陸自最大サイズの巨砲「203mm自走りゅう弾砲」まもなく退役 進む“火砲リストラ” 最後の部隊は
約40年にわたって運用されてきた陸上自衛隊の203mm自走りゅう弾砲。最盛期は北海道から東北、首都圏、九州の各地で見られた装備ですが、もうすぐ姿を消す予定です。最後まで運用している部隊はどこなのでしょうか。
2024年3月に退役予定 アメリカ生まれのキャタピラ自走砲
陸上自衛隊における「203mm自走りゅう弾砲」の運用数が残り10両強となりました。しかも、これらも防衛省の計画では2023年度末、すなわち2024年3月に退役する予定です。
陸上自衛隊の203mm自走りゅう弾砲(柘植優介撮影)。
現在、陸自の自走りゅう弾砲は203mm自走りゅう弾砲のほかに、「99式自走155mmりゅう弾砲」、そして最新となる「19式装輪自走155mmりゅう弾砲」の3種類あります。このなかで最も古く、かつ最も威力の高い大砲を積むのが203mm自走りゅう弾砲です。同車は、もともとアメリカで開発された車両で、陸上自衛隊では1984年から部隊配備を開始しています。
車体サイズは全長10.7m、全幅3.15m、全高3.14m(積載状態)、装軌(キャタピラ)式の足回りを持ち、搭載するゼネラルモーターズ製水冷2サイクル8気筒ターボ・ディーゼルによって最大速度54km/hを発揮します。
同車が採用される前、陸上自衛隊では牽引式(非自走)の203mmりゅう弾砲や155mm加農(カノン)砲を運用していましたが、これらはアメリカで第2次世界大戦中に量産され、戦後、自衛隊が発足するにあたって中古兵器としてアメリカから供与されたものでした。
陸自発足から30年近くが経ち、陳腐化が進んだことなどで更新用として導入されたのが、現在の203mm自走りゅう弾砲です。
最後まで運用するのは道央の部隊
203mm自走りゅう弾砲は、トータルで91両が生産され、一時は北海道を中心に、東北、首都圏、九州でその姿を見ることができました。
しかし、やはり導入から30年ほど経過し老朽化と陳腐化が進行したことなどから、2007年以降退役するようになります。加えて2013年に政府が策定した防衛計画の大綱で火砲の保有数が、牽引砲と自走砲合わせて300門/両に制限されたことから、削減の対象にもなり急速に数を減らしていきました。
その結果、冒頭に記したとおり、いまや203mm自走りゅう弾砲は10両強にまで減少しています。
かつて陸上自衛隊が装備していた牽引式の203mmりゅう弾砲(柘植優介撮影)。
実動部隊として運用しているのは、北海道の上富良野駐屯地に所在する第4特科群第104特科大隊のみ。この部隊が、2023年度末で廃止される予定のため、それをもって203mm自走りゅう弾砲は陸上自衛隊から姿を消し、約70年にわたって連綿と装備されてきた203mm(8インチ)という砲弾の規格も消滅することになります。
陸上自衛隊で退役目前の装備というと、74式戦車がよく話題に上がりますが、実はそれよりもレアになってしまった車両が203mm自走りゅう弾砲だといえるでしょう。
なお、来る6月4日(日)には上富良野駐屯地の創立68周年記念行事が予定されています。一般開放で開催できるよう準備を進めているとのことで、もしかしたら203mm自走りゅう弾砲の最後の勇姿が見られるかもしれません。