、表面構造と表面微細血管構造を詳細に観察できます。この検査で十分な情報が得られることから、生検を行わなくても病理学的診断を行うことが可能なケースが増えてきました。
色素を使って染色した後に拡大内視鏡を用いて、色素により強調された病変部の浸潤度合いを観察した例もあります。ポリープに関しても、「治療が必要なポリープか」「放置可能なポリープか」の判断が可能です。生検のための切除を伴わないため、患者さんの体の負担も小さくなります。
検査時に疼痛を伴うことがある
内視鏡検査の際に、疼痛を伴うことがあります。腸が長い患者さんや憩室や癒着がある患者さん、腸の形がほかの人と違う(例えば腸回転異常症や腸間膜遺残症)患者さんは痛みを訴えやすい傾向です。
その場合は、静脈麻酔を使用して検査することも可能ですので検査を担当する医師に相談しましょう。
狭窄部位があればその奥は確認できない
大腸内に狭窄部位がある場合、その先まで内視鏡が入らず狭窄部位の奥は確認できません。その場合は、大腸のX線検査を併用します。
大腸のX線検査は、大腸全体のX線写真をいろいろな方向から撮影する検査です。この検査では、大腸を空にした状態で肛門からバリウム(造影剤)を注入して空気で大腸をふくらませた状態で撮影を行います。狭窄部まで内視鏡による観察を行い、その先を大腸のX線検査で検査するのが一般的です。
大腸CT検査(CTC検査)について
大腸がんの検査方法としては、大腸CT検査(CTC検査)もあります。炭酸ガスで大腸を膨らませ、低線量CTにより撮影する検査です。
腸が癒着していたり腸が長かったりして内視鏡が入らなかった患者さんにも適した検査方法になります。大腸CT検査の特徴は以下の5点です。
大腸内視鏡に比べて検査中の痛みが少ない
大腸だけでなく全身の臓器を評価できる
大腸ヒダの裏側も確認できる
病変を認めても組織採取はできない
妊娠中は受けられない
順番に解説します。
大腸内視鏡に比べて検査中の痛みが少ない
大腸CT検査では、大腸に炭酸ガスを入れるための細いチューブを肛門から入れます。
このチューブは肛門から数センチの位置までしか入れないので痛みはあまりありません。よって、大腸全体に内視鏡を入れる内視鏡検査よりも検査中の痛みが少なくて済みます。
大腸だけでなく全身の臓器を評価できる
大腸CT検査では、大腸だけではなく全身の臓器を評価できます。CTを使えば腹部全体の画像を取ることが可能なためです。
例えば、肝臓・膵臓・胆のう・腎臓・子宮・卵巣・前立腺などほかの臓器も一緒に撮像されてこれらの情報も得られます。
大腸ヒダの裏側も確認できる
CT検査では、内視鏡では観察しにくい大腸のヒダの裏側も確認できます。
CT装置は、得られた情報からコンピューター処理で体の断面画像を作成する装置です。大腸の断面をさまざまな箇所で作成できるため、内視鏡では観察しにくい大腸のヒダの裏側も観察できます。
病変を認めても組織採取はできない
大腸CT検査では、病変が認められても組織採取はできません。CT装置は外部から撮像する装置であり、体内の組織を採取する手段をもっていないためです。
病変が認められた場合は、後日内視鏡検査および治療を行うこととなります。
妊娠中は受けられない
大腸CT検査は、妊娠中は受けられません。
妊娠中の人もしくは妊娠している可能性がある人の場合、胎児が放射線の影響を受けやすいため検査を受けることができません。妊娠中や妊娠の可能性がある場合は、必ず医師に伝えてください。
検診で行われる直腸がんの検査方法とは?
大腸がん検診は、男女ともに40歳以上で実施される検診です。大腸がん検診の中には直腸がんの検査も含まれており、問診と便潜血検査を行います。
便潜血検査は、便の中に大腸がんやポリープなどによる出血が混じっていないかを調べる検査です。通常、便潜血は微量であり目には見えません。また、がんから毎回出血するわけではないので(出血する時もあればしない時もある)ため、検査では2日分の便を採取します。
大腸がんの検査についてよくある質問
ここまで大腸がんの症状や検査方法について解説してきました。ここでは「大腸がんの検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
大腸がんの症状にはどのようなものがありますか?
中路 幸之助(医師)
大腸がんで現れる症状は、血便・便秘や下痢などの排便習慣の変化、便が細くなる(狭小化)・残便感・貧血などです。これらの症状は体調が優れないときにも現れるため、がんの症状だと気づかないこともあるので注意してください。腫瘍が大きくなって腸管の内腔が狭くなって出現する症状は、腹痛・腹部膨満感・嘔気・嘔吐などです。腫瘍がほかの臓器へ転移・浸潤している場合は、他臓器の診察で大腸がんが発見されることもあります。
受診の目安について教えてください
中路 幸之助(医師)
40歳以上の方は、年一回の大腸がん検診を受けることをおすすめします。検診の結果「がんの疑いあり」と判定された場合はもちろんですが、質問1で挙げたような症状が続く場合は医療機関で受診しましょう。
大腸がんの検査費用について教えてください
中路 幸之助(医師)
各市区町村が実施するがん検診では、検診費用の補助があります。患者さんのお住まいの市区町村によって自己負担する金額が異なるため、各市区町村のホームページなどで確認しましょう。大腸がん検診コースなどを実施している医療機関もあります。例えば消化器がんの単独検診で79,200円、大腸がんの単独検診で大腸CTの場合は57,200円程度です。
編集部まとめ
ここまで、大腸がんとその検査方法について解説しました。大腸がんは初期に自覚症状が現れにくく、患者さん自身が気づかないうちに進行している場合もあります。
40歳以上になったら市区町村の大腸がん検診を毎年受けましょう。検診の結果、「がんの疑い」がある場合は必ず精密検査を受けてください。
また、この記事で解説した大腸がんの症状によく似た症状が続く場合は早めに医療機関を受診しましょう。
大腸がんと関連する病気
「大腸がん」と関連する病気は、4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
大腸がんと関連する病気
家族性大腸腺腫症リンチ症候群潰瘍性大腸炎クローン病これらの病気がある人は、大腸がんになる可能性が高いと報告されているので注意しましょう。
大腸がんと関連する症状
「大腸がん」と関連している症状は7個ほどです。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
血便便秘・下痢
便が細くなる
残便感お腹が張る慢性的な出血による貧血・めまい
腹痛・嘔吐
血便は痔などでも起こるため放置しがちです。また、便秘・下痢も体調不良で起こるため見過ごしてしまう可能性があります。しかし、あまり長引く場合など異変を感じたら早めに医療機関を受診してください。
参考文献
大腸がん(結腸がん・直腸がん)について(国立がん研究センター)
大腸がん(結腸がん・直腸がん)検査(国立がん研究センター)
CT検査とは(国立がん研究センター)
検診費用(国立がん研究センター中央病院)