ゲームを楽しむプレイヤーは、しばしば派手な効果音やBGMなどの大きな音にさらされることになります。サウスカロライナ医科大学のローレン・ディラード教授らの研究チームは、ゲーム内の大音量が聴力の低下や耳鳴りの発生につながる可能性を指摘しています。

Risk of sound-induced hearing loss from exposure to video gaming or esports: a systematic scoping review | BMJ Public Health

https://bmjpublichealth.bmj.com/content/2/1/e000253



Video gamers worldwide may be risking irreversible hearing loss and/or tinnitus | BMJ

https://www.bmj.com/company/newsroom/video-gamers-worldwide-may-be-risking-irreversible-hearing-loss-and-or-tinnitus/

これまでの研究で、ヘッドホンやイヤホンの長時間装着、ライブハウスなどで大音量で音楽などを聴くことは、潜在的に危険な騒音レベルの発生源として知られています。一方、ゲーマーの数は2022年時点で全世界に30億人以上と推定されているものの、ゲームが聴力低下に及ぼす影響について、これまで大規模な研究が行われてきませんでした。

そこで研究チームは合計5万3833人を対象とした14件の査読済み研究論文の分析を行いました。分析の結果、シューティングゲームにおける音の大きさが平均88.5〜91.2デシベル、レースゲームは85.6デシベルだったことが明らかになっています。

世界保健機関(WHO)のガイダンスでは、成人の場合、80デシベル以上の騒音に週40時間さらされると聴力低下のリスクが高まることが指摘されています。さらにWHOは、90デシベルの騒音を週に4時間、95デシベルの騒音を週に1時間15分以上聞くべきではないと警告しています。

また、射撃音のように1秒未満の短く大きな音である「インパルス音」は最大119デシベルにまで到達していることが判明しました。音の許容限界は子どもで約100デシベル、大人で約130〜140デシベルと言われており、インパルス音が危険なレベルの音量だったことが示されました。



加えて、男性は女性よりもビデオゲームのプレイ頻度が高く、より長い時間、ゲームの大音量にさらされていることが報告されました。

さらに、被験者からの自己申告データと被験者の聴力検査結果を組み合わせて聴力の評価を行った研究では、ゲームと難聴、ゲームと耳鳴りの相関関係が認められています。

研究チームは「今回分析を行った論文の数はわずか14件と限られていたものの、一部のゲーマー、特にゲームを頻繁に遊ぶプレイヤーや平均音量以上でプレイするゲーマーは、おそらく許容される騒音暴露限界を超えています。そのため、永続的な難聴や耳鳴りを発症するリスクが高まっていることが示唆されました」と結論付けました。



一方で、聴力低下を引き起こすゲームの種類やプレイヤーの居住地、性別、年齢などの影響に関してより詳細な研究を行い、ゲームと難聴の関連性をより強く確立させる必要がある点が今後の課題として挙げられました。

また研究チームは「今回の分析結果は、ゲーマーの間で安全なリスニングを促進することに役立つだけでなく、ゲームが持つ潜在的なリスクの認識と教育に焦点を当てた介入を積極的に行う必要性を示しています」と語りました。

なお、イギリスの王立聴覚障害者研究所は、「現在の音量から50%下げることが望ましい」「1時間ごとに少なくとも5分、定期的に休憩を取って耳を休ませるべき」「ゲームセンターなど周囲が騒がしい環境でゲームをプレイする際には、ノイズキャンセリングヘッドホンなどを使用して、騒音の許容値を超えないようにすべき」と推奨しています。