歴史の扉を開いた「女子サッカーの日」。WEとなでしこリーグ初の共催。新潟Lの川澄奈穂美は「また見に行こうと思ってくださる試合を」
9月3日、味の素フィールド西が丘は「女子サッカーの日」と題して、初めてWEリーグとなでしこリーグが共催された。
まず、15時からは、なでしこリーグ1部の第17節、スフィーダ世田谷FC対愛媛FCレディースのゲームが行なわれた。今季はここまで苦戦が続いていたディフェンディングチャンピオンのS世田谷だが、開始7分、長粼茜のゴールで先制すると、その後も金子ゆい、大竹麻友が加点し、3−0で愛媛Lを下した。勝点を25まで伸ばしたS世田谷は、5位に浮上した。
観客動員は、日本の女子サッカー界全体に共通した課題のひとつだ。地元に根差した活動を続け、駒沢陸上競技場の開催では3000人を超える観客を集めることもあるS世田谷だが、その他の会場でのホームゲームでは平均500人を超える規模になる。
この日は、2試合共通チケットのため、いつもよりも高い金額設定となったが、その他会場のホームゲームでは最多で、だいたい5割増となる787人が足を運んだ。
「今日は、歴史の扉を開く一日。私たちも、女子サッカー界全体としてやっていくべきだと思っていたので、協力してくれたベレーザのみなさん、西が丘サッカー場のみなさんには感謝です」(神川明彦監督/S世田谷)
チケットの発売方法や観戦エリアの条件の告知が、試合開催の当該週まで決まらなかったことなど、初めての試みゆえのトラブルもあったが、これらも回を重ねることで消化されていくだろう。神川監督からも「お客様にはご迷惑をおかけしたところもあったと思います」と、ファン、サポーターを気遣うコメントがあった。
加えて「成功かどうかは別として、こういう試みはどんどんやっていかなければいけません」と力を込めた。「日本はあらゆるスポーツに人気があるので、(新たな)ファン層を獲得していかなければいけない。なでしこジャパンの活躍には、私も胸躍らされたので、その灯を消してほしくない」。
日本の女子サッカーを支えるベースでもある、なでしこリーグの指揮官としての矜持が垣間見えた。
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続いて19時から、この日の第2試合として、WEリーグカップのグループステージ第2節、日テレ・東京ヴェルディベレーザ対アルビレックス新潟レディースの試合が行なわれた。
初戦から代表組をフル稼働させたベレーザだが、その先週の観客は三桁の810人。この日は、S世田谷との連携や、代表組が出ているなら見に行こうという人たちが足を運び、こちらも前節より観客を500人強増やして、観客数は1,340人となった。
様々なイベントなどプラス要素はいくつかあったが、その最たるものは、アウェーチームの新潟L・川澄奈穂美の登場だろう。
スタジアムの風景について、以前にプレーしていた時(当時はなでしこリーグだが)と比べて変化があるかを尋ねると、「アメリカへ行く以前と、そんなには変わっていないように思います」という答えが返ってきた。
しかし、それは実力、実績、発信力を兼ね備える川澄本人の加入が、大きく作用しているからだ。新潟Lは、前節のホームゲームで、昨季と同カード(スタジアム、日時の違いはあったが)にもかかわらず、観客数を数倍に増やしていた。
「(サポーターの中にも)『待っていたよ』と言ってくださる方もいて、今日もどっちがホームかというくらい、相手と同じくらいに多くのサポーターが来てくれて、それは嬉しいことだし、みなさんがまた見に行こうと思ってくださるような試合をこれからもできたら」(川澄)
幸いにも、観客の期待を裏切らない好ゲームになった。10分、石淵萌実のヘディングシュートで新潟Lが早々に先制すれば、ベレーザが菅野奏音、藤野あおばのゴールで逆転。新潟Lが石淵のこの日2点目で追いつくと、88分、ベレーザは今季10番を背負う木下桃香から途中出場の北村菜々美とつないで勝ち越す。
アディショナルタイムには、川澄が左足で再び同点かというシュートを放つが、これを田中桃子がビッグセーブ。ベレーザが3−2で勝利し、緑のペンライトが西が丘で振られた。
様々な仕掛けでスタジアムに足を運んでもらい、良い内容のゲームをすることでリピーターを少しずつ増やしていく。「女子サッカーの日」が、そのひとつのきっかけになればいい。
取材・文●西森彰(フリーライター)
まず、15時からは、なでしこリーグ1部の第17節、スフィーダ世田谷FC対愛媛FCレディースのゲームが行なわれた。今季はここまで苦戦が続いていたディフェンディングチャンピオンのS世田谷だが、開始7分、長粼茜のゴールで先制すると、その後も金子ゆい、大竹麻友が加点し、3−0で愛媛Lを下した。勝点を25まで伸ばしたS世田谷は、5位に浮上した。
この日は、2試合共通チケットのため、いつもよりも高い金額設定となったが、その他会場のホームゲームでは最多で、だいたい5割増となる787人が足を運んだ。
「今日は、歴史の扉を開く一日。私たちも、女子サッカー界全体としてやっていくべきだと思っていたので、協力してくれたベレーザのみなさん、西が丘サッカー場のみなさんには感謝です」(神川明彦監督/S世田谷)
チケットの発売方法や観戦エリアの条件の告知が、試合開催の当該週まで決まらなかったことなど、初めての試みゆえのトラブルもあったが、これらも回を重ねることで消化されていくだろう。神川監督からも「お客様にはご迷惑をおかけしたところもあったと思います」と、ファン、サポーターを気遣うコメントがあった。
加えて「成功かどうかは別として、こういう試みはどんどんやっていかなければいけません」と力を込めた。「日本はあらゆるスポーツに人気があるので、(新たな)ファン層を獲得していかなければいけない。なでしこジャパンの活躍には、私も胸躍らされたので、その灯を消してほしくない」。
日本の女子サッカーを支えるベースでもある、なでしこリーグの指揮官としての矜持が垣間見えた。
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続いて19時から、この日の第2試合として、WEリーグカップのグループステージ第2節、日テレ・東京ヴェルディベレーザ対アルビレックス新潟レディースの試合が行なわれた。
初戦から代表組をフル稼働させたベレーザだが、その先週の観客は三桁の810人。この日は、S世田谷との連携や、代表組が出ているなら見に行こうという人たちが足を運び、こちらも前節より観客を500人強増やして、観客数は1,340人となった。
様々なイベントなどプラス要素はいくつかあったが、その最たるものは、アウェーチームの新潟L・川澄奈穂美の登場だろう。
スタジアムの風景について、以前にプレーしていた時(当時はなでしこリーグだが)と比べて変化があるかを尋ねると、「アメリカへ行く以前と、そんなには変わっていないように思います」という答えが返ってきた。
しかし、それは実力、実績、発信力を兼ね備える川澄本人の加入が、大きく作用しているからだ。新潟Lは、前節のホームゲームで、昨季と同カード(スタジアム、日時の違いはあったが)にもかかわらず、観客数を数倍に増やしていた。
「(サポーターの中にも)『待っていたよ』と言ってくださる方もいて、今日もどっちがホームかというくらい、相手と同じくらいに多くのサポーターが来てくれて、それは嬉しいことだし、みなさんがまた見に行こうと思ってくださるような試合をこれからもできたら」(川澄)
幸いにも、観客の期待を裏切らない好ゲームになった。10分、石淵萌実のヘディングシュートで新潟Lが早々に先制すれば、ベレーザが菅野奏音、藤野あおばのゴールで逆転。新潟Lが石淵のこの日2点目で追いつくと、88分、ベレーザは今季10番を背負う木下桃香から途中出場の北村菜々美とつないで勝ち越す。
アディショナルタイムには、川澄が左足で再び同点かというシュートを放つが、これを田中桃子がビッグセーブ。ベレーザが3−2で勝利し、緑のペンライトが西が丘で振られた。
様々な仕掛けでスタジアムに足を運んでもらい、良い内容のゲームをすることでリピーターを少しずつ増やしていく。「女子サッカーの日」が、そのひとつのきっかけになればいい。
取材・文●西森彰(フリーライター)