日本海の上空を約7時間にわたり飛行した、核兵器を搭載できる戦略爆撃機の「Tu-95」。この機は「世界最速のプロペラ機」として知られています。

実は半世紀以上使用されている「世界最速のプロペラ機」

 ロシア国防省は2023年3月21日、ツポレフ製戦略爆撃機の「Tu-95 MS」2機が日本海の上空を約7時間にわたり飛行したと発表しました。同省は、定期的なフライトであり国際的な基準にのっとって実施されたとしていますが、この機が核兵器を搭載できるということもあり、国内では議論を呼んでいます。
 
この「Tu-95シリーズ」、核兵器を搭載できるだけでなく、実は「世界最速のプロペラ機」とも呼ばれるほどのスペックを持った機体です。


Tu-95MSM改良型(画像:UAC Russia)

 Tu-95シリーズの初期タイプの初飛行は旧ソ連時代の1952年で、すでに運用開始から60年以上経ちます。

 同機は、旧ソ連・アメリカの冷戦下、もし2国が軍事衝突したケースで米国上空へノンストップで飛び核爆弾を落とすという計画のため、開発されました。

 そのため、Tu-95はロシアからアメリカまでノンストップでいける航続距離の長さも設計時の要件として求められたれたことから、膨大な燃料を搭載でき、結果として航続距離は1万2000kmを超えることになりました。

「世界最速のプロペラ機」、速さのヒミツは?

 そして、Tu-95の最大の特長である巡航速度は、現代のジェット旅客機なみの約950km/hを記録。エンジン1基の同軸上にプロペラを二枚重ね、それぞれを左右逆方向に回転させることで効率向上を図る「二重反転プロペラ」が特徴です。また、あえてプロペラの回転速度を抑えることで空気抵抗を減らすなどの工夫を加え、巡航速度の向上を図っています。

 なお、このエンジンを搭載したことから、そのルックスも、ひと目でわかる異様なものとなっているほか、エンジンの騒音も大きく、独特のものであるとされています。

 そのような長い歴史をもつTu-95ですが、2020年には最新改良型である「Tu-95MSM」の初飛行が行われるなど、まだまだ運用継続となる見込みです。また軍用機として開発されながら、航続距離や巡航速度が優れていたことから、旅客機タイプの「Tu-114」も開発されるなど、多数の派生型が生み出されています。なお、Tu-114はかつてアエロフロートが導入し、JALの東京〜モスクワ線では、アエロフロート機のTu-114で、JAL(日本航空)と共同運航をするスタイルから歴史が始まっています。

【映像】なんて音…!? 「世界最速のプロペラ機」の爆音飛行シーン(約1分)