「なぜ今更彼らと…」 仏ダッソーCEO 次世代機開発にベルギーを入れたくない理由とは
フランスの軍需企業であるダッソー・アビエーションが2023年5月26日、第6世代機開発計画である「FCAS」にベルギーが参加することに難色を示しました。原因はとある機体購入にあるようです。
ベルギーは「F-35を選んだ人たち」
フランスの軍需企業であるダッソー・アビエーションが2023年5月26日、第6世代機開発計画である「フューチャー・コンバット・エア・システム(FCAS)」にベルギーが参加することに関して難色を示しました。
ダッソーが開発しフランス空軍が使用する「ラファール」(画像:フランス空軍)。
「FCAS」に関しては、フランスのほかドイツ、スペインが参加しており、企業としてはダッソー、エアバス、インドラシステマスが開発を担当。フランスの戦闘機「ラファール」とドイツ、スペインが運用しているユーロファイター「タイフーン」戦闘機の後継機を2040年までに獲得することを目指しています。
ベルギーは「FCAS」のほかにも、日本とイタリア、イギリスが共同開発している「テンペスト」への参加にも興味を示していますが、ダッソー・アビエーションCEOであるエリック・トラピエ氏は5月24日のフランス上院の公聴会において「なぜ今更、ベルキーに仕事を与えるのかわからない」と発言しました。
トラピア氏がそう言った理由は同国がアメリカ・ロッキードマーチン製のF-35「ライトニング II」を購入したことに理由があるようで、さらに「なぜ、F-35を選んだ人たちのために、我々の工場や設計事務所に部屋を作らなければならないのでしょうか」とつけ加えたそうです。
突如F-35を買うことを決めたベルギー
ベルギーは2018年10月に突如F-35購入を決定し、他のヨーロッパ連合(EU)諸国から批判を浴びたことがあります。
ベルギーなど欧州諸国が採用しているF-35「ライトニングII」(画像:アメリカ空軍)。
というのも、当時EUではアメリカ製兵器への依存を低くする方針で、特にフランスはこの方針を推し進めていた国でもありました。
最初ベルギーは、フランスなどの方針に従い、「タイフーン」をF-16に変わる次期戦闘機候補にあげていましたが、維持費などがネックとなりF-35を購入するという決定をしました。なお、ダッソーが開発した「ラファール」に関してもアメリカ製の武装と互換性がなく、殆ど使用できないということで候補からは外されていました。そういった経緯もあったからこそ、今回のトラピア氏の批判かもしれません。
その後、2019年9月にはポーランドが、2022年7月にはチェコがF-35の購入を決定。同機の配備はEU構成国に拡大していきます。
ちなみに「FCAS」に参加しているドイツも、2022年2月にロシアがウクライナへ侵攻したことを受け、防衛予算を見直し2022年12月にF-35の調達予算を承認しており、スペインも強襲揚陸艦「ファン・カルロス1世」の艦載機としてF-35Bに興味を示していますが、この件に関しての抗議はフランス上院の公聴会ではなかったようです。