プロポーズもして、あとは婚姻届を提出するだけだったのに…。婚約中の彼女が突如とった、不可解な言動
東京では今日も、男女の間にあらゆるトラブルが発生している。なかには解決が難しい、不可解な事件も…。
そんな事件を鮮やかに解決してSNSを賑わせている、ある1人の男がいた―。
彼の名は光城タツヤ。職業は、探偵。
今日彼のもとにやってきたのは、婚約者の過去が気になるという男性だ。
あなたも、この事件の謎を一緒に考えてくれないだろうか…？
▶前回：飲み会の最中、上司のスマホを勝手にチェックし始める女。そのとき画面に映し出されたモノは…
光城タツヤの正体を知る者は…
「ねぇ、あの人じゃない？例のタツヤさん」
金曜の19時。3件のアポを終えオフィス1階のカフェでコーヒーを飲んでいると、僕の噂話をしている声が聞こえてきた。
振り返ると、20代半ばくらいの女子社員が僕とスマホを交互に見ている。
― 何かイヤな感じだなあ。
そして僕と目が合った瞬間、彼女たちは気まずそうに視線をそらしてカフェを出ていったのだった。
◆
「バレンタイン前だからじゃないですか？竜也先輩、モテモテでいいですね♡」
オフィスに戻ると、田原が僕を茶化してくる。
「なんで俺の名前、知ってるんだろう。見覚えない顔だったし」
「…自慢か？イケメンで出世頭。竜也はうちの課のモテ男No.1だろ？4月からの内示も見たよ。昇格おめでと」
横で話を聞いていた同僚の中村は、わざとらしく席を立った。今夜、彼は会員制の婚活パーティーに行くらしい。
「お嬢様ばかりの会員制婚活パーティーなんだ。まぁ、竜也はそんなところ行く必要ないか」
中村は吐き捨てるようにそう言うと、オフィスを出て行った。すると田原が、彼の背中を見つめながら「…なんかイヤな感じ」とつぶやく。
僕は帰り支度をしながら、TwitterのDMに目を通した。
――――――――
タツヤさん
先日、付き合って1年になる彼女にプロポーズしたのですが、ちょっと気になることがあって。お話を聞いてくれませんか？
婚約者の美玖とは、会員制の婚活パーティーで出会いました。彼女の身辺調査をお願いしたいんです。
――――――――
それは33歳の広沢という男からの相談だった。
― へぇ、会員制の婚活パーティーって流行ってるんだな。
この相談事はあまり気にならなかったため、メッセージに返信することはなかった。すると翌日、彼から1通の写真が送られてきたのだ。
未解決恋愛事件File７：結婚を迷っている男
それは、記入済みの婚姻届を写したものだった。
個人情報には、ところどころモザイクがかかっているが…。相談主の広沢さんはこの婚姻届を提出するにあたり、どうしても気になる点があるという。
仕方なく僕は、土曜日の朝9時から広沢さんに電話を掛けてみた。
これは、ある男女の婚姻届です。あなたには、この画像の奇妙な点がわかりますか…？（難易度★★☆☆☆）
「もしもし、恋愛探偵の光城タツヤです」
「タツヤさんですね。電話をいただけて、光栄です」
電話口の彼は寝起きなのか、とても弱々しい声で応答する。
「メールに添付されていた婚姻届、拝見させていただきました。これは広沢さんが書いたものですか？」
「いえ。僕がプロポーズした翌月に、自分の欄だけ埋めて彼女に渡したものです。僕は『2人で区役所に提出しに行こうよ』って提案したんですが『忙しいだろうから、私が出しとく』とかたくなに拒絶されて。
それで何か隠し事があるんじゃないかと、ちょっと疑ってしまったんです。そんなとき、美玖のバッグから書きかけの婚姻届を見つけて…」
「“あの欄”が空白だったと」
「はい…。そういうわけです」
広沢さんは僕の問いかけに、弱々しく答えた。
「美玖さんに離婚歴は？」
「いえ、ないと聞いています。…あるわけない、と信じたいです。美玖の母親はシングルマザーで、大手エステサロンの社長なんです。
彼女自身もいずれ会社を継ぐ予定で、母親の仕事を手伝っていて。だから結婚や離婚をするような暇はなかったはずです」
そのエステサロンは関東のショッピングモールを中心にチェーン展開しており、人気タレントを起用したCMで一躍話題となった会社だった。
社長である美玖さんの母親も、度々テレビで見かけることがあるくらいだ。
「万が一、美玖さんに離婚歴があったとしたら、広沢さんは困るのですか？」
「そりゃあイヤですよ！それに、僕の両親も気にするかと…。
そもそも彼女と出会ったのは、会社を経営している父の紹介で行った会員制婚活パーティーだったんです。身元が割れているから安心だろうって」
「…そうですか」
広沢さんはいつまでたっても、寝起きのような弱々しい声だった。話を聞くと、箱入り息子の彼が今まで交際した女性は美玖さん1人。恋愛経験はほとんどないという。
「あの、広沢さん。美玖さんの過去の婚姻歴は、彼女の戸籍を見ればわかりますよ」
「はい。彼女の戸籍はチェック済みです。婚姻届と一緒にバッグに入ってましたから。バツはなかった」
「じゃあ、初婚ということで合っているのでは？通常だとそうですが…」
「やっぱり、そうですよね！あぁ、良かった…」
広沢さんは僕の声をさえぎり、大声でそう返事をする。このとき彼は、重大なことを見落としていたのだ。
◆
難易度は★2つ。この事件の答えは明日公開！あなたの推理をぜひコメントしてください。
▶前回：飲み会の最中、上司のスマホを勝手にチェックし始める女。そのとき画面に映し出されたモノは…
▶1話目はこちら：同棲中の彼女が、いきなり帰ってこなくなって…？男が絶句した、まさかの理由とは【Q】
▶NEXT：2月15日 水曜更新予定
婚姻届に隠されていた、謎とは…？
