キューバに勝利し、決勝進出を決めた米国ナイン【写真:Getty Images】

写真拡大

米国はキューバを下し連覇に王手

 野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表は20日(日本時間21日)、米マイアミのローンデポ・パークで準決勝メキシコ戦に臨む。連覇した09年以来の決勝進出となれば、前回王者・米国との頂上決戦となる。米国は19日(同20日)のキューバ戦を14-2で圧勝。“恐怖の9番”トレイ・ターナー内野手(フィリーズ)の2本塁打などで強敵を下した。現地で取材する記者は、侍ジャパンを決勝で待ち受ける米国の脅威をスタンドにも感じた。(取材・文:THE ANSWER編集部・宮内 宏哉)

 ◇ ◇ ◇

 米国―キューバ戦には3万5000人を超える観客が集結。キューバ側の大歓声も凄かったが、米ファンの熱気はそれを上回っていた。観客がグラウンドに乱入する珍事が3度。キューバ側の観客だったようで物々しい雰囲気となったが、それをいずれも球場係員が確保。これに「USA!USA!」の大コールが発生した。

 序盤から得点を重ねる展開に、米ファンもお祭り騒ぎ。ローンデポ・パーク3階のドリンク販売店の店員と思われる男性は、店の壁を壊れんばかりに「ドン!ドン!ドン!」と叩き殴っていた。「U!S!A!」と同じリズムで、これをきっかけに客席で大コールが起きることもあった。

 比較的静かなメディアルームにも、1人の女性の叫び声が響いた。初回にゴールドシュミットが逆転2ランを放った時。声の主は米国を応援する係員だった。「米国内でWBCはさほど盛り上がっていない」との声も特に開幕前はあったが、この球場内に限ればそんな話は嘘なのではないかと思わされるほどの熱気だった。

警戒すべき強力打線 「恐怖の9番」は4本塁打

 米国ホームの雰囲気は侍ジャパンの脅威となるが、それ以上に怖いのが今最もノっている“恐怖の9番”ターナーだ。2021年にはMLBで打率.338をマークして首位打者に。2度の盗塁王も獲得しており、このオフに11年総額3億ドル(約410億2300万円)の大型契約でフィリーズに移籍している。

 キューバ戦では相手の戦意をへし折る2本塁打。さらに18日(同19日)の準々決勝ベネズエラ戦では、2点ビハインドで敗戦ムードも漂った8回に起死回生の逆転満塁弾。1大会4本塁打は米国代表としては最多で、2006年大会で5本塁打を放ったイ・スンヨプ(韓国)にあと1と迫っている。10打点も、日本の吉田正尚とならび今大会トップだ。

 米国のマイク・デローサ監督も会見で「彼は3億ドル選手だから」と冗談交じりに称賛する活躍ぶり。上位打線にはトラウト、ゴールドシュミットら超大物が座り、このターナーを下位で起用できるほど米国の打線は層が厚い。

 侍ジャパンが今日の準決勝に勝利すれば、優勝をかけての日米決戦となる。アロサレーナら好選手が揃うメキシコも手を抜いて勝てる相手ではなく、敵地の雰囲気も相まって厳しい連戦となりそうだ。

(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)