日本全国でJR各社は様々な快速列車を運行しています。ホームライナーのように特急用車両を使った快速もありますが、今回は特急形を除いた車両の中から、“座席鉄”の筆者が独断で「快適な快速ベスト5」を選びます。

身近だけどよいものはよいのだ

 全国各地を走るJRの快速列車。利用していて快適だと感じる列車には何が挙げられるでしょうか。“座席鉄”の視点でベスト5を、筆者(安藤昌季:乗りものライター)の乗車体験を交え紹介します。


首都圏エリアを走る近郊列車には、2階建てグリーン車が備わる(安藤昌季撮影)。

JR東日本 首都圏2階建てグリーン車

 まずは首都圏エリアを走る2階建てグリーン車です。普通列車としても運行されますが、今回は快速列車に含めることとします。座席を見ると、シートピッチ970mmの回転式リクライニングシート。2階席は眺望がよく、階下席は揺れが少ない利点があります。

 なお、筆者のオススメは平屋部分です。窓の上に荷物棚があり、かつ狭いので個室感があります。特に座席が2列しかない部分は、8人グループなら完全に個室となります。座席指定があるわけではないので、専有できるとは限りませんが。

 また東海道線や横須賀線、総武線快速、常磐線などのグリーン車では、アテンダントが軽食や飲料を販売しています(一部営業しない場合あり)。特急や新幹線でも車内販売が減少する中、特筆すべきサービスだと思います。強いていえば有料座席ですから、今後は各座席へのコンセント、フリーWi-Fi、枕の設置をお願いしたいところです。

JR四国 「マリンライナー」グリーン車

 続いてJR四国から、岡山〜高松間を結ぶ快速「マリンライナー」のグリーン車です。先頭のみ2階建て車両ですが、うち2階席とパノラマシートがグリーン車、階下席は普通車指定席と差がつけられています。首都圏と異なり、インターネット予約サービス「e5489」や「みどりの窓口」で座席を指定できます。

 パノラマシートは運転席後ろに1列だけあり、高松行きでは瀬戸大橋を含む前面展望を楽しめます(岡山行きでは後方展望)。1列だけなので、テーブルは肘掛けに収納されています。枕部分も柔らかく、快適な座席です。座席裏にブランケットもあります。

 2階席はシートピッチ1000mmと、階下の普通車指定席や首都圏2階建てグリーン車の970mmより広いのですが、車体は首都圏2階建てグリーン車を基にしているため、一部の座席が窓の配置と合っていないのが残念です。

 普通車指定席のシートピッチは970mm。リクライニング角度が小さく、テーブルが備わりませんが、座席と窓の配置は一致しています。

JR東日本「SLばんえつ物語」展望グリーン車

 新津〜会津若松間のSL列車です。4時間かけて走るので、快適設備であるグリーン車の価値は高く、人気があります。


JR東日本「SLばんえつ物語」のグリーン車(安藤昌季撮影)。

 ガラス張りの展望ラウンジがフリースペースとして備わるなど、設備は非常に充実しています。ちなみに新津行きでは、機関車が目の前に付き迫力ある走行場面が、会津若松行きでは遮るものなしの後方展望が楽しめます。

 座席は1+2列配置の回転式リクライニングシート。横幅も十分で、肘掛けにインアームテーブルが備わります。インテリアは素晴らしいのですが、リクライニングしても座面が平たく、またフットレストやレッグレストが備わらないので、姿勢が安定しません。シートピッチは1100〜1200mm程度あるので設置できそうですが、普通列車用としてサービスレベルを下げたのでしょうか。リニューアルする機会があれば、枕、コンセント、レッグレストの設置をお願いしたいところです。

 なお、2023年夏頃まで牽引機のC57 180が車両の定期検査・整備中のため、今年の運行は決まり次第発表されます。

JR西日本「SLやまぐち」展望グリーン車

 続いてJR西日本のSL列車「SLやまぐち」の展望グリーン車を挙げます。列車は新山口〜津和野間を走り、車両はかつての特急用一等展望車マイテ49形を模したデザイン。内部も似せて造られており、外側から順にオープンデッキ、展望室、開放客室、グループ向けボックスシートの構成です。

 オープンデッキは「SLばんえつ物語」と異なり、ガラス張りではなくベランダです。雨の日は大変ですが、晴天であればとてつもない解放感が味わえます。ただ、津和野行きでしか立ち入ることができません。なお、2023年3月現在はディーゼル機関車牽引による「DLやまぐち」として運行されていますが、客車はSLと同じです。

硬い座席でもグリーン車 そのワケは

 展望室はソファの並んだフリースペースです。指定席ではありませんが、座り心地は堅め。マイテ49形の展望室はふかふかのソファなので、この辺りは“オリジナルの再現”にこだわってほしかったように思います。

 開放客室は1+2列の回転式リクライニングシート。ちなみにマイテ49形は1+1列の回転式クロスシートです。側窓はレトロ調で小さいですが、雰囲気があります。テーブルは肘掛けに収納されています。シートピッチは1470mmと非常に広く開放感がありますが、「SLばんえつ物語」グリーン車と同様、リクライニングしても座面が水平で、レッグレストやフットレストがないので体が滑ります。


JR西日本「SLやまぐち」のグリーン車。座席は硬め(安藤昌季撮影)。

 ボックスシートはかなり堅めで、“グリーン車の座席感”はありません。ただ、この部分はオリジナルのマイテ49形のボックスシートとほぼ同じ座り心地であり、戦前の一等展望車を味わえる座席でもあります。

JR東日本「リゾートしらかみ」

 最後に紹介するのはJR五能線の観光列車「リゾートしらかみ」です。シートピッチは1200mm、回転式リクライニングシートが並ぶ普通車指定席は座り心地もよく、側窓も巨大でとても快適な空間です。

 特筆すべきは2号車「ボックス席」です。かつての開放形寝台車のような半個室で向かい合わせの座席ですが、「橅」編成の場合、1・2・8・9番の区画は、座席背面を展開してフルフラットにできます。五能線の絶景を堪能しつつ、ごろごろと寝そべることができる――日本国内の快速列車で最高の設備だと筆者は思います。