十倉雅和会長(写真:つのだよしお/アフロ)

 9月19日、経団連の十倉雅和会長は記者会見で、11日に公表した「2024年度税制改正要望」で、社会保障制度改革の財源として消費税率引き上げを「有力な選択肢」と明記したことについて、「税を含めて一体的な改革をしなければ、日本の社会保障制度はもたない」と強調。

「若い世代が将来不安なく、安心して子どもを持つには全世代型の社会保障改革しかない。それには消費税などの増税から逃げてはいけない」と述べ、実施時期に十分留意しつつ、増税は必要だとの考えを示した。

経団連が各年度の税制改正に向けた要望で、消費税引き上げに言及するのは異例のことです。要望では、法人税減税で人やモノへの投資を促進し、持続的な経済成長を実現すべきだとも訴えていました。

 ただ、安倍政権で消費税率が5%から8%、さらに10%に引き上げられる過程で、法人税率は25.5%からは23.2%まで引き下げられました。さらに毎年のように研究開発減税など優遇税制を拡充。

 2020年9月には、東京新聞が、法人税の一部を政策的に減税する『租税特別措置』(租特)で、資本金100億円超の巨大企業が受けた減税額の総額が第2次安倍政権発足以来、3兆8000億円にのぼったことを報じています。

 また、2022年10月には、2021年度に決算を迎えた法人の申告所得合計が79兆4790億円となり、過去最高だったことが明らかになっています」(政治担当記者)

 兵庫県明石市の前市長・泉房穂氏は、9月19日、自身のX(旧Twitter)にこう書きこんだ。

《消費税の引き上げを明記し、「税を含めて一体的な改革をしなければ、日本の社会保障制度は持たない」と経団連の会長が強調したとのことだが、これ以上、消費税を引き上げられたら、制度が持たないより先に、国民が持たない。そして経団連の好き放題への国民の我慢も持たない。》

 経団連の十倉会長が「消費税などの増税から逃げてはいけない」と発言したことに、SNSでは怒りの声が巻き起こった。

《実質賃金も年金も下落し続けているのにさらに消費税増税。経団連は国民を殺す気か》

《消費税は子どもがいると出費が増え負担が増すため、少子化を加速する要因となる そのため、社会保障費が余計増大し、消費増税もさらに必要になる負のスパイラルに陥るだけ》

《未来を担う子どもたちのために消費税減税を。安心して子どもを持つために経団連は減税から逃げるな》

《逆に申し上げたい、法人税増税から逃げてはいけない! そして内部留保を有効に社員に使ってほしい!》

 安倍政権の7年8カ月で、輸出で稼ぐ大企業の業績は回復したものの、その恩恵は広くは行き渡らなかった。そのうえ、消費税増税でさらに負担が増すのでは、怒りが爆発するのも当然だろう。