「琉球というクラブはこの先も続いていく」J3に身を投じた金崎夢生の決心「ベース作りに貢献したい」
2023年シーズンのJ3を見渡すと、FC岐阜の柏木陽介や宇賀神友弥、愛媛FCの森脇良太、いわてグルージャ盛岡の水野晃樹など元日本代表クラスの30代ベテラン選手が何人かいる。
彼らがJ3という環境に赴いた理由は人それぞれだ。こうしたなか、鹿島時代に2016年のJリーグチャンピオンシップMVPに輝いた金崎夢生が、昨季限りで大分トリニータを退団し、FC琉球入りしたことに驚きを感じた人も少なくなかっただろう。
金崎は偽らざる胸の内を吐露する。
「鹿島アントラーズにいた頃を思い返してみると、チームの基盤は長くいた年長の選手たちが作ってくれていたんです。
当時で言えば、(小笠原)満男さんやソガさん(曽ケ端準)といったベテランの人たちがいて、彼らが作ってきたチームに自分がポッと最後に入っただけ。確固たるベースの中でプレーできたからこそ、僕は活躍できたし、結果も出せた。
でも、その時と同じ環境はないわけだし、同じことをやっていてもダメなんだよなという思いは自分の中にずっとありました。
そんな時、琉球から誘いがあったんです。琉球は昨季J2にいたけど、J3に落ちてしまって、再び基盤作りからスタートしなければならない状況だった。そういうチームに自分の経験を還元できればいいし、J3からJ2、J1と上がっていくベース作りに貢献したいという気持ちがあって、今年頭にここに来る決断をしたんです」
だた、いったん落ちたチームを再建するというのは想像以上に難しい。金崎自身も3月4日の開幕・ヴァンラーレ八戸戦の時点では点取り屋という期待を背負い、後半から途中出場。いきなりレッドカードを受けて退場するという予期せぬスタートを強いられた。
その後も試合には出たり出なかったりで、なかなかゴールやアシストという目に見える結果もついてこなかった。7月からはボランチに転向しているが、劇的に出番が増えているわけではない。そんな彼自身とともにチームも停滞感を打破しきれず、今季はここまでJ2昇格争いに絡めず、足踏みが続いているのだ。
「今は残り15試合というところまで来ていますけど、正直言って、ここからJ3優勝とか2位以内というところまで行くのはかなり難しいだろうなという感覚があります。
そういうなかでも、琉球というクラブはこの先も続いていく。来年につながるサッカーをやっていくことがすごく大事なんです。
クラブの最終的な目標はJ1で通用するチームを作ること。たまたま上のカテゴリーに上がれたとしても、すぐ落ちてしまったら本当に意味がないし、確固たる基盤にはつながらない。今は一つひとつの試合に一喜一憂せず、近未来のJ2・J1昇格を見据えたチームを作っていくことを重視すべきだと僕は考えています」
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金崎がこう強調するのも、2007年からの自身のプロキャリアを振り返れば、ある程度の成功を収めてきたクラブには、それだけの基盤があったからだ。
2008年のナビスコカップ(現ルヴァンカップ)を制した大分トリニータ時代は、ペリクレス・シャムスカ監督のもと、ウェズレイや高橋大輔らベテラン、高松大樹や上本大海ら中堅、そして金崎や森重真人といった若手が上手く融合し、強固な集団ができ上がっていた。
2010年にJ1制覇した名古屋グランパスにしてもそう。ドラガン・ストイコビッチ監督というカリスマが率いたチームは、楢崎正剛、田中マルクス闘莉王、玉田圭司、田中隼磨ら個性豊かな面々が最高のハーモニーを奏でており、まだ若かった金崎も良いアクセントになっていた。
「勝てるチームとはどういうものなのか」と自ら体感してきた金崎にしてみれば、今の琉球には足りない部分が少なくないのだろう。
それでも、チームには阿部拓馬や野田隆之介ら経験豊富な選手がいるし、岡澤昂星や寺阪尚悟のような若い才能も加わっている。アプローチ次第では良くなる可能性を大いに秘めているだけに、金崎も自分の力を最大限に注ぎ込みたいという気持ちが非常に強いのだ。
「どのチームも監督が変わるし、選手も変わるから、一つの方向性を続けていくのは難しい。それはよく分かっています。だからこそ、明確なビジョンとそれを遂行する強化担当のような存在が必要じゃないかなと僕は思います。
鹿島だったら、(鈴木)満さんのような人が長くチーム編成をしていたから、あれだけの常勝軍団を作れた。長期ビジョンでチーム強化のできる人材がいるクラブは、いずれ強くなると思いますし、琉球もそうなっていけば理想的。そのために僕も自分にできることを必死にやっていきます」と、彼は改めて強い決意を口にした。
もちろん、今季のJ3はまだ終わっていないし、大混戦になっている以上、ノーチャンスというわけではない。何か一つきっかけを掴めれば、琉球が大躍進を遂げないとも言い切れない。金崎がそういう前向きな変化への布石を打ってくれれば、喜名哲裕監督も彼を重用するはずだ。
今こそプロ生活17年の多種多様な経験値を活かすべき時である。
※第2回終了(全3回)
取材・文●元川悦子(フリーライター)
彼らがJ3という環境に赴いた理由は人それぞれだ。こうしたなか、鹿島時代に2016年のJリーグチャンピオンシップMVPに輝いた金崎夢生が、昨季限りで大分トリニータを退団し、FC琉球入りしたことに驚きを感じた人も少なくなかっただろう。
「鹿島アントラーズにいた頃を思い返してみると、チームの基盤は長くいた年長の選手たちが作ってくれていたんです。
当時で言えば、(小笠原)満男さんやソガさん(曽ケ端準)といったベテランの人たちがいて、彼らが作ってきたチームに自分がポッと最後に入っただけ。確固たるベースの中でプレーできたからこそ、僕は活躍できたし、結果も出せた。
でも、その時と同じ環境はないわけだし、同じことをやっていてもダメなんだよなという思いは自分の中にずっとありました。
そんな時、琉球から誘いがあったんです。琉球は昨季J2にいたけど、J3に落ちてしまって、再び基盤作りからスタートしなければならない状況だった。そういうチームに自分の経験を還元できればいいし、J3からJ2、J1と上がっていくベース作りに貢献したいという気持ちがあって、今年頭にここに来る決断をしたんです」
だた、いったん落ちたチームを再建するというのは想像以上に難しい。金崎自身も3月4日の開幕・ヴァンラーレ八戸戦の時点では点取り屋という期待を背負い、後半から途中出場。いきなりレッドカードを受けて退場するという予期せぬスタートを強いられた。
その後も試合には出たり出なかったりで、なかなかゴールやアシストという目に見える結果もついてこなかった。7月からはボランチに転向しているが、劇的に出番が増えているわけではない。そんな彼自身とともにチームも停滞感を打破しきれず、今季はここまでJ2昇格争いに絡めず、足踏みが続いているのだ。
「今は残り15試合というところまで来ていますけど、正直言って、ここからJ3優勝とか2位以内というところまで行くのはかなり難しいだろうなという感覚があります。
そういうなかでも、琉球というクラブはこの先も続いていく。来年につながるサッカーをやっていくことがすごく大事なんです。
クラブの最終的な目標はJ1で通用するチームを作ること。たまたま上のカテゴリーに上がれたとしても、すぐ落ちてしまったら本当に意味がないし、確固たる基盤にはつながらない。今は一つひとつの試合に一喜一憂せず、近未来のJ2・J1昇格を見据えたチームを作っていくことを重視すべきだと僕は考えています」
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金崎がこう強調するのも、2007年からの自身のプロキャリアを振り返れば、ある程度の成功を収めてきたクラブには、それだけの基盤があったからだ。
2008年のナビスコカップ(現ルヴァンカップ)を制した大分トリニータ時代は、ペリクレス・シャムスカ監督のもと、ウェズレイや高橋大輔らベテラン、高松大樹や上本大海ら中堅、そして金崎や森重真人といった若手が上手く融合し、強固な集団ができ上がっていた。
2010年にJ1制覇した名古屋グランパスにしてもそう。ドラガン・ストイコビッチ監督というカリスマが率いたチームは、楢崎正剛、田中マルクス闘莉王、玉田圭司、田中隼磨ら個性豊かな面々が最高のハーモニーを奏でており、まだ若かった金崎も良いアクセントになっていた。
「勝てるチームとはどういうものなのか」と自ら体感してきた金崎にしてみれば、今の琉球には足りない部分が少なくないのだろう。
それでも、チームには阿部拓馬や野田隆之介ら経験豊富な選手がいるし、岡澤昂星や寺阪尚悟のような若い才能も加わっている。アプローチ次第では良くなる可能性を大いに秘めているだけに、金崎も自分の力を最大限に注ぎ込みたいという気持ちが非常に強いのだ。
「どのチームも監督が変わるし、選手も変わるから、一つの方向性を続けていくのは難しい。それはよく分かっています。だからこそ、明確なビジョンとそれを遂行する強化担当のような存在が必要じゃないかなと僕は思います。
鹿島だったら、(鈴木)満さんのような人が長くチーム編成をしていたから、あれだけの常勝軍団を作れた。長期ビジョンでチーム強化のできる人材がいるクラブは、いずれ強くなると思いますし、琉球もそうなっていけば理想的。そのために僕も自分にできることを必死にやっていきます」と、彼は改めて強い決意を口にした。
もちろん、今季のJ3はまだ終わっていないし、大混戦になっている以上、ノーチャンスというわけではない。何か一つきっかけを掴めれば、琉球が大躍進を遂げないとも言い切れない。金崎がそういう前向きな変化への布石を打ってくれれば、喜名哲裕監督も彼を重用するはずだ。
今こそプロ生活17年の多種多様な経験値を活かすべき時である。
※第2回終了(全3回)
取材・文●元川悦子(フリーライター)