●CineBench R23・R24 / PCMark 10

既報の通りRaptor Lake RefreshことIntel Core 14th Genの6製品が10月16日に発表され、既に秋葉原などでも発売が開始されている。またこのIntel Core 14th Genを搭載したPCも各社から発売開始されている。このCore 14th Gen、性能の速報ベンチは笠原氏にお願いしたが、フルバージョンのデータをやっと取り終わったのでご紹介したい。

Raptor Lake RefreshことIntel Core 14th Genのベンチマークテスト、今回はフルバージョンとしてお届けする

余談だが、この世代から製品の呼び方が変わっている。Raptor Lake世代だとGen 13 Coreだったのが、Raptor Lake RefreshではCore 14th Genである。これはMeteor Lake世代がCore Ultraブランドで導入されることに向けての変更である。日本語でも同様に、Raptor Lakeは「第13世代Coreプロセッサ」だったのがRaptor Lake Refreshでは「Coreプロセッサ(第14世代)」に変更されている。ここからすると、Meteor LakeはCore Ultraプロセッサだが、続くArrow Lakeは「Core Ultraプロセッサ(第2世代)」とかになるのかもしれない。

製品紹介そのものは開封の儀や先の笠原氏のレビューで紹介されているので割愛する。最初に一つ最初にお断りしておくと、今回はCore i9-14900K/KFの目玉であるIntel Application Performance Optimizerのテストは行っていないというか、うまく動作せず行えなかった。笠原氏の記事にもあるように、Intel Application Performance Optimizerを利用するためには

BIOSでIntel Dynamic Tuning Technologyを有効にする(Photo01)

Intel Dynamic Tuning Technologyのドライバをインストールする

の2つが前準備として必要である。

今回ASUSのPrime Z690-Aを利用したが、こちらのページのChipsetを展開すると、Intel DTT 9.0.11401.38310が用意されているので、これをインストールして再起動する。これが済んだらMicrosoft Storeで"Intel Application Optimizer"をダウンロード、インストールする形になる。余談ながら、BIOSでDynamic Tuning Technologyを無効化したままだと、ダウンロードに失敗するという謎の振る舞いをする。まぁそれはいいのだが、起動するとこんな感じである(Photo03)。残念ながら「なぜ動かないか」を調べられるほど時間が無かったので、今回はApplication Performance Optimizerの利用は見送りとさせて頂いた。申し訳ないがご了承頂きたい。

Photo01: ASUSの場合、Advanced→Thermal Configurationメニューにこれが存在する。

Photo02: せめてもう少し判るエラーメッセージにしてほしかった。ちなみに"Intel Application Optimizer"のページにもあるが、今のところIntelのDownload centerからは入手できないので、Microsoft Storeから入手する事になる。

Photo03: CPU-ZでCore i9-14900Kが動作している事は明らかで、デバイスマネージャでもIntel DTTのドライバがロードされている事が示されているにも関わらず、これである。

もう一つお断りしておくと、今回はCore i7-14700Kの比較はない。本当はE-Coreが4つ増強されたこのCore i7-14700Kが一番性能差が出る製品なのだが、何しろ回ってこなかったからどうしようもない。ということでテスト環境は表1の通りである。

グラフ中の表記は

RX 7800 XT:AMD Radeon RX 7800 XT Reference

RTX 4070 :ASUS TUF Gaming GeForce RTX 4070

Core i5-13600K :i5-13600K

Core i5-14600K :i5-14600K

Core i9-13900K :i9-13900K

Core i9-14900K :i9-14900K

Ryzen 5 7600X :R5 7600X

Ryzen 7 7800X3D:R7 7800X3D

Ryzen 9 7950X :R9 7950X

Ryzen 9 7950X3D:R9 7950X3D

となっている。また解像度表記も何時もの通り

2K :1920×1080pixel

2.5K:2560×1440pixel

3K :3200×1800pixel

4K :3840×2160pixel

としている。

○◆CineBench R23(グラフ1)

CineBench R23

Maxon

https://www.maxon.net/ja/cinebench

グラフ1

最近は結果がインフレ気味となっているCineBench R23。それもあってCineBench R24では大幅に負荷が増えるものになり、数字も穏当なレベルに収まるようになったが、とは言えR23も広範に使われてきたので、一応示してみた。結果は御覧の通りで、Core i5-14600KはCore i5-13600Kと、Core i9-14900KはCore i9-14900Kと比べてMulti/Single共にそれぞれ3〜4%の性能向上が示されている。特にCore i9-14900Kは結果としてRyzen 9 7950Xを抜いている訳で、性能競争のためのベンチマークという観点では重要な結果ではあるとは思う。それが実アプリケーションでどこまで効いてくるのか、というのはまた別問題ではあるのだが(もっともAMDもこのCineBench R23の結果を声高にアピールしているあたりは、どっちもどっちというべきか)。

○◆CineBench R24(グラフ2)

CineBench R24

Maxon

https://www.maxon.net/ja/cinebench

グラフ2

そのCineBenchのMaxonが先日リリースしたのがCineBench R24。測定方法も変わり、一定期間(デフォルトでは10分)の間ひたすらレンダリングを行い、その間の平均レンダリング性能を計測する形になっている。なので、R23までは複数回測定を行ってその平均値を示していたが、R24では1回の測定のみにしている。またCineBench R24では久々にGPU Renderingも復活しているが、GPUが同一だと性能差が無い(実際試してみたが差が無かった)ので、こちらの結果は省いている。

結果はグラフ2に示す通りで、概ねR23と同傾向(スコアそのものは1桁少なくなった)になっている。とりあえずCore i9-14900KはRyzen 9 7950Xを上回るスコアを出しているし、Core i5-14600KもCore i5-13600Kを僅かながら上回る性能なので、それなりに意味はある製品更新というべきだろうか。

○◆PCMark 10 v2.1.2636(グラフ3〜8)

PCMark 10 v2.1.2636

UL Benchmarks

https://benchmarks.ul.com/pcmark10

グラフ3

グラフ4

グラフ5

グラフ6

グラフ7

グラフ8

おなじみPCMark 10であるが、Overall(グラフ3)を見る限り基本多少凸凹はあるもののほぼ同等レベルであって、ここであれこれ差が出るとは言い難い。Test Group(グラフ4)を見ると、Essential/Productivity/Digital Contents Creationでは差が無いに等しく(Digital Contents CreationではPOV-Rayを実施している関係で、コア数が多いほど有利なのはまぁ仕方がない)、差が明確にあるのはGaming程度。ただこれはGame Benchmarkで判断すべき項目であり、こちらで判断するのはどうかと思う(そういう意味でも、PCMark 10 Extended ScoreよりもPCMark 10 Scoreで判断すべきなのだろう)。細かく見て言っても、多少差があるのはProductivity(グラフ6)のSpreadsheetsとDigital Contents Creation(グラフ7)のRendering&VisualizationとPhoto Editing、それとApplications(グラフ8)のExcel程度で、後は大同小異といったところ。つまり普通に使う限りにおいては、コア数が性能に直結する一部のアプリケーションを除くと今回比較した8つのCPUでどれも差が無い、ということになる。

●Procyon / POV-Ray / TMPGEnc / 3DMark

○◆Procyon v2.6.848(グラフ9〜13)

Procyon v2.6.848

UL Benchmarks

https://benchmarks.ul.com/procyon

グラフ9

グラフ10

グラフ11

グラフ12

グラフ13

ではもう少しProfessional向けのワークロードではどうか? ということで次はProcyonである。今回はv2.6.848を利用したが、これをPhotoshop 25で動かすとInternal Errorで落ちてしまうため、今回はPhotoshop 24でテストを行った。ちなみにv2.6.920ではPhotoshop 25に対応したのだが、これがリリースされたのはベンチマークデータを取り終わった10月30日の事で、今回は間に合わなかった。

さてまずOverall(グラフ9)を見ると、全体的にIntel系が優勢で、AIのみでAMDが逆転、という感じになっているのが判る。Core i5-14600K/Core i9-14900Kの性能はCore i5-13600K/Core i9-13900Kから明確に上がっているあたりは、動作周波数の差が効いている感じだ。

Photo EditingではImage Retouching(Photoshopでのレタッチ操作)に差は無いが、Batch Processing(Lightroom Classicを使っての一括返還)で結構差がついているようだ。Detailを見てみると、どれかが特に遅いというわけでなく全般的にAMDが遅めという感じ(FaceDetectとかは大差ないが)ながら、ImportとかExportがやや長めに時間が掛かっている。ここでもCore i5-14600K/Core i9-14900KとCore i5-13600K/Core i9-13900Kの差は明白ではある。大きくは無いが、確実に向上しているのは事実だ。

Video Editing(グラフ11)も傾向は同じだ。正直AdobeのMedia Encoderは拡張命令のサポートが今二つくらいなので、そろそろ別のエンコーダに切り替えて欲しい気がする。AMD系で性能が芳しくないのもそのあたりがAMD系の性能が低い要因(後で出て来るTMPGEnc Video Mastering Worksの方がずっとちゃんとしている)だとは思う。それはともかくCore i5-14600K/Core i9-14900KはCore i5-13600K/Core i9-13900Kより3〜8%と結構大きな向上率を見せている。定格の数字より大きいというのは、要するに実際の動作周波数が結構高めになっているという事かもしれない。その分消費電力がどうなってるのか、が気になるところだ。

Office Productivity(グラフ12)もやはりIntel系が有利という傾向で、またCore i5-14600K/Core i9-14900KはCore i5-13600K/Core i9-13900Kと明確に性能差が見られる。ただ一番性能差が見られるのがPowerPointで、Excelとかはそこまで差が無いのはちょっと意外であった。

最後がAI Inference(グラフ13)だが、利用するモデルで結構差が出る。Deeplab v3やInception v4、Yolo v3などではAMDの方が傾向的に有利、ResNet-50は同等、MobileNet v3は混戦とった感じになっている。またここではCore i5-14600K/Core i9-14900KとCore i5-13600K/Core i9-13900Kの差も不明確である。もっともこうしたAI InferenceをどこまでCPUでやるのか? というのはちょっと悩ましいところであって、長期的にはGPUやAI Engineにオフロードされてゆく事を考えれば、そこそこで良いという考え方もあり得る。まぁAI EngineがCPUに標準装備されるのはもうちょっと後、という事を考えれば短期的にはAI Inference性能が高い事に越したことは無いのだが、結果を見る限り決定的な感じではない。少なくともCore i5-14600K/Core i9-14900KとCore i5-13600K/Core i9-13900Kの差はあまり感じられない(数字が増えている結果もあるが、MobileNet v3などCore i5-13600KがCore i9-13900KをぶっちぎってCore i9-14900Kに肉薄してるあたり、判断が非常に難しい)という感じだ。

○◆POV-Ray V3.8.2 Beta2(グラフ14)

POV-Ray V3.8.2 Beta2

Persistence of Vision Raytracer Pty. Ltd

http://www.povray.org/

グラフ14

こちらもおなじみである。傾向的にはCineBenchと似ているが、CineBenchよりももう少しIntel系CPUの性能が高い。ただこれは以前ここでも書いたが、Intel系CPUはNoise Functionにavx2fma3-intelを、AMD CPUにはavx-genericを使っているあたりで性能差が出ている。Zen 4コアだとavx2fma3が動作する筈なので、このあたりをそろそろ修正したバージョンが出てくれても良さそうなのだが、それはともかくとしてこの差を考慮すると、概ねCineBenchと同傾向として良いかと思う。

○◆TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.27.30(グラフ15)

TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.27.30

ペガシス

http://tmpgenc.pegasys-inc.com/ja/product/tvmw7.html

グラフ15

逆にCore i9-14900Kになって性能をさらに引き上げたにも拘わらず微妙にRyzen 9 7950Xに届かない、というテストがこちら(グラフ15)。利用しているのはペガシスのx265エンコーダであるが、Ryzen 9 7950Xはおろかやや動作周波数が低めに抑えられているRyzen 9 7950X3Dにも及ばない、というのは中々考えるものがある。ただCore i5-13600K/14600KはRyzen 7 7800X3Dを上回る性能を出しているのは、E-Coreとは言えやはりコアの数の威力が大きいという事を示している。

○◆3DMark v2.27.8177(グラフ16〜19)

3DMark v2.27.8177

UL Benchmarks

https://benchmarks.ul.com/3dmark

グラフ16

グラフ17

グラフ18

グラフ19

では3D性能は? ということでまずは3DMarkの結果を。Overall(グラフ16)では、WildLife/NightRaidといったGPU負荷の低いベンチマークではIntel系がやや有利(このあたりも不思議で、どういう理由でAMD系のフレームレートが低めなのか、が今一つ不明なままである)が、FireStrike以上になると互角というか差が無い感じである。まぁこれは想定通りの結果ではある。この結果はGraphics Testもほぼそのままである。強いて言えば、FireStrikeではCore i5-13600K/Core i9-13900KがCore i5-14600K/Core i9-14900Kを上回るという謎の結果になっているのがちょっと不思議だが、あとはまぁあまり番狂わせもなく、ほぼ互角といったところ。面白いのはPhysics/CPU Test(グラフ18)の結果で、ここでは全般的にIntelの方が有利である。ただNightRaidなどはそのままこれが結果にも響いている感じがあるが、FireStrikeではこの結果にも拘わらずOverallは同等というかAMDの方がややスコアが上である。その理由がCombined Test(グラフ19)で、これが妙にAMD系が有利な結果になっている。全般として、低負荷の環境はともかく負荷が上がるとほぼ変わらないという結果になっているし、ここでCore i5-14600K/Core i9-14900KのCore i5-13600K/Core i9-13900Kに対する優位性を見つけるのは難しい。

●ゲームその1: Borderlands 3 / Company of Heroes 3 / Cyberpunk 2077

○◆Borderlands 3(グラフ20〜26)

Borderlands 3

2K Games

https://borderlands.com/ja-JP/

ベンチマーク方法はこちらのBorderland 3の項目に準ずる。設定は

全体的な品質:ウルトラ

アンチエイリアス:テンポラル

である。

グラフ20

グラフ21

グラフ22

グラフ23

グラフ24

グラフ25

グラフ26

さて結果であるが、フレームレート変動(グラフ23〜26)で判るように差が出るのは2Kのみであり、その2Kの平均フレームレート(グラフ20)を見ると確かにCore i5-14600K/Core i9-14900KはCore i5-13600K/Core i9-13900Kより若干フレームレートの上乗せはある。あるのだが、Ryzen 9 7950XはともかくRyzen 7 7800X3DとかRyzen 9 7950Xには及ばない程度でしかない。

○◆Company of Heroes 3(グラフ27〜33)

Company of Heroes 3

Relic Entertainment

https://www.companyofheroes.com

ベンチマーク方法はこちらのCompany of Heroes 3の項目に準ずる。設定は

Image Quality:Ultra

Physics Quality:High

Shadow Quality:High

Texture Detail:Ultra

Geometry Detail:Ultra

Anti-Aliasing:High

とした。

グラフ27

グラフ28

グラフ29

グラフ30

グラフ31

グラフ32

グラフ33

Company of Heroesの場合、フレームレート変動(グラフ30〜33)で判るように序盤はCPUによる差が殆ど無いが、広範に入ると急速に差が出て来る。要はAI同士で市街地戦を激しくやるが、ここにランダム要素が結構入っており、それもあって同じシナリオであっても毎回変化があるのだが、それとは別に後半に入ると戦闘車両や兵士などがどんどん増え、それに伴い戦闘のエフェクトなども激しくなることで負荷が増える格好だ。この際に、GPUだけでなくCPUも結構酷使されるようで、これが性能に大きく影響する格好だ。とりあえず平均フレームレート(グラフ27)を見るとブッチギリでRyzen 9 7950X3Dが最高速だが、Core i9-14900Kも結構健闘しており、Core i9-13900Kの262.5fps→286.1fpsと20fps以上持ち上げているのは優秀と言える。またCore i5-14600Kも279.9fpsと、Core i5-13600Kの265.8fpsから15fps近く引き上げられているのは素晴らしい。実際Ryzen 7 7800X3Dは269.1fpsでしかない訳で、少なくともRyzen 7 7800X3Dには追いついたとしても良いとは思う。

○◆Cyberpunk 2077(グラフ34〜40)

Cyberpunk 2077

CD PROJEKT RED

https://www.cyberpunk.net/us/ja/

ベンチマーク方法はこちらのCyberpunk 2077の項目に準ずる。設定は

Quick Preset:Ultra

Ray Tracing:Off

とした。

グラフ34

グラフ35

グラフ36

グラフ37

グラフ38

グラフ39

グラフ40

こちらもフレームレート変動(グラフ37〜40)で判るようにBorderlands 3とよく似た傾向で、2.5Kでほぼ収束、3K以上はちょっと太目の線という感じなので、差がでるのは2Kのみであるが、その2Kでの性能はやっぱり3D V-Cacheを搭載するRyzen 7 7800X3DとRyzen 9 7950X3Dが圧倒。Core i5-14600K/Core i9-14900Kも健闘しており、Core i5-13600K/Core i9-13900K比で5fps以上の上乗せを実現しているものの、3D V-Cacheには及ばないといった感じである。差が少ない筈の2.5Kでも、若干とは言えまだRyzen 7 7800X3DとRyzen 9 7950X3Dにビハインドを負っているあたりは、まだ性能差が確実にある、として良いかと思う。

●ゲームその2: F1 23 / Far Cry 6 / Hitman 3

○◆F1 23(グラフ41〜47)

F1 23

EA Sports

https://www.ea.com/ja-jp/games/f1/f1-23

ベンチマーク方法はこちらのF1 23の項目に準ずる。設定は

Anisotropic Filtering:16x

Anti-Aliasing:TAA Only

Dynamic Resolution:Off

Detail Preset:Ultra High

とした。

グラフ41

グラフ42

グラフ43

グラフ44

グラフ45

グラフ46

グラフ47

さて結果の方だが、もう御覧の通りでちょっと設定をミスった気がする。正直、ここまで差が付かないとは思わなかった。実際F1 22までは非常に負荷が軽いゲームであり、Ray Tracingを有効にしてもCPUでの差が付くものだったが、F1 23ではこのRay Tracingを多用しているようで、2KですらGPUがボトルネックになり、CPUでの性能差が付かないという事になってしまった。次からはDetail PresetをHigh以下にすることを考慮したい。

○◆Far Cry 6(グラフ48〜54)

Far Cry 6

Ubisofy Entertainment

https://www.ubisoft.com/ja-jp/game/far-cry/far-cry-6

グラフ48

グラフ49

グラフ50

グラフ51

グラフ52

グラフ53

グラフ54

今回のテストの中で、唯一明確にCore i9-14900KがRyzen 7 7800X3D/Ryzen 9 7950X3Dを上回る性能を示したのがこちら。平均フレームレート(グラフ48)を見ると見事に水平で、典型的なCPUボトルネックである。ここでRyzen 9 7950X3Dはほぼ180fps以上、Ryzen 7 7800X3Dも180fps弱を叩き出していて十分優秀なのだが、Core i9-14900Kは190fps以上になっており、明確に性能差を示している。これは170fps弱のCore i9-13900Kから大幅な向上ではある。ただCore i5-14600Kの方は、一応Core i5-13600Kを上回る性能ではあるのだが、それほど差が無いあたりは、やはりCore i9-14900Kは限界まで性能を引き上げるようにチューニングしているということなのかもしれない。

○◆Hitman 3(グラフ55〜61)

Hitman 3

IO Interactive A/S

https://www.epicgames.com/store/ja/product/hitman-3/home

グラフ55

グラフ56

グラフ57

グラフ58

グラフ59

グラフ60

グラフ61

Far Cry 6と似て明らかにCPUボトルネックな傾向が平均フレームレート(グラフ55)からも見て取れる。境目は3Kあたりで、その先は差が縮まっているが、2K〜2.5KはほぼCPU性能がそのまま反映されている格好だ。Core i9-14900Kは? というとCore i9-13900Kから10〜15fps程度の上乗せがあり、その意味では健闘しているのだが、200〜210fps台のRyzen 7 7800X3DとRyzen 9 7950X3Dには及ばない。

フレームレート変動を見ても2K(グラフ58)/2.5K(グラフ59)共に変動は大きいが、Core i9-14900KとRyzen 7 7800X3D/Ryzen 9 7950X3Dのグラフは分離している時の方が多く、性能差は明白である。

とは言え、4K(グラフ61)の25〜40秒あたりを見ると、Core i9-14900KとRyzen 7 7800X3D、Ryzen 9 7950X3Dの3つだけは180fpsあたりまで盛り上がっているのに対し、他のCPUだと120〜130fpsあたりまで落ち込んでいるところを見ると、Core i9-14900Kの性能が明らかに強化された事そのものは間違いない。ただRyzen 7 7800X3D/Ryzen 9 7950X3Dには及ばなかっただけである。

●ゲームその3: Metro Exodus / Tomb Raider / Watch Dogs

○◆Metro Exodus PC:Enhanced Edition(グラフ62〜68)

Metro Exodus PC:Enhanced Edition

4A Games

https://www.metrothegame.com/

ベンチマーク方法はこちらのMetro Exodus Enhanced Editionの項に準じる。設定は

Shading Quality:Ultra

Ray Tracing:High

Reflections:Hybrid

Variable Rate Shading:4x

Hairworks/Advanced PhysX:Off

Tesselation:Full

とした。

グラフ62

グラフ63

グラフ64

グラフ65

グラフ66

グラフ67

グラフ68

F1 23ほどではないにせよ、こちらもちょっとGPUボトルネックの気配がある。とは言え2Kでは多少バラつきがあるだけマシだが。その2Kはちょっと荒れていて、Core i9-14900KよりCore i9-13900Kの方がややフレームレートが上とか、Ryzen 9 7950X3Dが150fps切りしてしまっているとかだいぶ不思議な結果であるが、なにしろ1〜2fpsの範囲の差なので、これは誤差の内と考えてもよさそうな気がする。そして最高速は154fpsを叩き出したRyzen 7 7800X3Dというあたり、Core i9-14900Kはここからは読み取れない。

ちなみにIntel Application Optimizerを使うとこのMetro Exodusのフレームレートが向上する、という謳い文句だっただけに、Application Optimizerが動かなかったのは残念である。

○◆Shadow of the Tomb Raider(グラフ69〜75)

Shadow of the Tomb Raider

SQUARE ENIX

https://tombraider.square-enix-games.com/en-us

ベンチマーク方法はこちらに準じる。設定は

Quality:Hightest

Ray Tracing:Off

とした。XeSSも無効化している。

グラフ69

グラフ70

グラフ71

グラフ72

グラフ73

グラフ74

グラフ75

さて平均フレームレート(グラフ69)でも判るように、典型的なCPUボトルネック状況で、2K〜2.5Kは明確にCPUの性能でフレームレートが決まっている。Core i9-14900Kは健闘しておりCore i9-13900Kからは性能を引き上げているものの、Core i5-14600Kの方がフレームレートが上、というあたりをどう解釈したものか。そしてRyzen 7 7800X3D/Ryzen 9 7950X3Dには30fpsほどの差を付けられている、というあたりはまだRyzen 7 7800X3D/Ryzen 9 7950X3Dに追いついた、とは言いにくい。その2Kのフレームレート変動(グラフ72)を見ると、一番差がついているのは80秒付近の描画負荷が少ないところであるが、それ以前の10秒付近とか120秒以降でも結構明確に差があるあたりは、やはりCPU性能の違いが明確にある、と言わざるをえないだろう。

○◆Watch Dogs:Legion(グラフ76〜82)

Watch Dogs:Legion

Ubisoft

https://www.ubisoft.co.jp/wdlegion/

ベンチマーク方法はこちらの"Watch Dogs:Legion"に準ずる。ちなみに設定は

Quality:Ultra

RT Reflection:Off

とした。

グラフ76

グラフ77

グラフ78

グラフ79

グラフ80

グラフ81

グラフ82

さて結果だが平均フレームレート(グラフ76)を見るとこちらもCPUボトルネックの傾向が強いのは見て明らかである。その2K〜2.5Kで言えば、Core i9-14900KとCore i5-14600Kはかなり健闘しているのは間違いない。Core i5-13600K/Core i5-13900Kが2Kで120fps弱に留まっているのに対し、140fpsを超えて150fps弱に達しているからだ。ただそれでもRyzen 7 7800X3Dの160fpsには及ばないし、Ryzen 9 7950X3Dの172fpsは更に遠い。頑張ってはいるものの、まだそこまでの性能ではないというか、AMDの3D V-Cacheの威力すげえというべきなのか。

●ゲームベンチマーク総評

○◆ゲームベンチマーク総評(グラフ83)

以上の9つのGame Benchmarkの2Kにおける平均フレームレートを並べた上で、Core i5-13600Kの数値を100%とした時の相対性能を示したのがグラフ83である。最後のOverallは、この9つのベンチマークの相乗平均をとったものだ。

グラフ83

結果から言えば、確かにCore i9-14900KやCore i5-14600Kは健闘している。少なくともAMDのRyzen 5 7600XとかRyzen 9 7950Xと比較した場合、優れているとしても良いとは思う。思うのだが、Intelの示したこのスライドが体感できたか? というと満足できる結果ではなかったと言わざるを得ない。勿論Application Optimizerが使えないというハンデはある訳だが、逆に言えばApplication Optimizerが対応していないアプリケーションに関してはRyzen 9 7950X3Dは元よりRyzen 7 7800X3Dにも及ばないという事になる。今回はたった9種類のゲームベンチマークなので、偏っている可能性は否定できないが、Ryzen 9 7950X3Dを上回る性能を出す場面は、Application Optimizerの対応次第である程度は限定されると言えるだろう。

●RMMT / Sandra

○◆RMMT 1.1(グラフ84〜85)

久しぶりにRMMTも。今回はBlock Sizeを40MB/Threadで行っている。なので3D V-Cacheを搭載するRyzen 7 7800X3D/Ryzen 9 7950X3DはL3 Hitの確率が非常に上がるので、結果が凄い事になっているのを最初にお断りしておく。

グラフ84

グラフ85

これを念頭に置いてRead(グラフ84)を見ると、Core i9-14900KはほぼCore i9-13900Kと、Core i5-14600KはほぼCore i5-13600Kとグラフが重なっており、やはりこの部分には差が無いことになる。これはP-Core/E-Core共に同じであった。こちらにあるように、DDR5 XMPだとDDR5-8000を超えるメモリも使えるとしているが、あくまでこれはより高速なOC Memoryに対応というだけの話であって、メモリが同じならアクセス性能も当然同じであった。これはWrite(グラフ85)にも言える話で、やはりこの部分での性能差は無い事が再確認できた。

○◆Sandra 20/21 R25 2021.12.31.133(ダイジェスト)(グラフ86〜101)

Sandra 20/21 R25 2021.12.31.133

SiSoftware

https://www.sisoftware.co.uk/

Sandraだが、フルセットをやると猛烈にグラフ数が増えるし、なにより違いは動作周波数だけでアーキテクチャ類に差は無いし、キャッシュやメモリ廻りの改善なども入っていない。なので、純粋に動作周波数の違いがCPU性能にどう反映するか、だけを抜き出してご紹介したい。

グラフ86

グラフ87

グラフ88

グラフ89

グラフ86・87がDhrystoneで、グラフ86は全Thread(MT+MCとはMulti Thread+Multi Coreの意味)、87は1Threadである。なお(続くWhetstoneもそうだが).NETを利用する場合はP-Core/E-Coreの区別が無いので、グラフ中ではP-Core扱いで示している。なぜかNative IntegerでCore i9-13900KがCore i9-14900Kより高速、という不思議な結果が出ているものの、あとは概ね動作周波数通りという感じ。1 Threadの場合、NativeだとIntelのP-CoreとZen 4はほぼ同じ程度、E-Coreは6割程度の性能といったところで、動作周波数に応じて性能は微増しているが、まぁ大きな違いではない。この傾向はWhetstone(グラフ88・89)も同じであるが、MT+MC(グラフ88)でSingle NativeとDouble NativeでCore i9-13900KとCore i9-14900Kの性能差が結構バラつくのが気になるところではある。

グラフ90

グラフ91

グラフ92

グラフ93

ではEncryption/Decryption(グラフ90・91)は? というと、総合成績ではIntel優位だが1TだとAMD有利という以前からの傾向がそのままで、また動作周波数の違いによる性能差も感じられない。もっと言えばAMDはMT+MCと1Tで性能差が殆どないもの相変わらずで、要するに処理性能よりもメモリアクセスがボトルネックになっている(から、1Tの場合のIntelでは動作周波数の差で性能に違いがでる)という話である。ただHashing(グラフ92・93)では処理の方が再びボトルネックになりがち(Intelはちょっと怪しいというか、メモリアクセスと処理性能が微妙にバランスしているギリギリ、AMDは処理性能ネック)という感じだ。ただMT+MCだとAMDを圧倒できるIntel系が、1Tだと負けているあたりは、数の暴力という感じである。

グラフ94

グラフ95

グラフ96

Financial Analysis(グラフ94〜96)はOption(Black-Scholes/Binominal/Monte Carlo)別にグラフを分類した。こちらは比較的動作周波数に応じてでCore i5-14600K/Core i9-14900KとCore i5-13600K/Core i9-13900Kの性能差が見られるが、大きな違いか? と言われると御覧の通り微増といった程度なのはまぁ致し方ない。

ところでP-CoreとE-Coreの性能比が、この3つでかなりバラつくのがちょっと興味深い。Monte CarloだとP-CoreはE-Coreの6割弱程度の性能なのが、Black-Scholesだと5割強、Binomialだと3割(33%弱)まで落ち込む。アプリケーションによっては、E-Coreはあまり助けにならない、という一つの実例ではある。

グラフ97

グラフ98

グラフ99

グラフ97〜99がScientific Analysisであるが、GEMM(グラフ97)はAMDの3D V-Cacheが如何にこの手の計算に適しているかを露骨に示す結果になってしまった事に加え、Core i5-14600K/Core i9-14900KとCore i5-13600K/Core i9-13900Kの性能差があまりない(というか、どうかするとCore i5-14600K/Core i9-14900Kの方が低い)のは、コアの演算性能が内部のキャッシュを使い切ってしまってしまい、メモリアクセスがボトルネックになっている、と考えられる。だからこそ3D V-Cacheを搭載したRyzen 7 7800X3DがCore i9-13900K/14900Kと同等の性能で、Ryzen 9 7950X3Dが1.5倍の性能を叩き出しているという事だろう。これはFFT(グラフ98)も同じだが、こちらではAMDの3D V-Cacheであっても容量が足りないようで、完全にメモリアクセスがボトルネックになった結果であり、こうなるとやはりCore i5-14600K/Core i9-14900KとCore i5-13600K/Core i9-13900Kの性能差は殆どなくなってしまう。これはN-Body(グラフ99)も同じで、なので相対的にキャッシュ不足が緩和される1Tだと動作周波数による性能差が見られるが、MT+MCだと綺麗に並んでいる格好だ。

グラフ100

グラフ101

最後にCache&Memory Bandwidth(グラフ100・101)だが、なぜかRyzen 5 7600のみデータが取れない(Sandraが落ちる)ので、結果から除外している。それはともかくとしてMT+MC(グラフ100)だと、Core i5-14600K/Core i9-14900KとCore i5-13600K/Core i9-13900Kの間に一応差があるといえばあるが、もう誤差の範囲。1T(グラフ101)だとそれなりに性能差があるので、要するにもう少しキャッシュを増やさない限りあまり性能差が出ないというところに来ている感じだ。

●消費電力測定 / 総評と考察

○◆消費電力測定(グラフ102〜110)

最後は恒例の消費電力測定である。今回はSandraのDhrystone/Whetstone(グラフ102)、CineBench R23のAll Threads(グラフ103)とOne Thread(グラフ104)、TMPGEnc Video Mastering Works(グラフ105)に加え、実験的にPCMark 10のApplication Test(グラフ106)も加えてみた。あとは3DMarkのSpeedWay(グラフ107)とMetro Exodusの2K(グラフ108)である。それぞれのテストの稼働中の平均消費電力をグラフ109に、待機時の消費電力との差をグラフ110に示した。

グラフ102

グラフ103

グラフ104

グラフ105

グラフ106

グラフ107

グラフ108

グラフ109

グラフ110

端的に言えば、Core i5-13600K/Core i9-13900K→Core i5-14600K/Core i9-14900Kで5W〜20Wの消費電力の上乗せが行われた感じだ。そもそも絶対的な消費電力が多いのでマージンの少ないCore i9-13600K/14900Kの場合は微増程度であるが、マージンが相対的に多いCore i5-13600K/Core i5-14600Kの場合は20Wほど増えている。ただその増えた消費電力に見合うだけの性能向上があるか? というと微妙なところである。またPCMark 10 Applicationでも、絶対的な消費電力ではAMD系の方が高めであるが、これは消費電力の多いX670マザーボードがZ690マザーボードより20W位余分に消費しているから、という話でもあって、グラフ110を見ると稼働中の平均消費電力は10W以上低めに抑えられている。またこのPCMark 10 Application稼働時のピークの消費電力は

となっており、平均消費電力だけでなくピークの消費電力もIntel系は高めになっている。ピーク性能は別としても、少なくとも性能/消費電力比に関して言えば、IntelはAMDに水を開けられる方向に進んでいたと見て間違いではないだろう。

○考察

ということで大分遅くなったがRaptor Lake RefreshことCore Processor(14th)の比較をお届けした。この原稿の執筆時点(11月8日)のアマゾンジャパン価格で言えば

・Core i5-13600K (https://www.amazon.co.jp/dp/B0BCF5CZ16/) \49,980

・Core i5-14600K (https://www.amazon.co.jp/dp/B0CKKRTRRG/) \59,773

・Core i9-13900K (https://www.amazon.co.jp/dp/B0BCF54SR1/) \95,380

・Core i9-14900K (https://www.amazon.co.jp/dp/B0CKKPXV1C/) \103,581

となっており、概ねRaptor Lake世代と比較して1万円Upといったところ。この金額に見合う性能向上が得られるのか? というのが各人で判断の分かれるところだが、仮に筆者なら、買い替えであればGen 13 Core Processor世代のままでいいかな? と思う。ちなみに競合製品だが同じく

・Ryzen 5 7600X (https://www.amazon.co.jp/dp/B0BGX57VQD/) \35,980

・Ryzen 7 7800X3D (https://www.amazon.co.jp/dp/B0C2D943TC/) \61,010

・Ryzen 9 7950X (https://www.amazon.co.jp/dp/B0BF5BBBXS/) \99,798

・Ryzen 9 7950X3D (https://www.amazon.co.jp/dp/B0BXJ44R21/) \120,964

といったところ。ただRyzen 9 7950X/7950X3Dは並行輸入品もあり、気にならないのであればそれぞれ\85,980/\109,998となっている。Ryzen 5 7600Xは確かに安いがその分性能も低いのは今回見てきた通りで、コストパフォーマンス的には悪くないが、ピーク性能を求めるユーザーには不満が大きいだろう。そうしたユーザーにはCore i5-13600K/14600Kの方がお勧めできる。

Ryzen 9 7950Xは性能的にはCore i9-13900Kと同等かちょい落ちる程度で、その割にちょっと価格が高め(並行輸入品なら同等のコストパフォーマンス)といったところ。様々な用途に使う(ゲームだけでなく、例えば動画配信とか写真のレタッチとかも結構行う)というユーザーであれば、どちらかというとCore i9-13900K/14900Kの方が満足度は高いと思う。そしてゲームが主体であれば、現状ではRyzen 7 7800X3DないしRyzen 9 7950X3Dが一番満足できるだろう。

いまはまだ新製品ということでプレミアがついている部分があるが、もう少しすればCore i5-13600K/Core i9-13900Kの流通量が減ってその分価格が上がり、代わってCore i5-14600K/Core i9-14900Kの価格が下がることが期待できる。もしCore Processor(14th)を狙っているのであればそこまで待つ方が良いと思うし、今すぐ欲しい人は予算次第でGen 13 Core Processorも視野に入れることをお勧めしたい。