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 アメリカの大手テック企業でレイオフが進められているニュースが、2022年後半から続いている。主だった企業で以下のような公表があった。

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・Amazon: 1万8,000人超・Meta: 1万1,000人・Microsoft: 1万人規模・Salesforce: 約8,000人(出典:各社の発表をもとに作成)

 人数だけを見ると大規模リストラに受け取れ、業界の苦境を映しているように思えるが、実態はそれだけではない。

 Metaのマーク・ザッカーバーグCEOが発言したように、今後のビジネスの発展を読み間違えて採用を拡大しすぎたということは、事実の一面としてあるだろう。また、Mircrosoftもコロナの蔓延によるデジタル関連需要の増加に合わせて自身の拡大を進めたが、コロナの落着きによる減速を認めている。

 但し、先ほどのテック企業のレイオフの人数に離職率を加えると少し違う側面も見えてくる。以下、()内に離職率を追加して紹介する。

・Amazon: 1万8,000人超(5% オフィス職に限る)・Meta: 1万1,000人(13%)・Microsoft: 1万人規模(5%)・Salesforce: 約8,000人(10%)

  一般的にアメリカのテック企業の離職率は高いと言われている。全産業平均でも、2022年12月におけるアメリカの離職率は3.8%となっている(アメリカ労働省・雇用動態調査より)。日本企業が対象にはなるが、厚労省の調査でも、2021年度における情報・通信業の離職率は9.1%だ。

 これらの情報を考慮すると、今回のテック企業の大量レイオフは、必ずしも大きな犠牲や痛みを伴う思い切った判断とは言えなくなる。むしろ、自然減に少し上乗せした程度とも捉えられる。

 ではなぜここまで各社とも大々的に発表したのだろう。1つには株主へのアピールが想定される。各社の置かれる環境は激しい中で、経営陣には何らかの対策が強く求められているはずだ。人員数削減によるスリム化は、その対策として充分アピールになる。直近の利益率も改善するだろう。

 テック企業が苦戦していることは間違いなく、主要企業は軒並み減益を発表している。レイオフは単なる株主へのポーズではなく、必要な「守り」の施策である。

 その一方で、高スキル人材の獲得が難しくなっている現在、スリム化に関する戦略は今後「攻め」に転じた際にそのスピードを左右するだろう。各社はその点も含め今回のレイオフを実施していると考えられる。