西武・山川穂高【写真:矢口亨】

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山川は31試合中15試合出場で打率.250、0本塁打、4打点

■ロッテ 6ー2 西武(9日・ベルーナドーム)

 昨季に本塁打王と打点王の2冠に輝き、3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でも世界一に貢献した西武・山川穂高内野手が、今季いまだノーアーチ。昨季を含めて過去に3度、40発以上を量産してタイトルを獲得した実績を背景に「1本出ればガラリと変わる」と語る男の本音とは――。

 スタンドから大歓声が沸き上がった。9日に本拠地・ベルーナドームで行われたロッテ戦。4点ビハインドの7回1死一塁の場面で第3打席に入った山川は、好投を続けていたロッテ先発・種市篤暉投手のフォークが外角高めに浮いたところを一閃。打球はバックスクリーン右の中堅席へ向かって舞い上がったが、フェンス一歩手前で藤原恭大外野手のグラブに収まった。

「ちょっと詰まっていました。正直言って『行ってくれ、頼む』と思いながら走っていましたが、アウトになってみれば、そりゃ行かないよなという感じです。あの詰まり方、手に残る感触で、ホームランになったことはないですから」

 この日は3打数ノーヒット。今季開幕直後に右足のふくらはぎを痛め、4月10日から22日間出場選手登録を抹消されていたことから、チーム31試合中15試合の出場にとどまっている。今季ここまで打率.250(52打数13安打)、0本塁打、4打点。「早めにホームランが1本欲しいという気持ちは、試合を重ねるごとに強まっています。過去にホームランが出ない時期は何度もありましたが、それが今年のようにシーズンの最初に来ることはあまりなかった。どんな年になるのか予測がつかない」と穏やかでない心境を明かす。

「毎年1発目のホームランは常にまぐれ。現時点で打てる気はしません」

 日頃から「何年やっても、毎年1発目のホームランは、常にまぐれです」と語っている。「何十発と打てるシーズンでも、5、6試合出なければ、ホームランの打ち方は忘れます。ですから、現時点でホームランを打てる気はしません。しかし、これまでの経験上、1本出た瞬間に、打てる気しかしない状態になることが多々ありました」と説明する。

「本塁打と打点のタイトルは、誰にも譲りたくない」と言い切って臨んだシーズンでもある。本塁打では同学年のオリックス・杉本裕太郎外野手が、すでに8本を積み上げトップだが、こちらも左ふくらはぎを痛め、今月4日から登録を抹消されている状況だ。

 山川は「まず、僕が1発目を打たないと始まらない。このままシーズンが終わるまでホームランを打てないかもしれないと、本当に思います」とした上で、「ラオウ(杉本)は、いま離脱していますし、過去の最多本塁打数は32本ですから、まだチャンスはあるのかなとも思います。1本出たらガラッと変わることがある。正直言って厳しいけれど、下を向かずにやっていきます」と力を込める。ソフトバンクの栗原陵矢外野手が21でトップの打点についても、「これもホームランを打ちまくれば、ひっくり返せる可能性はある」と自らを鼓舞した。

「もう(実戦の投球に)目は慣れましたし、ヒットは出ているので、打撃の調子はめちゃくちゃ悪いわけではない」と自己分析。試合の前後には相変わらず人一倍の練習を行いつつ、“1発目の感触”が戻ってくるのを、祈るような気持ちで待ち望んでいる。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)