タクシーの中で嘔吐したらクリーニング代を請求される?

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年末年始になると増える忘年会や新年会。それに伴い、終電を逃してタクシーに乗車する泥酔客も増えてきます。

多くのサラリーマンにとって無縁ではないシチュエーションですが、心配なのは「車内で嘔吐すると、クリーニング代を請求される」という噂話です。

基本的に車内で嘔吐した場合、乗客側の「契約違反」とみなされます。なぜかというと、タクシーの乗客は乗車した時点で「善管注意義務」があるから。

このような契約において、車内で嘔吐した場合は善管注意義務違反があったということになり、運転手及びタクシー会社に損害を与えたことに。

つまり運転手側には嘔吐による損害賠償としてクリーニング代を請求する権利があるので、請求された場合は支払わなければなりません。

大手タクシーと個人タクシーによって違いがある

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とはいえ、汚してしまった場合の対処は各社それぞれ。大手タクシー会社の場合は損害賠償などにはならず、クリーニング代の請求のみで終わることも多いようです。

大手であれば運転手や車両を複数抱えているため、たとえ車が一台使えなくなっても代わりの人員・車両を確保できることがほとんど。

営業が続けられる状態にある場合は、クリーニング代以外の補償を求めても大半が認められないそう。

しかし、個人タクシーは大手のように予備の車両などがありません。嘔吐した時点で営業停止になるため、損害賠償を求められるケースもあるんだとか。

休業による実質的な損害額を証明できた場合は、クリーニング代に加えて補償を求められる可能性も。

やむを得ない子供の嘔吐なども対象になってしまう?

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「酒は飲んでも飲まれるな」というのが改めて身に染みた話でしたが、車内を汚してしまうケースはなにも泥酔時だけではありません。

たとえば幼い子どもや体調不良の乗客が嘔吐した場合も、請求の対象になるのでしょうか。

調べたところ、原則的には前述の通り“請求されたら応じなければならない”ようです。

ただしこれはあくまでも原則の話。現役タクシー運転手にお話を伺ったところ、「明らかに泥酔している人に対しては請求しますが、子どもが嘔吐した時などのやむをえない体調不良の場合は目をつむりますね」と言っていただけました。

もちろんこの後に「ドライバーによってクリーニング代を請求するかどうかは異なりますよ」と続きましたが、がちがちのルールで決まっているというわけではないようです。

タクシー運転手は「吐かれるくらいなら営業しないほうがマシ」?

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お話を伺った運転手さんも、実際に車内で嘔吐された経験があるといいます。嘔吐されたときの対処について実情を聞いてみました。

「シートが外せないタイプの車だと営業できなくなることもあります。そのため嘔吐されると正直ものすごく迷惑。嘔吐されたときは、営業保障として別料金を請求することもありましたね」

運転手は原則的に乗車拒否できないため、対策として終電以降の勤務は控えるようにすることもあるそうです。別料金を請求しても、その後の手間を考えれば「運転しない方がマシ」と思うほど迷惑なのでしょう。

これから始まる宴会シーズン。楽しいお酒が思わぬ出費につながらないよう、適度に楽しむことを心掛けましょう。