国の許可が必要な屋外スペースにおいて日本初となる「空飛ぶクルマ」の有人実証飛行が大阪市で行われました。そもそも空飛ぶクルマの定義とはどういったものなのでしょうか。ヘリや飛行機とは明確に異なるものが想定されているそうです。

実は現状 明確な定義はまだない!!

 2023年3月14日、大阪市の大阪城公園内野球場にて、国の許可が必要な屋外スペースにおいては日本初となる「空飛ぶクルマ」の有人実証飛行が行われました。2025年の大阪・関西万博で商用運用を目指したものですが、そもそも空飛ぶクルマの定義とはどういったものなのでしょうか。


空飛ぶクルマのイメージ(画像:SkyDrive)。

 国土交通省によると、「電動」「自動(操縦)」「垂直離着陸」でひとつのカテゴリーとするイメージだそうですが、国としては現状、明確な定義はないとのことです。

 空飛ぶクルマの見た目の特徴としては、複数のプロペラが回転して飛ぶ「マルチコプター」と呼ばれる機体で、遠隔操作により無人で飛ばすドローンに採用されているような構造の機種が多いですが、固定翼機でも、上記のような条件に当てはまれば空飛ぶクルマと呼べます。

 一方、ヘリコプターなどの回転翼機との大きな違いは、空飛ぶクルマには離着陸に必要なヘリポートや滑走路など大型の施設が必要ない点です。小規模な離着陸スペースを確保しての飛行が想定されており、都市部での送迎サービスや、離島・山間部での移動手段、災害時の救急輸送などの活用が期待されているそうです。

 これらの機体は電動で垂直離着陸をすることから「eVTOL」と呼ぶこともあるようです。なお、ホンダが開発を進めている、「Honda eVTOL」のように発電にジェットエンジン用いるものも「eVTOL」と呼びます。

それでも「飛行機」じゃなくて「クルマ」なんです

 また、大阪城公園内野球場で空飛ぶクルマの有人飛行を行ったSkyDriveによると、空飛ぶクルマのヘリコプターとは違うメリットとしては、部品点数が少ないため、「整備費用が安価」、電動のため「騒音が小さい」などの特徴が挙げられるそうです。


飛行しての輸送実験の様子(画像:SkyDrive)。

 しかし、実用化としての課題もまだ多く、機体のバッテリーの性能の向上や、国交省の定める安全基準を満たすことができるかがネックになっているそうです。

 まだ免許などの制度もできておらず、「空の移動革命に向けた官民協議会」で協議中ですが国土交通省の検討状況などを確認すると、ヘリコプターなどの回転翼機のように500時間以上の訓練を求めることが適切かについては検討する必要があるとしています。“クルマ”というだけにもっと手軽にしたいという目標はあるようです。

 開発側も、“飛行機”ではなく、“クルマ”という手軽さを重視しているようで、三菱総合研究所の「空飛ぶクルマの実現に向けた制度整備等に関する調査」の報告によると、飛行エリアは現在航空法が定める「最低安全高度」である150m未満の空域での飛行に対応することが課題としています。

 もし、航空法が改正され、150m未満の空域での操縦が許可されるようになれば、道路交通法や航空法の制約を受けないため、空飛ぶクルマの独自ルールに作りに役立つ可能性があります。

 なお、俳優の福原 遥さんが主人公・舞を演じる2022年度後期のNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』でも、3月20日放送回で空飛ぶクルマが登場し、物語最終盤で、舞が空への憧れを再認識するきっかけとして描かれます。今まで創作物では未来の技術として登場していたものが、近い将来の実現可能な技術として描かれるのは、ある意味画期的なことかもしれません。