「緊急着陸」鬼気迫る“機内”を体験 「非常ドア開けて!」その役を担う人とは? SJO訓練施設
旅客機で万が一、不時着時などが発生した場合、機内はどのような様子なのでしょうか。JALグループのLCC、スプリング・ジャパン協力のもと、そのときの様子を訓練施設で体験。その雰囲気は普段と全く異なるものでした。
737の非常口ドアは「上に開く」?
旅客機が不時着時などのトラブルに見舞われた場合、その機内や当該便に乗務するCA(客室乗務員)の様子は、平時とは一変します。今回、緊急時の対応を、JAL(日本航空)グループで中国への国際線などをおもに担当するLCC(格安航空会社)、スプリング・ジャパン協力のもと体験。そして普段の準備の様子なども聞くことができました。
スプリング・ジャパンの訓練施設(乗りものニュース編集部撮影)。
スプリング・ジャパンの訓練施設は、成田空港の至近にある航空科学博物館あり、ここには、同社機の「原寸大模型(モックアップ)」が置かれています。このモックアップは、同社で使用されている旅客機「ボーイング737」の実機(他社で使用されていたもの)を加工したもの。機内もホンモノさながらです。
このモックアップは一般人の見学も可能となっていますが、日によっては、正真正銘の「訓練施設」として用いられ、ここでCAをはじめとする乗員たちは、緊急時の対応や機内サービスといった各種技能を習得しています。
たとえば機内の火災時に使用する消火剤。スプリング・ジャパン機では2種類のものを搭載しており、これを出火原因などによって使い分けているそうです。ちなみに、スプリング・ジャパン機は737の1タイプのみで運航されているものの、機体によって消火剤の設置位置が異なるそうで、そういったことも乗務の前に打ち合わせるといいます。
そして、このモックアップでは、737実機の中央部にある、小さな非常ドアが2つ並ぶゾーンが使用されています。通常運航時の実機では、これらのドアが開くことはありませんが、このモックアップでは、実際に開けることが可能です。なお、737の中央部の非常ドアは腕に引っ掛けて上に開くような形となっており、横開きタイプの乗降口とは異なる機構が採用されています。
この施設内で、スプリング・ジャパン協力のもと、不時着してから脱出までの対応を、乗客の目線から体験させてもらいました。
「命令口調」飛び交う機内…「中国特化型LCC」ならではの工夫も?
脱出の合図は、パイロットによる機内アナウンスです。数回「エバキュエーション(evacuation。退避せよの意味)」のアナウンスが機内で流れます。それと同時に、CAが非常口座席をチェック。その直後に旅客に指示をします。
「あなた!開けて!」――緊急時を想定していることもあり、普段私達が接する「丁寧な接客態度」とはうって変わって強い命令口調が発せられます。その指示を受け非常口座席に座る乗客は、自らの手でそのドアを開けます。
非常口座席は足元が広いなどの理由から「勝ち席」とされていますが、緊急時にこの座席に座る乗客には、こうした作業のほかにも、さまざまな面で、CAの保安業務の援助をすることが求められます。同社のCAは「普段のフライトのときも、いつ・何が起きても対処できるよう、『援助者になっていただけるお客様』を探したうえで、万が一の際のイメージをしながら乗務に当たっています」と話します。
スプリング・ジャパン機(乗りものニュース編集部撮影)。
スプリング・ジャパンでは、中国路線特化型の日系LCCとしての工夫も見られます。「『シャウティング』と呼ばれる緊急脱出時などのお客様へのお声がけについては、日本語、英語に加えて、中国語での対応ができるようにしています」(スプリング・ジャパンの乗員訓練担当者)。
また同社のCAは「スプリング・ジャパンは乗員間の仲がよく、『なにか気づいたらすぐに言える』コミュニケーションの取りやすさがあります。こうした小さなことから安全な運航をキープすることができるのかなと考えています」と、現場目線での強みについて話します。