ダイハツ認証不正のナゾ多き“動機” ロッキー/ライズ出荷停止 手間とコストをかけた虚偽?
海外向け車種に続き、ついに国内車種でも明らかとなったダイハツの認証不正。売れ筋車種の出荷・販売停止に至るまでの経緯は、ちょっと不可解なものでした。
側面衝突試験 立ち合いは「片側」だけでよし
ダイハツ工業の認証不正が国内にも波及しました。同社の認証申請に関連する不正公表は2023年4月28日に続いて2度目です。内部通報から発覚した当初は、海外で限定的とされましたが、日本国内で取得した試験データであったことから、国土交通省は国内向け車両の確認を求めていました。
ダイハツ「ロッキー」HEV。e-スマートハイブリッドを名乗る(画像:ダイハツ)。
同社が5月19日に発表した国内向け車両での不正は、小型SUVであるダイハツ「ロッキー」とトヨタ「ライズ」のHEV(ハイブリッド車)を対象とした側面衝突時の乗員保護試験に関するものです。対象車両は7万8440台、うち約70%はトヨタブランドの「ライズ」が占めます。
ダイハツはこの不正を5月18日に発見し、翌日には新車の出荷・販売を停止。国土交通省に報告すると共に、公表に踏み切りました。
不可解なのは不正の内容です。側面衝突時の乗員への影響が基準値内であることを証明するための試験で、実施すべき試験を省略して、同じ試験を2度繰り返し、2度目の試験で得られたデータを代用しました。
この試験は「UN R135」と呼ばれ、電柱などのポールに車両の側面が衝突した場合を想定して実施されます。電柱に見立てた直径254mmの固定したポールに、速度32km/hで車両を側面衝突させて、そのダメージを計測するものです。
この「ポール側面衝突試験」は運転席側と助手席側の2方向から実施したデータを提出するが必要がありますが、審査官立ち合いを求める側面を、メーカーが選択することができます。試験車両にとって不利になることが想定される側面は、立ち合いを省略してメーカーの社内試験で済ませられるのです。ダイハツは助手席側の側面衝突試験で立ち合いを求めましたが、運転席側は社内試験を実施する選択をしました。
運転席側に自信がなかった? 2台おシャカにしてまで…
19日に公表された内容では、この運転席側の社内試験をせずに、立ち合いが行われた「左側(=助手席側)の試験データを提出した」とされています。しかし、実際には、すでに実施済みの助手席側の衝突試験を、社内試験で再び繰り返しています。不正は助手席側で実施した2回目の社内試験データを、運転席側で実施したと偽って提出したことです。
助手席側と運転席側の違いはあっても、同種の側面衝突試験です。クラッシュした車両は同じ試験では使えません。なぜ新しい試験車両を用意する手間をかけてまで、再び同じ試験を実施したのか。国内向け車両に及んだ同社の不正には“謎”が残ります。
トヨタ「ライズ」HEV(画像:トヨタ)。
「このモデル(ロッキー/ライズ)では、HEVではないガソリン車があり、構造的に差異はない。ガソリン車の運転席側の側面衝突試験は問題なく行っていて、影響を与えるものではないと考えている」(ダイハツ担当者)
今後、ダイハツは5月15日に設置した第三者委員会(貝阿彌 誠元東京地方裁判所長)を通じて調査を進めます。5月24日に運転席側の社内再試験を実施し、乗員の衝撃(傷害値)が規定内に収まっていること、ドア外れや開放、燃料漏れが生じていないことを確認したと26日に発表しました。今後、出荷・販売の再開に向けて、認証当局立会いでの試験など必要な手続きを当局と相談しながら進めるとしています。