「THE ANSWER」の単独インタビューに応じたWBC日本代表のヤクルト・山田哲人【写真:荒川祐史】

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単独インタビューで語ったWBCへの思い

 3月に開幕する野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表に選ばれているヤクルト・山田哲人内野手が「THE ANSWER」の単独インタビューに応じた。前回2017年大会にも出場。キューバ戦で2本塁打を放つなど活躍したが「逃げたくなる程」の重圧と戦っていたことを告白。それでも「期待に応えたい、世界一になりたいという気持ちの方が圧倒的に強い」と、日の丸を背負う戦いへの思いを語った。(取材・文=THE ANSWER編集部・宮内 宏哉)

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「僕は多分、今回も周りは見られないと思います。(侍ジャパンに)何年も呼ばれているから余裕はあるだろうと言われますが、余裕はないと思う。自分がやるべきことをしっかりやりたい」

 五輪、WBC、プレミア12の全てで本塁打を放っている唯一の日本人選手。経験豊富な山田は度々“国際大会に強い”と評されるが、本人にそんな気持ちは微塵もない。

 06年福留の代打本塁打、09年イチローの決勝打などの名場面に、アマチュア時代は国民の一人として魅了された。実際に「JAPAN」のユニホームでグラウンドに立って感じたのは、想像を絶する重圧だった。優勝した米国に準決勝で敗れた前回大会、山田は第2Rキューバ戦で2本塁打を放つなど活躍したが、残っている記憶は薄い。

「アメリカに負けた悔しい気持ちは覚えていますが、自分のプレーはあまり覚えていません。自分のことで精いっぱいだったので、周りを見る余裕もなくあっという間に終わった感じでした」

 あれから6年ぶりに開催される大舞台。年始に侍ジャパンの栗山英樹監督から「どうしても必要だ」と出場要請の電話を受け、奮い立った。「たくさんの人が注目しますし、正直逃げたくなる程。それくらいの気持ちになってしまいそうですが、それより期待に応えたい、世界一になりたいという気持ちの方が圧倒的に強い」。あの足がすくむような重圧と、また戦う決意を固めた。

 今大会、山田には心強い相棒がそばにいる。武器の一つである「足」を支えるスパイクだ。

 アディダス社製の「adizero Afterburner 8 TD(アディゼロ アフターバーナー 8 TD)」。侍ジャパン仕様でつま先部分には日の丸がデザインされている。「エナメル質で光沢ある紺色がカッコいい」とデザインもお気に入りだが、なにより最も重視するフィット感が抜群だという。

「履くとズレることもなく、自分の足の一部のような感覚になる。それが一番ですね。自分の理想というか、想像以上に良くて重さも軽いです」

打撃フォーム模索中「これだ」 手応え掴んだ意外な経緯とは

 打率3割、30本塁打、30盗塁のトリプルスリーをNPB史上最多の3度も達成。WBCでの打棒にも期待がかかる中、春季キャンプは新しい打撃フォームに着手していた。しかし、第2クールを迎えたところで「新フォームは終わりました」とまさかの宣言。綿密に決めた方向性、練習量を忠実にこなす中で、何が起きたのか。

 新しいフォームでバットを振り込む中、「惜しい」「間違ってはいないけれど、あと一歩」の感覚がずっと残り続けた。キャンプが4〜5日経過した頃、一旦リセットし、右腰、股関節回りといった身体の中心部分を捻る意識でスイング。するとこれまで以上に間が取れ、しっくりくる感覚があった。

「これだ」。思わぬ結果だが、新フォーム挑戦の日々は無駄ではない。量をこなして模索したことで、求める答えに「繋がった」と納得できている。

「今までそこを意識したことがなかった。若い頃は意識せずにできていた部分があったと思うので、意識しながらやるのは難しいことですが、続けることで身になると思う。残り期間は少ないけれど、みっちり練習して、時間も費やして自分のものにできれば」

 WBCの後にはNPBが開幕。ヤクルトは今季、リーグ3連覇と日本一奪還を目指すシーズンになる。山田は主将として臨んだ昨年、打率.243、23本塁打、65打点と悔しい結果に。個人としても忸怩たる思いがある。

「チームとして3連覇、日本一奪還は目標。貢献できるようにというのと、去年は自分自身の成績があまりよくなく、どちらかというとみんなの足を引っ張る形が多かった。今年は自分がしっかり引っ張っていけるような成績を残したい」

 理想とする1年を過ごすためにも、まずは3大会ぶり3度目の世界一を目指す船に乗り込む。掴んだ打棒と新たなスパイクを携えて。

(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)