【レジェンド対談】元阪神・赤星、ドラゴンズ戦での心理戦を明かす 「谷繁攻略」が最優先だった
球界のレジェンドにして2つのギネス世界記録を持つ谷繁元信氏のYouTube「谷繁ベースボールチャンネル」。今回は、元阪神タイガース・赤星憲広氏を迎えて、現役当時のお互いの印象や赤星氏が苦戦した捕手、阪神がナゴヤドームで勝てなかったワケなど、当時の熱い対戦を振り返る。
この記事はYouTube配信「【赤星憲広】塁上で目が合った!?珠玉の名勝負に隠された心理戦!!」から、ライブドア社の自動書き起こしツールによって生成されています。
はじまり
谷繁: こんにちは、谷繁ベースボールチャンネルです。今日はゲストに来てもらっているんですが、現役時代に面白い勝負を何度も何度もした方ですよ。元阪神タイガース・赤星憲広さん。
赤星: よろしくお願いします。
谷繁: お願いします!
谷繁: 仕事でよく一緒になる、最近は。
赤星: そうですね。最近、本当に。
谷繁: ちょこちょこ一緒になったりするんですけど。とは言え、かなり対戦しましたね。
赤星: いやぁ…。
谷繁: ははは(笑)。あれ?何年入団だっけ?
赤星: 僕、2000年のドラフトなんで、2001年から。
谷繁: 2001年ということは… 俺、まだベイスターズ… 最後の年?
赤星: 多分、そうじゃないですかね?
谷繁: だよね。そうそうだ。2002年から俺、ドラゴンズだから。まぁ、ほぼ「ドラゴンズ 対 阪神」。レギュラー獲ったの何年目?
赤星: もう1年目からなんで。
現役当時のお互いの印象
谷繁: もう… なんかね。正直、嫌だったのよ…。
赤星: あははは!(笑)
谷繁: いや。キャッチャーってやっぱり足の速いバッターは俺、いちばん嫌なのよ。1発のあるバッターって別にその場だけじゃん? もう「打たれる・打たれない」ね。「塁に出る・出ない」っていうのは、ほとんど関係ないから。もう、「打たれるか・打たれないか」だから。
足の速いバッターって、本当にフォアボールも嫌でしょ、塁に出られて嫌でしょ、粘られるのも嫌。いろんな意味で嫌なのよ。その中の代表格だったの。
赤星: ふふふ(笑)。いや、でも僕は本当に谷繁さんは多分覚えていらっしゃると思うんですけど、打席の中で谷繁さんっていろいろおっしゃられて…(笑)。
谷繁: いやいや、まぁ…(笑)。
赤星: 心の声が谷繁さん結構出られる方だったので。例えば、僕が今言っていただいたようにファウルで粘ってるとするじゃないですか? 粘り過ぎているとボソッと「前、飛ばしてくれよ…」とか(笑)。
谷繁: まぁ、そんな柔らかく多分、言っていないよ。
赤星: いや。結構あれですよ、柔らかかったですよ。
谷繁: マジで!?
赤星: はい。僕、強く言われたのは、結構何回か走った時に3打席目くらいの時に「もう、頼むから勘弁してくれよ…」っていうそれぐらいはあるんですけど。
だから、僕のイメージとしては、そんなに強く「お前さぁ」みたいな感じで言われたことが無くて。ただ、すごく心の声が出ちゃってるなというのは感じてましたね。
捕手の中で1番走りにくい選手は
谷繁: 本当ね… 嫌なのよ、粘られる方が。だから、前に飛ばさせてアウトにしたい。どちらかと言うと早めに。
だから、逆に難しいんだよね。どの球で早く前に飛ばさすかということが。あれ?通算で何個、盗塁?
赤星: 381です。
谷繁: その中の何個ぐらいかな…。
赤星: 当時、谷繁さんがいて、古田(敦也)さんもおられて、(阿部)慎之介がいて。
結構、良いキャッチャーが揃ってて、僕の記憶が間違ってなければですけど、やっぱり谷繁さん(のとき)が一番数は走れていないと思います。
何でかって言ったら、谷繁さんって自分が走られないようにするためにもあったと思うんですけど、ピッチャーにすごい… ちゃんとさせてたじゃないですか? クイックとか。
だから僕、ドラゴンズ戦がやっぱり正直一番走りにくかったんですよね。
谷繁: 俺、ドラゴンズ行ったばかりの時って、正直、あんまりクイックができるピッチャーが少なかった。それを徐々に徐々にやってもらえるようにしていったの。
本当に「とにかく速いクイックで投げてくれ」というサインもあったし、ノーマークっていうことを俺が大嫌いだから。隙を与えるっていうのだから、それを極力しないように声をかけはしたけどね。
赤星: 当時、マサ(山本 昌)さんがおられたんで…。
谷繁: 走りやすかったでしょ?
赤星: マサさんはすごく…(笑)。
谷繁: あははは!(笑)走りやすかったでしょ?(笑)
赤星: めちゃくちゃ走りやすかったですし、マサさんにも逆にとりあえず「先に走って」と。
谷繁: あっははは!(笑)。
赤星: どうやってもアウトに出来ないし、けん制でアウトなんか出来ないし、僕のモーションじゃアウトに出来ないから、2塁行ってからの方が良いから。「だけど、3盗だけはせんといて」ってよく言われたんですけど(笑)。
谷繁: マジで? まぁあ良かったよ。俺、山本さんと途中からあまり組んでないじゃん?
赤星: あっ、そうですね!
谷繁: 小田(幸平)が組んでたから。
赤星: はいはいはいはい。
谷繁: だから、俺の盗塁阻止率はそんなに下がってない。あははは!(笑)
赤星: あははは!(笑)
谷繁: だから、あれ。俺が組んでいたら山本さんと。俺の阻止率、多分下がってる間違いなく。
赤星: ですよね。だって僕、正直、マサさん先発の時に、何回出塁出来るかっていうのは、盗塁を増やす上でひとつの条件だったので、モーションが大きいので、けん制もそんなにあれだったので、リードを大きく取れたんですよね、マサさんの場合は。
谷繁: でもさ。去年かな?日本ハムに行った時に「基本は、帰る形を取ってリードをとる」って言ってたじゃん? 俺の時は結構、赤星のリードがデカい時あったけどなって思って。
赤星: 僕は基本的にまずリードを大きくとるんですけど、絶対走らなきゃいけない時は多少縮めてたんで。もう、戻ることを0にするために、そのリードだったら確実に戻れるじゃないですか?
でも、出ちゃうとどうしても戻ることを5割ぐらい頭に入れなければいけないので、そうすると逆に良いスタートが切れなくなってしまってたんで、マサさんとかはどっちでも戻れるので。
谷繁: ははは(笑)。
赤星: 出ちゃっても慌てず戻れば戻れるし、行くということも出来るっていうのがあったのでしてましたけど。あと僕は、もう一回言うと、出来るだけキャッチャーのサインも見たかったんですよね。
谷繁: あぁ… そうですね。
赤星: だから、谷繁さんとよく僕、マスク越しに目が合ってて。打席に入った時に「よく目が合うよな」って言われたことがあったんですけど。見えないように僕はヘルメットでこうしてたんですけど。
赤星: パッとちょっと開けた瞬間に、谷繁さんがこう… 見ながら(サインを)出してて、「うわっ、また目が合った」と思いながら。でも、谷繁さんが凄いのが目が合った瞬間にこうやって足を広げるんですよ。「良いよ見て」って…(笑)。
谷繁: あっははは!(笑)
赤星: 普通、逆にあったら隠すじゃないですか? じゃなくて、谷繁さん「良いよ」って。何か「あぁ… これは勝負しなきゃいけないのかな」って思いながら(笑)。
谷繁: あっははは!(笑)そうね。だから、面白かったよ。
赤星の視点 谷繁の配球・仕草などの癖を探る
赤星: 僕はランナーとしてもだったんですけど、谷繁さんがどういう配球されるかって、打席の中でもすごい楽しくて、谷繁さんって結構こうやってミットを叩かれたりするじゃないですか?
谷繁: ふふふ…(笑)。
赤星: あれで結構、意外と球種がたまに分かる時があって。
谷繁: マジで!?
赤星: 多分、ピンチの時が谷繁さん一番分かりやすかったんですよ。
谷繁: 出るよ。うん、うん。
赤星: 普段、僕が例えば先頭バッターとかって言う時は、そんなに分かりづらかったんですけど。例えば、(川上)憲伸さんと組まれてる時とか、憲伸さんの球種が結構いくつかカットボールとか色々ある中で、谷繁さんの叩き方が微妙に違うんですよね。
谷繁: あっははは!(笑)
赤星: 全く叩かない時があるんですよ。普通に多分シンプルに構えるんでしょうね?たぶん。そうすると、緩いカーブとか。憲伸さんのあの遅いカーブ。
谷繁: カーブ、縦割れのね。
赤星: カーブってあまり投げないんですけど。谷繁さん大体叩くんですよミットを。なんですけど、鳴らない時があるんですよ。「あっ、カーブだ」っていう。で、カーブ来るんですよ、本当に。「あっ、これは使えるな!」と思うんですけど、これ100%じゃないですよ。(確信を持って)使えないですよ。だから、ランナーがいると比較的出やすい傾向が。多分、気合が入ってるのか…?
谷繁: そうだろうね。これは、もし俺のチャンネル見てるプロ野球選手がいたら、癖出しちゃダメだよ。
赤星: あっははは!(笑)
谷繁: あっははは!(笑)でも、結局そういうところなんだよ。プロの世界ってね。何かどこかで癖を見つけようとか…。
赤星: そうなんですよ。
谷繁: 傾向を見つけようとか、そういうのを探りながら。まぁ俺ね、あれなんだよね。正直者だから…。あっははは!(笑)
赤星: あ…ははっ(笑)。ドラゴンズがピンチで僕がバッターでチャンスが回ってきた時に「頼む!叩いてくれ強く」って思っている時があったんですよ。インコースの真っすぐが結構多かったんですよ。
谷繁: 強く叩くとね。
赤星: バンっていって、こう内に構えたんだと思うんです。でも、それが真っすぐか、カットボールもあるんで。
谷繁: それさぁ、阪神のほかの選手にも言った?
赤星: してないです。
谷繁: あぁ、良かった…。いや違うのよ。俺や赤星がいた頃って、阪神ってワンチャンスの時、(ドラゴンズが)大量失点を結構食らってるイメージがすごく強くて。そこの大量失点さえ何とか凌げば、勝ちになる確率の方が高かったのね、ドラゴンズ時代。だから「俺の癖がバレてるのかな」と思って…。
赤星: これはもう正直、チームに言うためにはもうちょっと確率が高くないと。逆に、分かればさっき僕も言ったんですけど、真っすぐかカットか両方ある時に、多分ボール球のカットボールを振ってしまう可能性があったので、確率がやっぱせめて80%くらいないとみんなには言えないなっていうので。
谷繁: じゃあ… 大丈夫だよね。そのぐらいだったら。
赤星: そうですね。そういうのを探りながら谷繁さんをどう攻略するか。何か正直、申し訳ないんすけど、ピッチャー攻略するっていうことも勿論してましたけど、「どうやって谷繁さんを攻略するかっていう方が先だな」というのが僕の中であって。
谷繁: 良いじゃないですか。これなんですよ。これが自分が目指していたところだったから、ずっとね。何でかというと、バッターに100%でピッチャーに集中されると絶対に狙っている球が来るわけですよ、ほぼ1打席の中で。
それを分散させるために、やはり意識させなきゃいけないっていう。キャッチャーがね。だから、意識してくれるようになったのよ。100%じゃなくなったのよ。だから、何回も対戦すればするほど、こっちを意識してくれ始めるんだよね、バッターが。
でも、俺が苦手だったのは、対戦の浅い選手なのね。こっちになかなか(意識が)来ないわけ。
赤星: ピッチャーに集中してるわけですよね?
谷繁: そう。行っちゃう時がある。その時は、俺はやりづらかった。
赤星: と言うことは、完全に術中にハマってたってことですか?
谷繁: そう。あははは!(笑)
赤星: あははは!(笑)
谷繁: 本当にあの頃は面白かったよね。阪神とドラゴンズ、常に良い勝負してたし。
赤星: そうですね。
ナゴヤドームで勝てない阪神
谷繁: ナゴヤドームで勝てないんだこれが、阪神が。
赤星: 阪神が…。(笑)
谷繁: あれ、なんで? (笑)
赤星: いや…。でも本当にこれは、谷繁さんがドラゴンズに来られる前から勝ててなかったんですよね、実際。ナゴヤドームで。
谷繁: 今はバンテリンドームだけど。
赤星: 勝てなくて、本当にどうやったら勝てるかというので、ナゴヤドームの最後に道があるじゃないですか? あのバスが来る… あそこの信号で引っかかったら「まず、絶対負ける」ってジンクスがあって…。
谷繁: あっははは!(笑)
赤星: 当時、野村さんがまだ居られた時に、ノムさんが運転手さんに「信号に引っかからないようにしてくれ」って言って。スローで走り出して、信号が青になった瞬間にスピード上げていくとか。
谷繁: とにかくブレーキをかけない。
赤星: はい。あと、行く道を変えたりとか散々したんですけど全然ダメで(笑)。
谷繁: マジで!? 野村さんはゲン担ぎするもんね。
赤星: そうなんですよね。でも結果、あんまりそれを変えたからというわけではなく、全然苦手意識あって。
谷繁: 本当にナゴヤドームに来ると阪神が打てない。
赤星: 何て言うんですかね… バンテリンのあの青い壁がなんかすごい近く感じるというか。だけど、実際は広いんですよ。
谷繁: そうそう。
赤星: マウンドの傾斜も高いので、例えばマサさんとかだったら、より角度を感じるんですよ。
谷繁: あぁ…確かにね。ドラゴンズのピッチャーだけじゃなくて俺らから言わせれば、甲子園でやっている時のピッチャーよりもナゴヤドームで投げている、この同じ人が投げるんだけど良く感じるもん、やっぱり。ホームグラウンドなんだけど。
赤星: 本当にだからどうやってナゴヤドームでやるかというのが、僕らの何か優勝するための一つの条件だったというか。
谷繁: なったよね。
赤星: はい。それはありましたね。
ノーヒットノーラン、最後のバッターとして打席に立った赤星の心境
谷繁: あのさ、山本さんのノーヒットノーラン。あれ、(赤星が)最後のバッターでしょ?
赤星: 最後のバッターです。
谷繁: あれ、俺の心境を言っていい?
赤星: はい。
谷繁: とにかくどうやって前に飛ばそうとか。あれ、シンカーなんだよね? 最後、シンカーなんですよ。
とにかくストライクゾーンの中に。もう、あの流れだから、俺はヒットになるっていう感覚はなかったの、赤星でもね。
谷繁: だから、前に飛ばさせれば、とにかくゴロアウト取れると思って、シンカーを最後に選んでいったのよ。そしたら、案の定サードゴロを打ってくれた…!(笑)
赤星: あっははは!(笑)
谷繁: ははは(笑)。
赤星: そうです。あれは本当に僕の第2打席、三遊間のゴロを森野(将彦)が弾いて結果、記録がエラーになったんですよ。
だから最初、僕で始まり僕で終わってしまうという。本当だったらまわってこないはずだったのが、あのエラーだけなんで。あれ捕っても多分、内野安打だったと思うんですよ…。
谷繁: あっははは!(笑)タイミング的にはね。
赤星: タイミング的には、だから…。
谷繁: 良い勝負だったよね。
赤星: 良い勝負だったと思うんですよ。だから、あれが「どうだったのかな?」というのはあったんですけど。
でも結果、あれがエラーになったがために最後のバッターになってしまったので、なんか1人で4つアウトになっているっていうのが、何か…4つアウトと言うか、何か…。
谷繁: ははは(笑)。得意の山本さんから…。あっははは!(笑)あの頃は、まだ俺が被ってたから。
赤星: 最初のほうですかね?
谷繁: そうそう。
赤星: いや…。でも、あれはちょっとショックでしたね。本当に…。
谷繁: 面白いよね…。
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