パワハラ訴えられた裁判でニセ証拠提出、元弁護士に有罪 横浜地裁「一般人より厳しい非難」
事務所の部下からパワハラ被害を訴えられた裁判で虚偽の証拠を提出したとして、有印私文書偽造・同行使などの罪に問われた元弁護士・古澤眞尋被告人の判決公判が9月15日、横浜地裁であり、渡邉史朗裁判官は懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役3年6月)の有罪判決を言い渡した。
渡邉裁判官は、有印私文書偽造・同行使罪、偽造有印私文書行使罪に加え、成立時期を巡って一部争っていた偽証教唆罪についても認定した。
「刑の執行を猶予する」と言い渡された瞬間、古澤被告人は約5秒間深々と頭を下げ、まっすぐ裁判官を見て「ありがとうございます」と述べた。弁護人の宮村啓太弁護士は控訴について「本人と話して検討する」としている。
●裁判官「他人の人権を顧みず、次々と犯行」
渡邉裁判官は判決理由で「(元勤務弁護士との)パワハラ訴訟を自分にとって有利に進めようと、銀行通帳や弁護士の印鑑など社会的信用の高いものを巧妙に偽造した上、弁護士としての信用をちらつかせて、依頼者に偽証するよう説き伏せたことは悪質」などと断じた。
また「高度の誠実さと品性を保持すべき立場にある中で、相手の人権を顧みず次々と犯行に及んだ」と述べ、一般人よりも厳しい非難に値するとした。
一方で、偽造が私文書の一部だったことや、ずさんな面もあったことから「社会的に重大な犯行とまでは言えず、(パワハラ訴訟には)最終的に実害は生じなかった」と説明。誤った選択にはうつ症状の影響もあったなどとして、執行猶予付き判決とした。
●有罪が確定すれば弁護士資格失う
古澤被告人は、日弁連が2022年5月17日付で業務停止2年にする裁決をした約1週間後の5月25日に横浜地検に逮捕された。2023年6月27日付で、神奈川県弁護士会から2度目の退会命令を受けたが、日弁連に審査請求している。刑が確定した場合、弁護士資格を失う。
判決によると、古澤被告人は妻と共謀し、2017〜2018年に▽依頼者との間での通帳の取引履歴▽A弁護士の印章入りの督促通知書▽B弁護士が中傷メールを作成したことを自認する文書ーの3点を偽造し、提出した。自宅や事務所のパソコンで、PDFファイルの編集ソフトなどで書き換えを重ねたという。また、2020年にはパワハラ訴訟に証人として出廷した男性に虚偽陳述をさせた。
最後に「執行猶予について、あなたに説明するまでもありませんね。5年という期間になりますので、気をつけてください。ご苦労さまでした」と声をかけた渡邉裁判官に対し、古澤被告人は「ご迷惑をおかけしました」と再度、深々と一礼。2022年10月に始まり、約1年間にわたった裁判が終わった。