フランスで「高速鉄道で2時間半以内に代替輸送できる短距離航空路線は運航禁止」という法律が成立しました。日本でこの法律が成立した場合、どこが禁止となるのでしょうか。

排出削減の取り組みでフランスが開始

 フランスにおいて2023年5月22日、「高速鉄道で2時間半以内で代替輸送できる短距離航空路線は運航禁止とする」という法律が成立しました。

 これは国内の「気候に関する市民会議」の提唱をうけて政府が進めていた政策です。ひとまずはパリ発、ボルドー、ナントおよびリヨン行きの路線が対象となります。

 さて、日本でもしこの法律が成立したと仮定した場合、どの航路が禁止となってしまうのでしょうか。


高速鉄道と飛行機の競合関係が法規制される?(画像:写真AC)。

●東京発
 東海道新幹線の場合、東京〜新大阪がちょうど2時間半弱です。羽田・成田と伊丹・関空を結ぶ4航路と羽田・成田〜中部国際空港が禁止対象となり、全日空、日本航空、ピーチ、スターフライヤー、ジェットスターが1日計60往復近く飛び回る空の大動脈がなくなることで、急ぎの移動客は新幹線へ移行することとなります。

 東北新幹線の場合、東京〜盛岡が2時間半圏内。しかしこれに相当する航空便(東京〜花巻)は無く、東京〜三沢だと新幹線で3時間を超えるため、禁止は免れそうです。山形方面だと新幹線の東京〜山形が2時間半超えとなり、やはりセーフ。

 上越新幹線の場合、東京〜新潟の最速「とき」が1時間50分ほど。北陸新幹線では、東京〜金沢の「かがやき」最速達列車が2時間半未満となります。前者は航空便がありませんが、後者は東京〜富山が1日3往復飛んでいます。なお、北陸新幹線が敦賀延伸した場合、東京〜小松は2時間半を超えるため、禁止は免れそうです。

 さらにリニア中央新幹線が開業すれば、東京〜新大阪は1時間。もしかしたら広島まで2時間半圏内に入ってくるかもしれません。

西日本発の「競合便」は

●大阪発
 新大阪〜博多は最速でギリギリ2時間半未満。このエリア内で定期便が飛んでいるのは大阪〜福岡で、12往復ほどが禁止対象となります。

 北陸新幹線が大阪まで開業すれば、試算で大阪〜金沢が1時間20分。その先、長野まで2時間半圏に含まれることとなります。とはいえ、ここに定期便は無く、長野市に至っては空港自体がありません(近隣は松本空港)。

●九州発
 鹿児島中央発着だと、広島までが2時間半圏内となります。周辺の定期便は以外と少なく、鹿児島〜福岡便があるだけです。

●北海道発
 北海道新幹線が札幌まで開業した場合、札幌〜新函館北斗は試算で1時間13分。青森までが2時間半圏内で、新千歳〜函館、青森便が禁止対象の定期便となってきます。

※ ※ ※

「鉄道を重要視する政策」とも取られるフランスの新政策ですが、日本でこのように見てみると、東京〜大阪〜福岡の大動脈をのぞき、既におおよそ飛行機と新幹線の「棲み分け」が進んでいることが分かります。

 いっぽうで大動脈の路線では「空港への移動を加味しても、飛行機のほうが速く安く快適」という図式があるため、今も飛行機の需要は一定高いままで、航空事業者としてはドル箱路線となっています。もし同様の法制度が議論された場合、業界からの反発も予想されるでしょう。