「飲み込みやすい介護食」とは? 食材・形態から市販の介護食の選び方まで【介護福祉士解説】

写真拡大 (全4枚)

お家で作る介護食はどんなものがよいのか、一度は悩んだことがあるという方は多くいらっしゃいます。また、突然食べる量が減る、むせるなどが増えた場合は、食事形態が合っていない可能性があります。そこで今回は、高齢者が飲み込みやすい介護食や注意点について介護福祉士の青木さんに解説していただきました。

監修介護福祉士:
青木 崇(介護福祉士)

大学卒業後、5年間ECショップ運営に携わる。その後介護の仕事に興味を持ち転職、現場で働きながら介護福祉士を取得し、障がい者支援・高齢者支援に10年間携わる。これらの経験を活かし、現在は介護関係・EC関係の記事を執筆するWebライターとして活動中。

介護食とは? どんな形態の食事がある?

編集部

そもそも介護食とはどのような食事でしょうか?

青木さん

介護食とは、介護が必要な方向けの食事のことです。加齢や病気により「噛む力」や「飲み込む力」が弱くなった方でも食べやすい硬さ・形状に工夫されています。

編集部

介護食には種類がありますか?

青木さん

介護食は食べる方の噛む力や飲み込む力に合わせて、硬さや形状、食材の大きさなどを変更します。介護食の種類は、主に刻み食・ソフト食・ミキサー食・ゼリー食の4種類です。

刻み食:

1cmや5mmなどのように、食材を細かく刻んだ食事のこと。噛む力が弱く、飲み込む力に問題がない方に向いている

ソフト食:

食材を舌でつぶせるほどやわらかく調理した食事のこと。噛む力・飲み込む力ともに弱い方に向いている

ミキサー食:

食材をミキサーにかけてペースト状にした食事のこと。場合によっては、食事にトロミを付けて誤嚥を防止する。噛む力・飲み込む力が著しく弱い方に向いている

ゼリー食:

食材をミキサーにかけてポタージュ状にしたものを、さらにゼラチンや寒天で固めてゼリー状にした食事のこと。噛む力がない方に向いている

編集部

市販の介護食を選ぶ基準はありますか?

青木さん

市販の介護食を選ぶ際は、「ユニバーサルデザインフード」や「スマイルケア食」を参考にしてください。

編集部

「ユニバーサルデザインフード」とは何ですか?

青木さん

日本介護食品協議会が定めた介護食の基準です。介護食を「容易にかめる」「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」「かまなくてよい」の4つに分類し、噛む力・飲み込む力を参考に選択できます。

参照: 日本介護食品協議会 ユニバーサルデザインフードとは

編集部

では、「スマイルケア食」とは何ですか?

青木さん

農林水産省が提案する基準で、介護食を青・黄・赤の3色で分類します。

青:噛む力・飲み込む力に問題がないものの、栄養補給を必要とする方向け

黄:噛む力に問題がある方向け

赤:飲み込む力に問題がある方向け

参照:農林水産省 スマイルケア食(新しい介護食品)

介護食に適した食材・味付けの選び方のポイントは? 高齢者が食べにくい食材も解説

編集部

介護食に適した食材の選び方を教えてください。

青木さん

介護食に適した食材は、やわらかく・飲み込みやすいものになります。具体的には、脂ののった魚や豆腐、ジャガイモやかぼちゃなどが挙げられます。調理でやわらかくなる食材も介護食に向いています。また、食材自体がトロミの役割をするオクラやなめこ、とろろ昆布なども介護食向きの食材です。

編集部

反対に介護食に向いていない食材はありますか?

青木さん

介護食に向いていない食材は、硬くて飲み込みにくい食材、もちのように弾力性がある食材で、誤嚥・窒息のリスクがあるため向いていません。さらに、パサパサとした食材や口のなかでバラバラになる食材や水・お茶などのようにさらっとした水分も誤嚥しやすいので注意が必要です。

編集部

介護食を作る際の味付けのポイントを教えてください。

青木さん

介護食を作る際は、食べる方の好みに合わせて味付けをするのがポイントです。「おいしい」と感じてもらえることが食欲の増進に役立ちます。ただし、高齢になると味覚が鈍感になるため、高齢者は濃い味付けを好む傾向にあります。好みに合わせつつも、塩分を控えて、健康面・栄養面に配慮しながら味付けをすることが大切です。

編集部

介護食を嫌がる方に食べてもらうにはどのような工夫がありますか?

青木さん

介護食を食べてもらうには、「おいしそう」と感じてもらうことが重要です。とくにミキサー食やゼリー食のように、もとの食材がわからない場合は、目でも楽しめるように形を整えることをおすすめします。ほかには、料理のメニューを伝えることも有効です。「食べてみよう」という意欲を引き出せることもあります。

食事介助の際の流れは? 食前・食中・食後の注意点

編集部

食事介助をする際、食前の注意点はありますか?

青木さん

まずは食事介助の前に、介助者の姿勢が適切か確認します。基本的には座った状態で食事をしてもらいますが、座位を維持するのが困難な方には体の角度を45~60度程度に倒した状態で食べていただくこともあります。クッションなどを適宜使用し、食べやすい姿勢に整えることも重要なポイントです。また食事介助をする前に、右側・左側のどちらから食事介助をするのか、スプーンの大きさが適切かなども確認します。

編集部

食事介助中の注意事項を教えてください。

青木さん

食事介助中は、誤嚥や窒息のリスクに注意する必要があります。そのため「一口の量が適切であるか」を確認し、口に運んだ後は飲み込んだことを都度確認します。重要なポイントは、飲み込んだことを確認してから、次の一口を介助することです。

編集部

食事介助を終えた後も注意すべき点はありますか?

青木さん

食事を終えた後は、服薬を忘れていないかを確認しましょう。高齢者の多くは薬を服用しており、服用のタイミングは薬によってバラバラです。どのような薬を服用しているかを把握しておきましょう。また、誤嚥を予防するには食後の口腔ケアが重要です。さらに食後すぐに横になると、食べたものが逆流して嘔吐や逆流性食道炎の原因になります。食後30分は横にならないよう注意しましょう。

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

青木さん

介護食は噛む力・飲み込む力が弱くなった方の介護に不可欠です。しかし、必要以上にやわらかい介護食を提供するとますます噛む力・飲み込む力が弱くなる原因にもなりかねません。適切な介護食の形態を見極めるためには、専門医の診断を受けることもおすすめします。

編集部まとめ

介護食は噛む力・飲み込む力が弱い方向けの食事のことです。適した硬さ・形状の食事を提供することで、栄養を口から摂取できるだけではなく、食事を楽しんでいただけるでしょう。在宅介護の方は、市販の介護食を利用することで介護の負担を軽減するのにも役立ちます。もし食事の形態に不安な点があれば、専門医に確認することをおすすめします。

近くの内科を探す