幕張メッセで開催された「建設・測量生産性向上展」で、未来感満載の無人ダンプが展示されていました。インパクト抜群の実車を披露したのは大型機械メーカーの諸岡。どういうコンセプトで製作したのか、話を聞きました。

SF感が満載の無人クローラー式ダンプ披露!

 幕張メッセで2023年5月24日から26日まで開催された「建設・測量生産性向上展」。「CSPI-EXPO」とも呼ばれるこのイベントでは、工事現場で使われる建機(建築機械)や測量機器のメーカーが数多く出展しており、各ブースでは最新モデルだけでなく、開発中の機器や次世代技術に関する展示も行われていました。

 なかには、これまでの建築機械とは全く異なる近未来的な建機も。特に目を引いたのが大型機械メーカー、諸岡(MOROOKA)のブースにあったコンセプトモデル「MAVE 001」(メイブ・ゼロ・ゼロ・ワン)です。全体のフォルムは突起部分が少なく整っており、塗装もSFチックなブルーグレー系で統一。CSPIの会場になければこれが建築機械だとは誰も思わないでしょう。

 会場で最初にこれを目にしたとき、筆者(布留川 司:ルポライター・カメラマン)は「これは『メガフォース』のタックコムの風味があるな」と思いました。なお、同行していた編集部スタッフは、「ヘッドライトのデザインは『ナイトライダー』のナイト2000のようだ」と感じたとか。


諸岡のブースで特に目を引いた「MAVE 001」。一見するととても建築機械には見えないデザイン(布留川 司撮影)。

 そもそも、諸岡はクローラー式キャリアダンプの国内メーカーとして知られており、防衛省・自衛隊にも「資材運搬車」という名の同社製品が、30年あまりにわたって納入されています。しかし、その「資材運搬車」も、同社が造るものとしてはほんの一部で、2023年5月現在、同種のキャリアダンプだけでも10種類ラインナップされているほか、自走式木材破砕機やクローラー式フォークリフトなども開発・販売しています。

 今回展示された「MAVE 001」は、諸岡の社員の説明によると、同社の主力商品であるキャリアダンプの未来を想定したコンセプトモデルだといいます。

目標は自律運転と電動化

 前出の諸岡社員によると、コンセプトモデルの名前である「MAVE」とは、「Morooka Autonomous VEhicle」の頭文字を取ったものとこと。意味は「諸岡自律運転車両」で、その後ろに付く「001」とは、これがコンセプトモデルとして最初の車両であることを示しているのだそうです。

 なお、筆者らの目を引いたデザインに関しては「特にこだわりはないが格好良くしました」とのこと。ただ、デザインした担当者の年齢は『ナイトライダー』をリアルタイムで見ていた頃の世代だと教えてくれました。


車体上部のGNSSのアンテナ。精度を高めるために左右で計2つ取り付けられていた(布留川 司撮影)。

 建築業界では現在、人手不足の解消と作業の効率化を目指して遠隔操作や無人化が技術的なトレンドとなっています。諸岡でも、自社のクローラー式キャリアダンプの遠隔操作や自動運転技術の開発実証を行っているとのハナシで、この「MAVE 001」が目指すのは、乗員を必要としない自律運転と、クリーンで活動範囲を広げられる動力の電動化だということでした。

 現時点では、この「MAVE 001」で、それら技術は達成できていないとのことですが、運転席がない点からもわかる通り、遠隔操作で動かすことは可能だそうです。

 車体の前後左右、四方にカメラが装備されており、正面下部には自動運転では定番となったレーザーを使ったセンサー、「LiDAR」(ライダー)も搭載されていました。車体上部にはGNSS(全地球航法衛星システム)アンテナが設置されていますが、これも精度をより高めるために2つ取り付けられていました。

将来は宇宙も活動範囲?

 動力は現状ディーゼルエンジンですが、将来的にはこのサイズの車両でも電動化するそうです。これは、排気ガスが出ないことによる環境負荷の低減だけでなく、これまで活動できなかった場所での運用も可能にするといいます。同社ブースで行われたプレゼンでは、この「MAVE 001」が宇宙の月面基地で活躍するコンセプトアートが映され、「先端技術により将来の稼働フィールドは劇的に拡大する」と解説されていました。


諸岡の新型キャリアダンプ「MST200CR」。世界最大級の20t積クローラー式ダンプ(布留川 司撮影)。

 現時点で「MAVE 001」は、あくまでもインパクト重視のコンセプトモデルです。しかし、諸岡では前出したような各技術の開発を進めており、自動運転に関しては林野庁の「R4戦略的技術開発・実証事業」において林内での自動運転技術の開発実証を行っているとプレゼンで説明していました。これについては、2028年の製品化を目指しているそうで、電動化についてもより小型の電動化されたキャリアダンプのコンセプトモデルをCSPIで展示していました。

 建築現場といえば、これまでのイメージは「きつい・汚い・危険」、いわゆる3K仕事の代表格といえる場所でした。しかし、現在では建築機械や施工方法も進歩しており、少子高齢化や労働環境の改善といった動きが後押しする形で、大きな技術革新が今後も続くと予想される分野です。

 諸岡の「MAVE 001」はそんな未来の建築現場の姿を具現化した大型機械といえるのかもしれない、筆者は諸岡のブースを訪ねてみてそう感じました。