フランスでは現地時間の2023年5月23日、公布された政令に基づき鉄道で2時間30分以内に移動できる路線の国内線の旅客機運航を禁止しました。 この法令では、温室効果ガス排出削減のための取り組みとして行われます。該当の航空路線は今後、鉄道で代用する方針ですが、内容を確認してみると……。

言葉は大げさだが3路線のみ!

 フランスでは現地時間の2023年5月23日、公布された政令に基づき鉄道で2時間30分以内に移動できる路線の国内線の旅客機運航を禁止しました。


パリ=オルリー空港(画像:パブリックドメイン)。

 この法令は、温室効果ガス排出削減のための取り組みとして行われます。該当の航空路線は今後、鉄道で代用する方針です。

 同国では、 温室効果ガス排出量を2030年までに40%削減し、1990年代のレベルに戻すこと目指しており、同国のボーヌ運輸相は「温室効果ガスの排出削減政策で必須の措置、力強い象徴になる」と同法令を評価しました。

 法令の適用にあたり、欧州連合(EU)の欧州委員会は、代替となる高速鉄道が都市間を2時間半以内に結ぶこと、旅行者が目的地で最低8時間過ごせるよう早い時間帯や遅い時間帯に列車が運行されていることを条件として求めました。

 ただこの法令では、パリのシャルル・ド・ゴール国際空港を使う旅行者などは対象に含まれておらす、乗り継ぎ便に関しても除外されています。そのため、パリのオルリー空港とナント、リヨン、ボルドーを結ぶ3路線にしか影響がありません。環境団体の推計によると、この3路線が排出する温室効果ガスはフランス国内を出発する航空便の0.3%程度とのことです。

 当初、「気候変動に関する市民会議」が提案した項目では、鉄道で6時間以内に移動できる旅行で飛行機を禁止するというものでした。しかし、法案が通る段階で2時間半となった経緯があり、一部メディアは、これを“骨抜き”と批判しています。

 それを受けフランス政府は「鉄道サービスが改善されれば、他の航路も禁止する可能性はある」としていますが、実はプライベートジェットに関しても自由に行き来ができます。この対策については、民間航空機の燃料税を2024年から70%引き上げることで対応するようです。

 ちなみに、フランスは脱炭素を目指す時代において「フライトシェイム(飛ぶのは恥)」、いわゆる「飛び恥」運動が盛んな国のひとつです。2022年9月には、強豪サッカークラブのパリ・サンジェルマンが、パリからナントへ移動するために飛行機を使ったことで猛批判を浴びたこともあります。