自転車違反のペナルティは「違反金」か「反則金」か。警察庁が立ち上げた有識者検討会の報告書を警察庁自身が否定…前代未聞の内紛が?

写真拡大

2023年9月25日(月)、自転車の交通違反の指導・取り締まりが全国一斉に行われた。9月21日(木)から30日(土)までの10日間、「令和5年秋の全国交通安全運動」がおこなわれ、その一環として実施された。

ちなみに、高齢の方は交通安全運動を「交通安全週間」と言うことがある。そこんとこ、『月刊交通』(東京法令)2007年臨時増刊号「交通局発足45周年記念 交通警察のあゆみ」に興味深いことが載っていた。

1948年 12月10日から7日間、国家地方警察本部(警察庁の前身)が「全国交通安全週間」を実施。
1951年 期間を10日間とし、「全国交通安全旬間」と改称した。
1961年 「全国交通安全運動」に改称。

多くの人は「旬間」なんて耳慣れない言葉を使わず「週間」と呼び続け、「運動」になってからも「週間」と呼ぶ人が多いのかもね。どうです、テレビのクイズ番組に出そうでしょ。

■自転車違反の都道府県トップは「大阪」

さて、自転車違反である。その取り締まりの違反別、都道府県別のデータを私は2006年分から、情報公開法により開示請求し、手数料を払ってゲットし続けてきた。

2022年の「検挙件数」つまり取り締まり件数は、全国で2万4549件。2006年は、信じられないだろうが、585件ぽっちだった。警察庁でコピーさせてもらった過去データでは、1996年なんかたった10件だよ、10件! 2006年に「自転車の取り締まりを強化すべし」旨の通達が発出されてから、どんどんどーんと、異常なほど激増したのだ。

2022年の取り締まり件数の、都道府県別のトップ3を見てみよう。

1位 大阪  6106件
2位 東京  4785件
3位 兵庫  4643件

3千件台も2千件台もナシ。4位は千葉で1974件だ。一方、青森、岐阜、沖縄など16県は1桁だ。秋田、山形、群馬、長野、徳島の5県はゼロ。いくらなんでも差が極端だ。現場警察官に重いノルマを課した都府県と、そうじゃない道県があるってことか。違反別のトップ3はこうだ。

1位 信号無視 1万2498件
2位 指定場所一時不停止 4679件
3位 しゃ断踏切立入 3880件

信号無視は全体の約51%を占める。その信号無視を都道府県別で見てみよう。丸カッコ内は、各都府県の取り締まりに占める信号無視の割合だ。

1位 大阪  4586件(約75%)
2位 兵庫  3628件(約78%)
3位 東京  3063件(約66%)

取り締まりが特に多い都府県は、信号無視に重点をおいてるんだね。

■異常なほど自転車違反の取り締まりが増えたのはなぜ?

ご存知のとおり、自転車の違反には青切符&反則金(行政上の軽いペナルティ)の制度が適用されない。信号無視も一時不停止も、クルマ・バイクの飲酒運転、無免許運転と同様に、赤切符&罰金(刑事罰)の対象となる。明らかに不公平だ。

したがって検察は、よっぽど悪質なケースしか起訴しない(=罰金を科さない)。自転車違反の起訴率は1~2%だという。いくら取り締まっても、どうせ不起訴。警察官たちは「重いノルマを課されて尻を叩かれ、アホらしい」と、徒労感を味わっているんじゃないか。検察にも徒労の後始末をさせることになる。

ああ、それなのに、警察は近年、自転車違反の取り締まりを異常なほど激増させたんである。なぜ? こう言いだすために、としか考えられない。

「自転車の悪質、危険、迷惑な運転は目に余る。事故防止のため厳しく取り締まっているが、現在の制度では、ほとんどペナルティを課す(科す)ことができない。運転免許がない自転車には、新たに少額の違反金制度を導入すべきだ。」