浴室は掃除していても、なかなかきれいな状態を維持できない場所。かといって、間違った洗剤の使い方をすると、素材を傷めてしまうので要注意です。洗剤メーカーに勤務し、工学博士でもある日刊住まいライターが、自身が実践している浴室を傷めずに、長くきれいな状態を保つ、洗剤の使い方と掃除法を紹介します。

汚れを落とすカギは「洗剤」「温度」「こする」の3つ

汚れを落とすためには、洗剤、温度(正確には原液を薄める水の温度)、こするなどの物理力が重要です。汚れを落ちのよい洗剤を、比較的高い温度で使い、より強い力で汚れをこすれば、頑固な汚れでも落としやすくなります。

さらに、同じ洗剤でも、汚れと接触する時間が長ければ長いほど、汚れに対しては効果的。ですから洗剤をお湯などで希釈して、高温の状態で使用すると、効果を発揮します。水温の高い洗剤が汚れと触れることで、洗剤と汚れが反応しやすくなり、汚れが落ちやすくなるためです。

ただ、実際には原液の状態で使用するケースが多いと思います。その場合は、洗剤は常温になるので、水温による効果はあまり期待できません。

そこで今回は、洗剤を原液の状態で使用するケースでの、洗剤の選び方と掃除法(こするなどの物理力)の2点に絞って、浴室を傷めずにきれいになる方法を紹介しましょう。

 

浴室掃除の基本の洗剤は中性の浴室用洗剤と塩素系漂白剤

浴室で発生する汚れは、おもに皮脂汚れ、石けんカス、水アカ汚れ、菌類(黒カビ、ピンク汚れ)、排水溝内の髪の毛などです。

浴室用洗剤の種類は、中性、アルカリ性、酸性、漂白系(厳密にいうと、アルカリ性に属する)と大きく4つに分けられます。漂白剤は塩素系と酸素系の2種類があり、塩素系は除菌効果が高く、酸素系はマイルドで扱いやすい特徴があります。なお、最近の浴室用洗剤には除菌剤が含まれており、塩素系ほどではありませんが、除菌できます。

頑固な皮脂汚れを落としたい場合はアルカリ性の洗剤が、水アカ汚れの場合は酸性の洗剤が効果的。ですが、中性洗剤でも落とせないことはありません。中性洗剤のメリットは、アルカリ性や酸性の洗剤に比べて、浴室で使われている部材を傷めないこと。使用者にとっても、安全で扱いやすいです。

わが家では、菌類と排水溝内の髪の毛に対しては塩素系の漂白剤で、それら以外の汚れに対しては、中性の浴室用洗剤を使うようにしています。

 

スプレーしたまま放置、コーキング部分は要注意!

ここ最近、洗剤をスプレーしたまま放置して、水で洗い流す方法が流行っています。スプレーして放置する理由は、洗剤と汚れを反応させる時間が必要なためです。浴槽や鏡の掃除であれば、この方法で問題ありません。

しかし、床回りのコーキング部分は要注意。コーキングの内側には接着剤があります。洗剤をスプレーして放置すると、コーキングのすき間から内部へ徐々に浸透する可能性が。シリコーンも接着剤も多種多様で、使用する洗剤の種類によっては、影響を受ける可能性があります。

 

コーキング部分はスプレーしたらすぐこすり洗いを!

一方で、わが家では、中性洗剤をスプレーしてすぐに、こすり洗いを行います。これだけできれいな状態をキープできています。時間をかけずに掃除をするため、洗剤が浸透することもありません。中性洗剤を使うことで、アルカリや酸ほどの材質への影響もありません。

ただし、この方法は、頑固な汚れに対しては難しいという欠点があります。ですから、頑固な汚れにならないよう頻繁に掃除をすることは大事です。

筆者にとっても、カビ汚れが発生しやすいコーキング部分には要注意箇所。カビが少しでもできていたら、漂白剤ですぐに掃除するようにしています。漂白剤はアルカリ性かつ塩素系なため、なるべく短時間で掃除するようにも意識しています。

お風呂掃除で気をつけたい洗剤の取り扱い方

酸性の洗剤は、石けんカスや水アカ汚れに効果的なため、愛用している方も多いと思います。ただ、浴室では塩素系漂白剤も使う可能性があるため、製品のラベルにも記載のとおり、酸性洗剤と決して混ぜないように注意しましょう。混ぜると毒ガスの塩素ガスが発生します。

浴室には鏡や水栓、浴槽など、さまざまなところに水アカが付着します。水アカ汚れには酸性の洗剤が効果的と言いましたが、じつは酸性の洗剤でも落とせない水アカ汚れがあります。水アカ汚れにはおもに2種類あり、酸性洗剤で落とせるカルシウム系と、酸性洗剤でも落とせないシリカ系があるからです。

後者のシリカ系の水アカとは、ガラスや鏡に付着した水アカ。これは硬いスポンジなどでこすりり洗いをして削ぎ落す必要があります。また、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを含むプロ用(業務用)アルカリ洗剤でも、水アカ汚れを落とせます。

ただ、このアルカリ洗剤は非常に強力なため、取り扱いには要注意です。使用するにあたっては、ゴム手袋と保護メガネの着用が望ましいです。また、目線より上の高さで使用する場合は、直接汚れに吹きつけるのではなく、スポンジなどに吹きつけてこすってください。

※浴室掃除の際は、洗剤容器に記載されている表示を確認し、注意点を理解してから使用しましょう