M-1ファイナリストや水ダウ芸人を続々輩出した「開運バイト」のスゴすぎる「ご利益」

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 ダウンタウンの松本人志が不在になったテレビ業界。それでも、冠を有した週7本のレギュラー番組は続行し、民放見逃し配信・TVerのバラエティ部門では「水曜日のダウンタウン」(TBS系)が依然として強い。そんな水ダウや「人志松本のすべらない話」(フジテレビ系)など、松本の関連番組で人気に火が点いた芸人といえば、チャンス大城だ。

 30年以上も売れない「元祖地下芸人」。2017年末に放送された「とんねるずのみなさんのおかげでした」(フジ系)の人気企画「博士と助手〜細かすぎて伝わらないモノマネ選手権〜」で悲願の初優勝を果たした後、松本マターの番組が増えた。昨年は「アメトーーク!」(テレビ朝日系)で、「苦節33年 チャンス大城芸人」で丸々1時間特集されるほどブレイク。ドラマや映画、ミュージックビデオの出演ほか、メジャータレントとしての仕事が急増した。

 これまでのアルバイトは枚挙にいとまがなく、イベント会場のドリンクカウンター、漫画喫茶の看板持ち、映画館、客引きほか、常にさまざまな職種を掛け持ち。最後のバイトは植木職人の補助だった。庭職人の指示に従いながら、草むしり、植木の伐採などを行った。日雇いで、日給1万円ほど。登録制で、登録者は俳優や格闘家、プロレスラーや芸人ほか時間の融通を最優先にしているフリーターが大半。芸人や俳優のたまごは突然のオーディションがあるため、バイト同士でシフトを交代して、ストレスフリーだった。

 この人材派遣業を営んでいる「親方」こと小林さとし氏は、ムエタイ元WKAムエタイ世界ライト級王者。現役時代は「野良犬」と呼ばれて、恐れられていた。当時はボクサー1本で食えず、複数のバイトを掛け持ち。この体験を生かして、夢を追う若者のために植木職人を補助する人材派遣会社を興した。

「小林さんは、ジムで子どもたちにボクシングを教えつつ、この会社を経営している。大城さんはもうバイト生活に出戻ることはないでしょうけど、芸人たるや将来の保証がない。そのため、登録は残したままという親方のイキな配慮があるそうです」(実話誌ライター)

 大城が卒業生になった後、この会社から2人のM-1ファイナリストが生まれた。モグライダーのともしげ、真空ジェシカの川北茂澄だ。2組は、「M-1グランプリ2021」で決勝戦に初進出。真空は昨年まで3年連続3度も決勝戦に勝ち進み、モグライダーは昨年大会で2年ぶり2度目の決勝進出を決めた。

「21年のM-1決勝進出決定の瞬間は、親方とバイトメンバーたちがそろって配信で観ていたそうです。最初に『真空ジェシカ』、2番目に『モグライダー』の名が呼ばれたとき、仲間たちは『うおーっ!』と歓喜。その輪の中心にいたのが親方。これぞほんとうの“アナザーストーリー”です」(前出・実話誌ライター)

 この開運バイトからはさらに、朝ドラ俳優が2人も誕生した。運命を変えたい若者たちにとっては吉報といえるか。

(北村ともこ)