作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセイ。自宅で仕事をするようになって10年経った今、もっともはかどる「場所」についてつづってくれました。

第108回「コワーキングスペースで集中すべし!」

自宅で執筆を続けて10年。そろそろ手狭になってきた。増えていく本や資料で部屋が押しつぶされそうという問題は、書籍『暮らしっく』でも散々書いてきた。ただ、どれも捨てるわけにはいかない。

小さな部屋をもう一つ別の場所に借りて、書庫兼書斎にしようかなー。もしくは、今は読まない本やCDをトランクルームに預けようかなと、本気で考えていた。

でも、愛媛と東京の二拠点生活が始まって2年…。ただでさえ東京で暮らす時間が半分になっているのに、さらに部屋を借りるというのは、どうなん? そのための引っ越し労力とか家賃を考えると、あまり得策とは思えなくなってきた。

家で仕事するって、相当忍耐力いるよね。誰も見てないし、ソファやおやつだってあるから、いつだってさぼれちゃうんだもの。夏休みの宿題との闘いを思い出す。大人になっても勝率は3割くらいだ。

●結局、もっとも集中できるスペースは…

10年のトライ&エラーはこんな感じだ。

カフェを転々としていた時期もあったけど、BGMや人の会話が気になってあまり集中できなかった。図書館もいいけど、なんだろう、闘志が燃えない。昼間は年配の方がうとうとしてたりするから、つられて眠くなってくるのよねえ。

数年前に家から離れた地域に、良いシェアスペースを見つけたけど、電車を乗り継いで、行くまでに疲れてしまった。ホテルや旅館に缶詰っていうのもやったけど、結局一人なので、さぼることができるという環境に変わりはないのだった。

「本当にやる気がある人はどこでだってやれるはずだ!」

高校時代の先生の言葉が聞こえてくる。

そこで、最近使うようになったのが、コワーキングスペースだ。いくつかの大きなテーブルに椅子がゆったり置かれていて、その一つが使える。電源やWi-Fiも完備、予約なしでいいのも助かる。平日ならかなり空いていて、部屋は広々。前の人の顔が見えないように衝立があるところもあるけど、私は広々としている方が好きなので、衝立のないテーブルを使うことが多い。一日3500円で、ドリンク飲み放題! リモートでの打ち合わせなど個室が必要なときは、別室がワンコインで借りられる。

みんな静かに頑張っている。喋っている人は誰もいないし、(同い年くらいの人々が)みんなまじめに仕事しているので、私も一心不乱に書き続けることができる。

ああ、怠け者の私に必要だったのは、みんなも頑張ってるぞ!! という、高校時代の塾の自習室的な場所だったのかもしれない。

明るくて、広々として、長時間腰掛けても腰が痛くならない椅子も素晴らしい。音楽はうっすらと流れているけど、インストしかかかってないのもまたいい。言葉を書く仕事なので、どうしても日本語歌詞が耳に入ってしまうと手が止まってしまうのだ。

空調もベスト。動かずにじっと座っているので次第に空調が寒く感じることが多かったけど、それも見越した温度設定なのかな。かゆいところに手が届く。

何より、少し歩いたところにカフェが併設されていて、コーヒーやラテが、飲み放題。しかも一杯ずつ入れてくれるのだ。おかわりの度に、そのカフェまで歩いて行きお姉さんとちょっと話をするのも、気分転換になる。というところまで、よく考えられて作られている。ここ、今までで一番集中できるかもしれないな。

小説なんかは、やっぱり家でないと書けないけど、エッセイやもう頭の中で固まってきている話をまとめるには最適な場所だ。

●いろんな場所も使い分けることも大切

日常的には家で書いて、追い込みたいときはそこに行くというのがいい感じだ。数日分を一気に書き倒して帰ると、家はくつろげる場所として迎えてくれる。洗濯を取り込み、晩ごはんを作り、お風呂にお湯をためて残りの今日を生活の中で過ごす。

そう、この「生活」こそが私の執筆の源であり、手を止めてしまう原因でもあった。雨が降りそう、洗濯入れたほうがいいかなとか、冷蔵庫のゴーヤーが痛みそうだから昼には絶対料理しなきゃとか、ピンポーンと来客…なにかの勧誘につかまったり。

逆に、生活が隣にある中で書くからこそ面白い詩が浮かぶこともたくさんある。この暮らしの連載なんかにはぴったりだから、やはり使い分けながら、それぞれの文章の味わいを見つけようと思う。そうして、暮らしや農業とともに、書くことを続けていきたい。それが次の10年の私の目標だ。

 

本連載をまとめた書籍『暮らしっく』(扶桑社刊)が発売中。