避けては通れない“実家の片づけ問題”。自分の家なら自由に片づけができても、実家だと途端に難しくなります。そこで、一度実家の片づけで失敗した経験をもち、現在も実家の片づけをしている整理収納アドバイザーのふくぴいさんに、片づけをスムーズに行う方法を教えてもらいました。

いつでも初心にかえるための「心がまえ」の大切さ

私の経験から、実家の片づけを始めるにはまず「始める前の心がまえ」として必要なことが3つあります。

ひとつ目は「親の住まいであることを忘れない」ということ。次に、目的はすっきりさせることではなく「安全」や「分かりやすさ」。最後に、すぐに結果を求めず「長期戦で考える」ことです。

今も実家の片づけをしていますが、うまく進まずモヤモヤすることもたくさんあります。そんなときは、この3つの心得を思い出します。

そして次のステップとして、そもそも親が片づけに対して消極的なときにどのようにして片づけを始めればいいのか、またスムーズに進める方法について実体験を踏まえお伝えします。

●方法1:親との会話や動作を観察してヒントを見つける

久しぶりの実家に帰ってくるなり、娘から「なんだかものが多いリビングだね」「ちょっと整理したら?」などと言われるのは余計なお世話ですよね。また、親にとっては気分がいいものでもありません。じつはこれ、いずれも過去の私が言っていた台詞です…。

そんな過去の反省を踏まえて今は、親との会話や動作の中からヒントを見つけて提案するようにしています。

たとえば常備薬の整理の仕方。これまでは、飲む薬は腰を曲げないといけない場所に置き、さらに引くのに力が必要な重い引き出しに入れていました。

そこで、体の不自由な母がもっとラクな姿勢で管理できる棚に移動することを提案。自然な流れでその棚の片づけができました。

ほかにも、立ちながら着替えをするのがつらそうな様子だったので洗面所に補助イスをプレゼントさせてと提案。「イスを置くために少し片づけてもいいかな?」と伝えてから、片づけをしました。

●方法2:思い出のものがある場所はまず避ける

高齢者にとってものの多さ=安心となっている場合もあるので、片づけ当初は捨てることにフォーカスせず慎重に進めました。

そこで、思い出のものが少なく日用品などの生活雑貨が収納されている階段下からスタート。最初に取りかかったことは、いろんな場所に点在していたものを1か所にまとめていく作業です。

洗剤や掃除道具、ゴミ袋がまさにそれ。一緒に使うものをできるだけセットにしておき、動線を考えるとよりいいです。整理収納の仕事においても、1か所にまとめる作業は捨てることが苦手な人に対して、よい準備運動になると感じます。

●方法3:片づけ本を参考にせず親の気持ちに寄り添った声がけをする

一度目の実家の片づけで失敗したいちばんの原因は「伝え方」といっても過言ではありません。これまで読んだ片づけのノウハウ本から学んだことをえらそうに説明。今思えば余計なお世話なことばかり熱心に伝えていました…。

しかし、それよりも親と会話をして、「こっちのほうが使いやすいんじゃない? ○○をすっきりさせられたら、○○を収納できそうだね!」、「ここ片づけたら○○ができるよ!」など、伝え方を試行錯誤。

たとえば、「いつでも介護ベッドを置けるようにしておきたいから和室を片づけていい?」と提案しながら片づけを進めることで、長年もの置きと化していた和室を片づけることができました。

実家が遠い方はとくにそうかもしれませんが、「短期集中で片づけたい!」という、その気持ちもとても分かります。ただ、最初から捨てることにフォーカスしすぎると出だしでつまずいてしまう可能性があります。

これから実家の片づけをするなら、まずは親との会話や動作から、使いづらそうな場所を見つけてよりよい方法を一度提案してみてはいかがでしょうか。これまでとは違った、親も自分も心が苦しくならない実家の片づけを始めることができるかもしれません。