「羽田アクセス線」の本命? 新宿方面に直結「西山手ルート」実現が難しい”決定的な理由”とは
JR東日本が「羽田空港アクセス線」の工事に本格着手することを発表しました。今回整備されるのは「東山手ルート」となりますが、新宿方面の「西山手ルート」と「臨海部ルート」はいつできるのでしょうか。
「東山手ルート」は、2031年度に開業予定
JR東日本は、2023年4月4日(火)、新橋駅から分岐して羽田空港へむすぶ新路線「羽田空港アクセス線」の工事に本格着手することを発表しました。
開通すれば東京駅から空港へダイレクトアクセスとなるほか、宇都宮線・高崎線・常磐線方面から羽田空港への直通運転が実現。片道1時間あたり4本、1日あたり72本の運行が計画されています。開業予定は2031年です。
いっぽうで、今回整備されるルートは、「羽田空港アクセス線」計画の一部にすぎません。着手となる「東山手ルート」のほかに、新宿方面への「西山手ルート」と、千葉方面への「臨海部ルート」の計画があるのです。
「西山手ルート」への直通が想定される埼京線(画像:写真AC)。
まず、工事着手となった「東山手ルート」ですが、羽田空港から海底トンネルで品川区八潮の東京貨物ターミナル駅に到達。首都高湾岸線の大井PAの東側に隣接し、東海道新幹線の車両基地も併設されています。そこからは既存の貨物線の設備を活用し、田町駅へ接続するものです。
「西山手ルート」と「臨海部ルート」どこでどうつながるのか
さて構想段階の「西山手ルート」は、その東京貨物ターミナル駅からりんかい線大井町駅方面への短絡線を設け、そこから埼京線や湘南新宿ラインが使用している山手貨物線を経由して渋谷・新宿・池袋方面に直通するものです。
現在、山手線西側や埼玉県西部、多摩地域などから羽田空港への鉄道直結アクセスは皆無で、数社間にわたって数回の乗り換えが必要となり、負担となっています。代わりに直結アクセスを提供しているのが空港リムジンバスで、各エリアから多数の路線と本数が運行されている状況。とはいえ、定時性を考えるとやはり鉄道に分があり、このルートの整備を求める声も多く上がっています。
「臨海部ルート」は、東京貨物ターミナル駅付近のりんかい線八潮車両基地(東臨運輸区)への回送線を活用する見通しで、りんかい線を通じて京葉線へ直通し、千葉方面への直結を視野に入れています。
千葉県民にとって、羽田空港への鉄道アクセスは、京成〜都営浅草線〜京急の直通こそあるものの、沿線住民以外はやはり数回の乗り換えが必要となってきます。逆に強いのがやはりリムジンバスで、特に南東部方面からは東京湾アクアラインで空港へほぼ最短距離で直結できる強みがあります。臨海部ルートは、そのパワーバランスに変化をもたらすかもしれません。
「西山手ルート」と「臨海部ルート」の今後の見通しについて、JR東日本広報部は「どちらのルートも、りんかい線を経由することになるため、国や東京都など関係者と協議を進めていく必要があります。現時点では事業スキームやスケジュールは未定です」と話します。
この「りんかい線経由問題」というのは、大宮方面や千葉方面から羽田空港へ向かうとき、「JR〜りんかい線〜JR」「JRのみ利用」の2パターンが生まれることです。安くなる後者の運賃を支払いながら実際にりんかい線を経由しても、途中で改札機を通らないので区別する方法がありません。りんかい線にとっては丸々損というわけです。
新木場駅でりんかい線が京葉線へ直通せず、必ず改札を通した乗り換えが必須となっているのも、同様の事情があるとされています。羽田〜新宿・千葉の新ルートも、まずはこの”頭の痛い問題”の打開策を考える必要があるでしょう。