「銀座唯一の踏切」は残るのか 都心の「廃線跡」道路を再開発 “2つの首都高”つなぐルートに?
「銀座に残された唯一の鉄道踏切信号機」が残る都心の鉄道廃線跡の道路が、今後、大きく変わる見込みです。踏切前の高架の首都高と、途中でまたぐ首都高、2つの再開発計画に関連します。
「銀座に残された唯一の鉄道踏切信号機」が変わる?
銀座のはずれ、旧築地市場に近い銀座郵便局の隣に、「銀座に残された唯一の鉄道踏切信号機」との看板が立つ保存された信号機が立っています。この踏切が本来の役割を果たしていた線路を転用した「廃線跡道路」が、今後、大きく変わる見込みです。
廃線跡を転用した道路に架かる新尾張橋から見る首都高C1。今後“蓋”が架けられる予定(乗りものニュース編集部撮影)。
首都高八重洲線の高架が上空を貫く海岸通り沿いにある踏切から、旧築地市場へ向かって、カーブを描いた小道が延びています。現在は300m弱進んだ先、環2通りで途切れていますが、かつては築地市場の中まで延びていました。
これは、旧汐留貨物駅(もともと初代・新橋駅)と築地市場を結んだ貨物線の跡。1980年代に廃止され、平成の初め頃には区道として整備されています。
この道路は途中の新尾張橋で首都高C1都心環状線をまたぎます。以前は「築地川」が流れており、それを埋め立てて川底を首都高にした区間です。なお新尾張橋は、貨物線跡を道路として整備するにあたり、鉄道橋を道路橋に改築したものです。
この首都高の築地川区間には今後、“蓋”が架けられ、上部が緑道として再整備される計画があります。地元の中央区が発表している「銀座・築地周辺みどりのプロムナード構想」の図面を見ると、新富町方面から続く首都高上部の緑道の出口にあたるのが、この新尾張橋付近になるようです。
再開発計画は、踏切信号機が面している高架の首都高八重洲線、それに通じるKK線(東京高速道路)の廃止・緑道化と連動するもので、KK線も高架緑道となります。貨物線跡の道路は、その2つの緑道をつなぐ区間になるのです。
地元の中央区によると、この周辺の構造などについてはこれから検討するといいますが、KK線の高架緑道とC1の地上緑道とを連続的につなぐ空間にすべきという都の方針が示されているそうです。
KK線をめぐっては、2023年5月3日と4日に「銀座スカイウォーク」と題し、東京都がKK線および首都高八重洲線を通行止めしたうえで、KK線を歩行者天国にするという“未来”の姿を先取りする体験イベントを催したばかり。ただ、このKK線緑道化の計画は、首都高の日本橋区間の地下化、老朽化したC1の更新とルート変更、銀座地区の街の再開発、築地市場跡地の開発など、複数のプロジェクトの一部でしかありません。
そのなかで、貨物線跡の道路は今後、その姿を大きく変え、いよいよ鉄道だった記憶が薄れていくと考えられます。もし公園となった後も「銀座に残された唯一の鉄道踏切信号機」が残れば、鉄道の記憶を物語る唯一の“生き証人”になる可能性もあります。