ギャレス・エドワーズ、『ザ・クリエイター/創造者』東京ロケ地を再訪 ─ 渋谷と新宿、何を感じたか

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東京、新宿大ガード東交差点。突き抜けるような秋晴れ。映画監督のギャレス・エドワーズは、自分のスマホカメラを街頭ビジョン「ユニカビジョン」に向けていた。映画『ザ・クリエイター/創造者』の予告編映像が放映されている。『GODZILLA ゴジラ』(2014)『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー 』(2016)に続く、エドワーズの最新作だ。

「すごく不思議な感じだ!。僕たちはここで撮影して、あのビジョンも撮ったんです。映っている映像を描き変えて、映画に登場させた。まさにそのスクリーンで、映画の映像が流れている!まるで何かが巡ったようです!」

『ザ・クリエイター/創造者』は、人類とAIが戦争を繰り広げる未来を舞台にした、オリジナルのSF大作映画。この映画で、西洋はAI殲滅を目指しており、東洋はAIと調和して共存している。西洋 vs 東洋&AI連合体の壮大な戦い、主人公ジョシュアと子どもの姿のAIアルフィーによる絆の旅が描かれる。

物語の中心となるのは“ニューアジア”と呼ばれるエリア。製作では、タイ、ベトナム、カンボジア、ネパール、インドネシアなど、8カ国80ヶ所を訪れた。東京の街もそこに含まれる。劇中には、渋谷と新宿で撮影された風景も登場する。

この日、エドワーズは映画の日本公開のために来日。オープントップの観光周遊バスに乗って、渋谷と新宿のロケ地を再訪していた。

監督デビュー作『モンスターズ/地球外生命体』(2010)で、エドワースは異国の地にてゲリラ撮影を敢行しながら、低予算での制作を進めた。それから『GODZILLA』『ローグ・ワン』と大作ブロックバスター映画に抜擢されたが、元来エドワースは、ミニマムなクルーを連れて柔軟に動く、旅人タイプのフィルムメーカーだ。

撮影では、キャスト2名と、カメラマンだけを携え、4~5人で来日した。音響クルーも含まれない。この規模の映画のロケチームとしてはかなり小規模だ。

都内では、人が盛んに行き交う時間帯を狙うため、夜10時ごろまでに撮影を済ませる必要があったと、エドワースはバスに揺られながら振り返る。撮影に要したのは3日間。「とにかく、あちこち撮りまくって、素材を撮り溜めた」。

劇中に登場する近未来的な風景のモチーフは『AKIRA』や『ブレードランナー』。東京で撮影したものを何度も見返し、参考にした。渋谷と新宿のショットでは、街頭ビジョンに映る映像や広告看板を描き変えて登場させた。その街頭ビジョンに、今、『ザ・クリエイター/創造者』の映像が流れていた。

この映画では、エドワーズが昔から大好きな映画の要素が色濃く反映されている。『スター・ウォーズ』、そして日本映画だ。『子連れ狼』や黒澤映画、『AKIRA』のようなアニメへの敬愛を活かした。「東京で小さなアパートを借りたい」というほどだ。「そこで暮らして、映画を書いたり散歩したりしたいです」。

エドワーズには日本通のフィルムメーカー友達がいる。『キングコング:髑髏島の巨神』のジョーダン・ヴォート=ロバーツだ。実は『ザ・クリエイター/創造者』の誕生には、ロバーツが一役買っている。エドワーズが何よりも苦手だという脚本執筆と向き合うため、タイのリゾートホテルで缶詰めになっていた時、ベトナム滞在中だったロバーツから合流しないかと誘われた。そこで、二人で1週間のベトナム旅行に出かけた。この東南アジアの地で見た景色や得た刺激が、『ザ・クリエイター/創造者』の発想につながったのだ。

ロバーツの方もゲームやアニメ、漫画のオタクで、今は『機動戦士ガンダム』と『メタルギアソリッド』という重要な日本作品のハリウッド実写化を、ふたつも任されている。そのためにロバーツは数週間前に日本を訪れ、しばらく滞在していた。

ある時、日本のロバーツから着信があった。ビデオ通話を繋ぐと、彼はSFモチーフの、小さなバーにいるようだ。ロバーツは画面の向こうで、「彼は『ローグ・ワン』の監督だよ!」と、日本の友人たちに紹介している。みな酔っ払っているようだったが、何やら盛り上がっている。その後ろには、ゴジラのフィギュアが飾られていたのが見えたそうだ。

異国の地を訪れ、自分がまるで異星人になるような感覚が好きなんだと、エドワーズは東京の秋風に吹かれながら話した。「ホテルでテレビをつけても、流れているものがさっぱり理解できない、奇妙でクレイジーなTVショーのように見える。故郷ではお目にかかれないようなものばかりです。まるで、未来や、刺激的な異世界にテレポートした感覚です」。

日本で果たしたい、ささやかな夢も聞かせてくれた。「カプセルホテルっていうのに泊まってみたい。カプセルに寝そべって過ごすんですよね?楽しいのかは分かりませんが、一度泊まってみたいなあ。」

初来日は2008年のことで、1週間近く東京に滞在した後、京都や広島も訪れた。「日本に来ると、いつも次の映画について考え始めるんです」。そう語るエドワーズに、この街はどう見えたのだろう。

『ザ・クリエイター/創造者』は公開中。