Raspberry Pi 4では5V/3Aの電力供給が可能な電源アダプターの使用が推奨されていましたが、2023年10月23日に出荷が始まったRaspberry Pi 5では5V/5Aの電源アダプターが推奨要件となり、5V/5Aの出力に対応した純正電源アダプター「Raspberry Pi 27W USB-C Power Supply」も発売されました。しかし、記事作成時点では日本では5V/5Aの出力に対応した電源アダプターを入手することは困難です。公式ドキュメントを確認したところ5V/3A出力に対応した電源でも起動可能と記されていたので、5V/5A出力に対応した純正電源アダプターと5V/3Aの出力に対応した非純正アダプターを用意して高負荷状態の出力の違いを確認してみました。

Raspberry Pi 5 - Raspberry Pi

https://www.raspberrypi.com/products/raspberry-pi-5/

Raspberry Pi 27W USB-C Power Supply - Raspberry Pi

https://www.raspberrypi.com/products/27w-power-supply/

Raspberry Pi Documentation - Raspberry Pi 5

https://www.raspberrypi.com/documentation/computers/raspberry-pi-5.html

・目次

◆1:技適についての前置き

◆2:検証に使う機材

◆3:純正電源アダプター使用時に高負荷をかける

◆4:非純正電源アダプター使用時に高負荷をかける

◆5:非純正電源アダプターに5A出力を要求して高負荷をかける

◆6:非純正電源アダプターにPPSで5V/5Aを要求して高負荷をかける

◆7:純正電源アダプターは本当に5V/5A出力できるのかチェック

◆8:まとめ

◆1:技適についての前置き

今回使うRaspberry Pi 5はRaspberry Pi財団からGIGAZINE編集部に直接送られてきたもので、技術基準適合証明を受けていません。そこで、「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」の届出を行っています。なお、日本では代理店による技適申請の後でRaspberry Pi 5が発売される予定なので、一般ユーザーが技適について気にする必要はありません。



◆2:検証に使う機材

Raspberry Pi財団純正の電源アダプター「Raspberry Pi 27W USB-C Power Supply」が以下。性能を発揮できないケーブルの使用を避けるために、ケーブルとアダプターが一体になっています。



対応出力の欄を見ると「5.1V/5.0A」で出力可能なことが確認できます。



今回は比較対象の非純正電源アダプターとしてアドテックの「APD-V140AC2-BK」を用意しました。



対応出力の欄を見ると「5V/3A」での出力が可能なことやPPSの範囲内に5V/5Aが含まれていることが分かります。



動作検証環境はこんな感じ。Raspberry Pi 5のUSBポートから電力を出力させた際の動作を検証するためにUSBポートに外付けSSDと負荷装置「AVHzY CT-3」を接続し、電源アダプターからの出力電流や電圧を測定するために電源アダプターとRaspberry Pi 5の間にUSBテスター「WITRN U3」を接続しています。また、Raspberry Pi 5の動作状況を確認するためにUSBシリアル変換キット「USB-UART232RM」も接続しています。



負荷装置の負荷電流はRaspberry Pi 5の最大出力である1.6Aに設定。さらにシステムに負荷をかけるソフトウェア「stress」をRaspberry Pi 5にインストールしました。この環境で「CPUとUSBポートともに負荷をかけない状態」と「『stress -c 4』コマンドでCPUの全コアを100%使用状態にし、USBポートから『負荷装置の1.6A』と『SSDの待機電流』を出力させた状態」の電源アダプターからの出力状況およびUSBポートからの出力状況を確認します。



◆3:純正電源アダプター使用時に高負荷をかける

最初に、純正電源アダプターを接続した際の電源アダプターからの出力およびUSBポートからの出力を確認します。



負荷をかけていない状態では電源アダプターの出力は5.1346V/0.8200Aでした。



また、USBポートからの出力電圧は5.001Vでした。



システムの電力消費をPMICから確認できるコマンド「vcgencmd pmic_read_adc」の実行結果は以下の通り。



続いて、CPUとUSBポートに負荷をかけると電源アダプターからの出力が5.1863V/3.0378Aになりました。



USBポートからの出力電圧は4.597V。特にシステムが不安定になる様子はありません。



「vcgencmd pmic_read_adc」の実行結果は以下の通りです。



◆4:非純正電源アダプター使用時に高負荷をかける

続いて、非純正電源アダプターを接続した際の電源アダプターからの出力やUSBポートからの出力を確認します。



非純正電源アダプターを接続してもシステムは起動しますが、画面右上に「電流が5Aを下回っているため周辺機器への電力供給が制限される」という旨の通知が表示されました。ただし、この状態でも各種ソフトウェアは問題なく動作します。



負荷をかけていない状態の電源アダプターからの出力は5.1338V/0.8147A。



USBポートからの出力は4.964Vでした。



続いて、CPUとUSBポートに負荷をかけてみます。



USBポートに負荷をかけた結果、出力電圧が4Vを下回りました。以下のムービーを再生すると、出力電圧が4Vを下回り負荷装置の安全機能が発動している様子を確認できます。

Raspberry Pi 5に5V/3A出力の電源アダプターを接続してUSBに負荷をかけるとUSBポートからの出力電圧が下がって電力出力を維持できなくなる - YouTube

また、USBポートに負荷をかけると画面右上に「低電圧」と「USB出力過多」の警告が表示されました。



◆5:非純正電源アダプターに5A出力を要求して高負荷をかける

今回検証に使っている電源アダプター「APD-V140AC2-BK」はPPSの範囲に5V/5Aを含んでおり、理論上は5V/5Aでの出力が可能なはずです。Raspberry Piの公式フォーラムを確認したところRaspberry Piの開発者が「EEPROMの設定ファイルに『PSU_MAX_CURRENT=5000』と追記すればUSB-PDの対応出力問い合わせ処理をスキップして5A出力を要求できる」と投稿していたので試してみることにしました。

EEPROMの設定を書き換える手順は次の通り。まず、以下のコマンドを実行します。

sudo rpi-eeprom-config -e

すると、EEPROMの設定ファイルが開くので「PSU_MAX_CURRENT=5000」という行を追加して保存します。



後は、システムを再起動すればEEPROMが書き換わります。シリアルコンソールを確認すると、「max-current 5000」と記されていました。これで非純正電源アダプターに5A出力を要求できるはずです。



非純正電源アダプターに5A出力を要求し、CPUとUSBポートに負荷をかけていない状態での電源アダプターからの出力は5.1041V/0.9744Aでした。



USBポートからの出力は4.934Vです。



続いて、CPUとUSBポートに負荷をかけると電源アダプターからの出力は4.9490V/2.6094Aになりました。



USBポートからの出力電圧は4.376Vで、5Vを大きく下回っています。何も設定していない状態では高負荷時は出力すらできなくなっていたので改善しているといえますが、純正電源よりは出力が小さいことが確認できました。



◆6:非純正電源アダプターにPPSで5V/5Aを要求して高負荷をかける

今回使っているUSBテスター「WITRN U3」にはUSB-PD対応電源に対して明示的に出力電圧および電力を指定できる機能が搭載されています。そこで、APD-V140AC2-BKに5.1V/5Aでの出力を要求した場合の動作を確認してみることにしました。



5.1V/5Aでの出力を要求した状態でCPUとUSBポートに負荷をかけていないときの電源アダプターからの出力は4.8106V/1.9431Aでした。



USBポートからの出力電圧は4.952Vでした。



続いてCPUとUSBポートに負荷をかけてみたところ、USBポートに負荷をかけた瞬間に電源が切れてしまいました。

なお、APD-V140AC2-BKと同じく5V/3Aでの出力に対応しPPSに5V/5Aを含んでいる電源アダプター「Anker 736 Charger」でも同様の検証を行いましたが、APD-V140AC2-BKとほぼ同じ結果が得られました。



◆7:純正電源アダプターは本当に5V/5A出力できるのかチェック

最後に、純正電源アダプターが本当に5V/5Aでの出力に対応しているのか確認するべく、純正電源アダプターに負荷装置を接続して負荷をかけてみました。



検証の結果、5.233V/5.000Aという出力が可能なことが分かりました。



◆8:まとめ

5V/5Aでの出力に対応した純正電源アダプターと5V/3Aでの出力に対応した非純正の動作を検証した結果、5V/3Aでの出力にしか対応していない電源アダプターではUSBポートに負荷をかけた際にシステムが不安定になることが分かりました。USBポートに大きな負荷をかけない用途では5V/5Aに対応していない電源アダプターでも問題なく使えますが、USBポートに大量の機器を接続する予定がある場合は5V/5Aに対応した電源アダプターを用意するべきです。

◆フォーラム開設中

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