中国の国産旅客機C919とARJ21が、中国国外の航空ショーで揃って“海外デビュー”を果たしました。実は同時に、ボーイング787やエアバスA350に似た旅客機の大型模型も展示しています。この機は欧米旅客機の “コピー”となるのでしょうか。

そもそも ARJ21も「MD-80・90」の中国版

 2024年2月に開催されたシンガポール航空ショーで、中国は自分たちで開発したとするジェット旅客機「C919」とリージョナル・ジェット機「ARJ21」の2機種を“海外デビュー”させ、世界的に大きな注目を集めました。しかし同国はこの“続編”の準備をすでに始めています。「より大型の中国産旅客機」を製造しようというものです。


2月のシンガポール航空ショーで展示されたC929の模型(赤い垂直尾翼)。C919やARJ21の模型と並んだ(清水次郎撮影)。

 150〜170人乗りのC919は、単通路機であるボーイング737やエアバスA320と競い合う大きさで、中国は将来、C919の世界への販路をこれら2機種より拡大しようと狙っています。

 そして、C919に先立ち開発したのが、同航空ショーで同時に展示した100席クラスのリージョナル旅客機ARJ21です。中国が本格的に開発し、大量生産に入ることができた初めての旅客機です。

 このARJ21は、米国にかつてあった航空機メーカー、マクドネル・ダグラスが開発したヒット機の系譜に連なる「MD-80・90」シリーズのライセンス生産などで得た技術を用いてつくられ、設計の類似性は、実質的に“コピー品”といわれているほどです。そして、その技術をステップアップさせて登場したのがC919です。

 しかし、そのような中国は世界各国の目を意に介さず、屋内展示場のCOMAC(中国商用飛機有限公司)のブースで、C919よりさらに大型の「C929」と銘打った旅客機の模型も展示しました。こちらも、明らかにどこかで見たようなルックスです。

中国版「787&A350」もし実際にデビューしたら

 C929は、名前から分かる通りC919の次作となります。290人乗りで客室は2本の通路を持つワイドボディ(広胴)機とされ、客席数からも、国内の航空会社でも採用されているボーイング787やエアバスA350のライバルを目指していると観測されています。

 機体の大きさが似ていることに加えて、模型を細かく観察すると、端のほうで反り返るような主翼は787に、操縦室前を斜めに切り落としたような鋭角的な機首は、787はおろかA350にもそっくりに思えてきます。C929もARJ21と同じように、欧米機の“コピー”なのでしょうか。


ANAのボーイング787とJALのエアバスA350-900(乗りものニュース編集部撮影)。

 実は、中国の天津にはエアバスの最終組立工場があり、そこでA350の客室の設置や塗装、引き渡し作業などが行われています。「中国製A350」の1号機も、2021年に中国東方航空へ引き渡されました。こうしたことから中国国産のC929へ、787よりも、A350の技術が流入していることは、あながち否定できないかもしれません。

 ただし、“コピー”でなく、中国が自前の技術のみでC929を開発し、実用化した時の方が、ボーイングやエアバスにとっては脅威となるかもしれません。C929は当初ロシアと共同開発するはずでしたが、2022年2月に始まったウクライナ侵略により、現在は自分たちだけで開発を進めているとも聞かれます。

 また、中国は約14億人の人口と広い国土を持つことから、機体を世界で流通させるために必要な欧・米航空当局側の承認が降りずとも、中国内だけの運用のみで、ある程度の需要を満たせるのも強みでしょう。C919もARJ21もこれまでは、そのような使われ方をしてきました。

 それだけに、もしC929を完成させ商業運航に入ることができたなら、それは中国が確固とした旅客機開発の技術を得たことを意味します。今は模型のみの展示ですが、将来的に今回の航空ショーのようにC929の実機が姿を現わせば、現状ではボーイングやエアバスという2社の独壇場となっている大型旅客機の開発に、中国は挑戦してくるのかもしれません。