4Kコンテンツがさほど浸透していない今、テレビに4K解像度は無駄だという考え方も、それはそれでありだとは思う。だが、テレビはテレビ放送を楽しむためだけのデバイスではない。

テレビに高い解像度が必要な理由はいろいろある。ところが今、日本の市場において、4Kに対応しているテレビは42型超のものだけで、それより下のサイズはHDやフルHD止まりとなっている。リビングはともかく、ワンルームマンションや寝室、勉強部屋、書斎といったスペースに置くには42型超というのは少し大きすぎると感じることもある。でも解像度は4Kであってほしい。

チューナーレステレビとPCモニターのいいとこどりをした「LG スマートモニター」のような製品もある。31.5インチながら4K解像度を備え、webOSの搭載でリモコンからVODアプリを操作できる

○スマホとテレビが高解像度でつながらない

一方、テレビに接続できるスマート機器はいろいろと充実し始めている。ただ、誰もが肌身離さず持ち歩いているスマホに限って言えば、一部のメーカーを除いて消極的ではある。

変換アダプタなどを使ってテレビのHDMIポートに接続しても、ミラーリングなどで映像を映し出すことができない製品も少なくないし、できても解像度がフルHD止まりで、リビングルームに大きな顔で居座る大画面テレビには解像度が低すぎたりもする。これはタブレットなどでも同様だ。モバイル機器は、どうしてここまで頑なに、他とつながることを拒むのだろうか。

スマホがあればパソコンはいらないという考え方も、それはそれでありだ。でも、やっぱりスマホやタブレットでは画面が小さすぎる。

せっかく目の前に、そこそこ大きな画面のテレビがあるのに、それを表示のために使えない、使えても、ただ大きいだけというのでは、せっかくのスマホの能力をフルに活かすことができない。テレビに映し出して高い解像度の大画面で使えれば、役立つシーンはまだまだ増えるのに。

○「大画面デバイス」としてのテレビの可能性

配信動画のように、解像度の高さと視聴体験が、それほど密接に結びつかないものはそれでもいいかもしれない。画質追求よりもカジュアルな楽しみ方の話だ。映画コンテンツも、まだ4K解像度のものは多くはないし、あってもそれを楽しむためのコストが高額だ。

でも、地図を見ようとか、学生やビジネスマンがレポートを書くためにいろいろな情報をかき集めなければならないとか、旅行の計画をたてるのに、複数のサイトを並べて比較したいといったときは別だ。50インチに4K解像度で複数のウィンドウを一画面にたくさん表示して作業したい。

パソコンならそれもカンタンだ。今どきのパソコン、数百円で手に入るようなHDMIケーブルでテレビにつなげば、あっさりと4K解像度で作業ができる。Windowsの100%表示は4K解像度の場合、46インチでちょうど、フルHDを23インチに映し出したときと同じサイズになる。それがWindowsの想定解像度96dpiだ。1インチあたり96個のピクセルが並ぶ。

これなら15.6型未満のノートパソコンのモニタを使って作業するよりも圧倒的に効率が高いはずだ。デバイスとしてのスマホは、そのくらいのことはカンタンにできるだけの性能を持っているのにもったいないことだと思う。

○スマホもテレビに歩み寄りを

これから、まだまだDXが進む社会を考えたとき、そして、高齢化が一段と進む世の中を考えたときに、必要な情報を必要な人に適切な見せ方で表示するデバイスというのは、ますます重要な存在になるだろう。

その役割を担うデバイスとして、確かにスマホは最有力かもしれないが、そのスマホの出力を受け入れて、もっとわかりやすく見せることができる大画面デバイスとしてのテレビも必要なのではないだろうか。

テレビモニターディスプレイは受け身のデバイスだ。何らかの意図をもって情報をインプットしないと何の役にもたたない。

そのインプット手段が壁からのアンテナ線だったり、ケーブルテレビのセットトップボックスだったり、ビデオレコーダーだったり、パソコンだったりするわけだが、それ以外に、スマホも、もう少し歩み寄って組み合わせの実用度をあげてもいいんじゃないだろうか。

著者 : 山田祥平 やまだしょうへい パソコン黎明期からフリーランスライターとしてスマートライフ関連の記事を各紙誌に寄稿。ハードウェア、ソフトウェア、インターネット、クラウドサービスからモバイル、オーディオ、ガジェットにいたるまで、スマートな暮らしを提案しつつ、新しい当たり前を追求し続けている。インプレス刊の「できるインターネット」、「できるOutlook」などの著者。■個人ブログ:山田祥平の No Smart, No Life この著者の記事一覧はこちら