2020年に警察庁は「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会」を設けた。この種のものは、検討の前提となる資料を主催者(省庁)が用意し、省庁が望む結論へ導いて「有識者の先生方の貴重なご意見をいただきました」との形をつくる、そういうものだという。2021年4月の中間報告にも、12月の最終的な報告書にも、こうあった。

「自転車の違反に対する刑罰的な責任追及が著しく不十分なものにとどまっている状況を踏まえれば、指導取締りについては、刑罰に代わる少額の違反金を課すなど、非刑罰的な手法も含め、違反の抑止のために実効性のある方法を検討すべきである。」

「刑罰に代わる少額の違反金」、おおう! 私は興奮した。言いぶりからして、反則金ではなく、放置違反金ならぬ「自転車違反金」制度を導入するのだな。駐車違反と同様、自転車の取り締まりも民間委託するのだな。ここまで長かったなあ。現場の警察官諸氏よ、お疲れさんでした。

■「自転車違反金」を警察庁が否定

ところが、びっくり仰天! 同じ2021年12月の23日、警察庁が「自転車違反金見送り」と時事通信が報じた。記事によると、報告書も同じ23日付けらしい。自分たちが集めた有識者の検討会の、最終的な報告書、その発表の当日に、警察庁(の幹部?)が内容を否定する報道が出るって、前代未聞、あり得ない! 他の省庁の方々は腰を抜かしたでしょ。

そうして警察庁は、また有識者の検討会を立ち上げた。なぜこんなみっともないことに? 私はねえ、可搬式オービスにからんで警察庁内に“内紛”があるんじゃないかと見ている。そこはディープな話になる。いずれまた。とにかくね、今後いったいどうなっていくのか、ドキドキ、目を離せない。

文=今井亮一
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から交通違反以外の裁判傍聴にも熱中。交通違反マニア、開示請求マニア、裁判傍聴マニアを自称。