オズワルド畠中が公表した初期の「腎臓がん」 自覚症状や検査方法とは?【医師解説】
お笑いコンビ、オズワルドの畠中悠さん(36)が、自身の出演したラジオ番組内で、初期の「腎臓がん」を患っていると公表しました。3月7日まで活動を休止し、入院して手術を受けることも決まっているとのことです。
腎臓がんは、50歳以降の方がかかりやすい病気だと言われており、初期症状がほとんどないというのが特徴です。そのため腎臓がんの発見は、ほかの病気で画像検査をしたのをきっかけに見つかることが多いがんと言われています。
今回の記事では、腎臓がんの初期症状や特徴、検査方法について解説します。腎臓についての知見を増やし、早期発見・予防につとめましょう。
※この記事はMedical DOCにて【「腎臓がんの初期症状」はご存知ですか?原因・検査法も解説!【医師監修】】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
≫ 「腎臓がんの生存率」はご存知ですか?原因や症状についても解説!【医師監修】監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科
腎臓がんとは?
腎臓がんとは、腎臓の細胞ががん化したもので、腎がんといわれることも多いです。
腎臓はちょうど腰のあたりの背中側に2つ、左右対称にあり、血液をろ過して尿を作る臓器です。また、血圧のコントロール・造血ホルモンの生成・ビタミンDの活性化といった働きもあります。
腎臓は皮質・髄質・腎杯・腎盂の4つのパートに分かれています。このうちの皮質と髄質を「腎実質」といい、腎臓がんの中でも腎実質の細胞が悪性腫瘍になったものが「腎細胞がん」です。
腎臓がんの多くは腎細胞がんであるため、一般的に腎臓がんといえば腎細胞がんを指しているケースが多いです。一方腎盂に発生した「腎盂がん」は、腎細胞がんとは性質や治療法が異なるため、区別しています。
腎臓がんの特徴は、さまざまな臓器や部位に転移する可能性が高いことです。早期発見で腎臓内にがんが閉じ込められている状態であれば、体に負担のかからない治療法での治癒が期待できます。
腎臓がんは、1年間で10万人あたり15人程度が発症しているといわれています。
男女の発症比率は2:1 で、男性の方がやや多く発症しているのが特徴です。また発症年齢で多いのが60~70歳ですが、若年層でも発症することがあります。
腎臓がんの初期症状は?
多くのがんには初期症状があり、早く気づけば早期発見・早期治療が可能です。では腎臓がんの初期症状にはどのような症状があるのでしょう。
初期のうちは自覚症状がほとんどない
残念ながら腎臓がんは、初期症状がほとんど自覚できません。
そのため、初期の腎臓がんは、人間ドックや他の病気の検査で偶然見つかることが多いのです。腎臓から転移した先にがんが見つかり、詳しい検査をした結果腎臓がんが見つかったというケースも珍しくありません。
血尿
腎臓がんは初期症状が少ないという特徴があります。その中でも初期症状としてあらわれるのが血尿です。
腎臓は尿を作る臓器ですから、腎臓に何らかの異変が起こると、尿に血液が混じることがあります。
血尿は、目で見てわかる「肉眼的血尿」ばかりではありません。顕微鏡でないとわからない「微小血尿」があるため、尿検査が必要になります。
腹部のしこり
腹部のしこりも腎臓がんの初期症状です。
自分で気づいて病院を受診するという人もいますが、ほとんどは定期健診などで医師が触診をして発見されることの方が多いでしょう。
膨満感など、腹部に何か違和感があれば、お腹周りを探ってみてください。不安であれば、医師に相談してみましょう。
背中や腰の痛み
背中や腰、とくに片側だけに痛みのある場合、腎臓にできた腫瘍が大きくなっている可能性があります。
とくに普段から腰痛に悩んでいるという方は、症状を見逃しやすくなります。いつもの痛みの様子とは違うと感じたら、検査を受けましょう。
足のむくみ
腎臓に何らかの異常があると、むくみ症状があらわれます。
とくに足のむくみがひどくなります。腎臓の働きは、血液をろ過して余分な水分・老廃物・塩分を体外に排出することです。
腎臓に何らかの異常があると、血液をろ過できなくなるため、体内に溜まった水分や塩分でむくみが生じます。
腎臓がんの原因
腎臓がんの原因には生活習慣のほかに遺伝子因子・環境因子があるといわれています。
生活習慣では、肥満や高血圧、喫煙習慣がリスク要因としてあげられています。遺伝子因子として知られているのが「フォン・ヒッペル・リンドウ病」です。
また、長期に渡って人工透析をしている人も腎臓がんになりやすいとされています。
腎臓がんの検査・診断
腎臓がんの疑いが出たときには、さまざまな検査を行いがんの有無・大きさ・形状・転移の有無などを調べます。
検査は今後の治療方針や予後を決める大切なものです。ここではどのような検査が行われるのかを解説していきます。
超音波検査
超音波検査は、超音波を体にあてて、臓器からの反射の様子を画像にする検査です。
腎臓がんにおける超音波検査の目的は、がんのある場所の特定・がんの大きさや形・がんの周辺臓器との関係を確認することです。
超音波検査は、痛みや放射線による被ばくの不安もほとんどなく、体への負担をできる限り抑えた検査方法といわれています。
CT検査
CT検査は、造影剤を使った検査です。
造影剤を静脈から注入し、短時間で多くの画像を撮影できるのが特徴です。腎臓がんがあると思われる部位の血液の流れなどを観察することにより、がんの有無を検査します。
体の周囲からX線を当て、体の中の吸収率の違いを断面図にして画像で現わします。5~15分程度の短い検査で広範囲を検査できるため、腎臓がんが疑われた場合、大半の人がCT検査を受けることになるでしょう。
ただし、造影剤にアレルギー反応がある場合には、CT検査はできません。
MRI検査
MRI検査は、腎臓がんの有無・腎臓がんの大きさ・周りの臓器への浸潤を診断する検査です。
強力な磁場を発生させ、周波数の電波を体に当てて体の内部の断面を検査します。CT検査に使われている造影剤にアレルギー反応がある人や、腎臓機能に障害がある人に対して行われる検査です。
MRI検査は、病変部と正常な組織とのコントラストの違いで区別しやすくなっています。X線を使わず、地場と電波だけを使うため、被ばくの不安がほとんどありません。
生検
生検は、画像検査ではがんの有無が確定できない場合に行う検査です。
画像だけでは良性か悪性か判断できない場合にも使います。直接細い針を刺して組織を採取し、顕微鏡などで詳しく調べます。一般的に麻酔を使って行うため、1泊2日の入院が必要です。
血液検査
腎臓に異変があると、血液にもその影響が出ます。腎臓がんの場合、以下のような血液反応が見られます。
白血球や血小板の数が通常よりも多くなる
総タンパク・アルブミンの値が低くなる
CRP・AST・ALT・クレアチニン・カルシウムの値が高くなる
このような異常を血液検査で見つけ出し、腎臓がんのリスクを評価します。
腎臓がんの治療方法
腎臓がんの治療方法は、ステージによって大きく異なります。
腎臓がんが腎臓の中だけで留まっている場合は早期がんとされ、手術によって根治が期待できるでしょう。
手術では「部分切除」と「全摘出」があり、がんの大きさを考慮しながら選択されます。がんの直径が小さく、直径4cm未満であった場合はがんとその周辺の組織だけを取り除く「部分切除手術」が行われます。
部分切除であった場合には、腎臓の正常な機能を残すことができるため腎機能が保たれ、透析治療のリスクが少なくなるでしょう。がんの直径が4cm以上になると、部分切除ではがん細胞が残ってしまうリスクを考えなければなりません。
この場合は、腎臓をすべて取り除く「全摘出手術」が行われます。外科手術は「開腹手術」と「腹腔鏡手術」の2種類があります。
開腹手術は腎臓がんが大きく、さらに周囲の臓器に癒着や浸潤が見られた場合に行われる手術です。腎臓がんが初期で腎臓以外に転移などが見られないときに行われるのが腹腔鏡手術です。
腹腔鏡手術はお腹に小さな穴を開け、そこに炭酸ガスを送り込み、腹部を膨らませます。そしてカメラの付いた腹腔鏡や手術器具を腹腔内に入れて手術を行います。
開腹手術よりも体への負担が小さいため術後の回復も早く、社会復帰の時間も短くて済むというのがメリットです。そのほか、腎臓がんが進行し、他の臓器やリンパ節にまで転移している進行がんでは薬物治療も併用されます。
進行がんでも転移の箇所が少ない場合は、手術で全摘出をした後、抗がん剤治療が行われます。また転移先が多い場合には、手術は行わずに薬物治療のみ行うことも検討されるでしょう。
薬物治療では、がん細胞に栄養を送る血管を作らせないための「分子標的薬」、がんを攻撃する免疫細胞の働きを活性化する「免疫チェックポイント阻害薬」が使われます。
腎臓がんの治療は、現在どのステージになるのかを見極めることが非常に重要となってきます。
腎臓がんについてよくある質問
ここまで腎臓がんの症状などを紹介しました。ここでは「腎臓がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
腎臓がんの再発について教えてください。
腎臓がんは、がんが腎臓に留まっていて根治するために腎臓を摘出した場合でも、20%~30%の人が再発するとされています。また、どのような場合に再発しやすいのかは未だに原因がわかっていません。そのため再発を防ぐ方法も確立されていませんが、少なくとも年に1回は定期的に画像検査を受け、できるだけ早期に発見することが大切です。再発した場合の治療は、薬物療法が中心となります。
予防のために注意するべきことはありますか?
腎臓がんの原因とみられているのが生活習慣です。これはがん全般にいえることですが、食事の栄養バランスを考え、肥満の改善や禁煙を心がけましょう。また、定期的な腎臓がん検診も大切です。腎臓がん検診については、胃がんなどのように決められたがん検診はありません。しかし気になる症状があったら、医療機関で早期に画像検査をしてもらいましょう。
編集部まとめ
腎臓がんは、初期症状がほとんどない病気です。そのため自覚症状が出たときには、既に進行している可能性が高くなります。
血尿・腹部のしこり・背中や腰の痛み・足のむくみなどの症状があらわれたら、できるだけ早く病院で検査を受けましょう。
また、腎臓がんは画像検査で見つかることの多い病気です。肥満・高血圧・喫煙・長期に渡り人工透析を行っている人は、積極的に画像検査を受けることをおすすめします。
腎臓がんと関連する病気
腎臓がんと関連する病気は11個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
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腎盂・尿管腫瘍
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慢性腎炎ネフローゼ症候群尿を作る腎臓をはじめ、尿を貯める膀胱など排尿器官に異常が出ます。
腎臓がんと関連する症状
腎臓がんと関連する症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
血尿
むくみ
背中の痛み
腹部のしこり
ただし、腎臓がんの初期症状は自覚しにくいです。少しでも異変を感じたら医療機関で検査をしてもらいましょう。
参考文献
腎臓がん(腎細胞がん)について(国立がん研究センター)
腎臓がん(腎細胞がん)治療(国立がん研究センター)
腎臓がん(腎細胞がん)予防・検診(国立がん研究センター)