シリーズ読者投稿〜あの時、あなたに出会えなければ〜 投稿者:Hさん(長野県・50代女性)

Hさんはその日、生後半年の娘を連れ、新幹線で実家に向かっていた。

その途中で娘がグズって大泣きするし始めたので、デッキに出てあやしていると......。

<Hさんの体験談>

今年高校1年生になる娘が、生後半年くらいの頃の事です。

都心から二人で里帰り中の新幹線内で、娘はグズって大泣き。困った私がデッキに立ってあやしていると、年配の男性客が何度か出てきて、声をかけられました。

「まだ泣き止まないの?」

「まだ泣き止まないの?大変だね。大丈夫?」

ビジネスマン風のその人はそう言って気遣ってくれただけでなく、車内で電車のおもちゃを購入して、「こんな物じゃ機嫌直らないかな。お節介だけど子供が好きでね。お嬢ちゃんにどうぞ」と差し出してくださったのでした。

実家から自宅に帰る新幹線内でも娘は同様に泣き止みませんでした。しかも、通路にも人が立っているくらいの込み具合で、デッキに立つこともできません。

私は3列シートの真ん中で、泣き止まない娘に困り果てていました。

その時、そばに座っていた年配の女性二人組のうちの一人が「ちょっと抱っこさせて」と娘を抱きかかえたのです。それによって娘は火が付いたようにさらに大泣き。

もう一人の方が「泣き止まないわね、大丈夫かしら?」と心配してくださる中、娘を抱きあげたおばさまは、こう言うのです。

「まだまだ、もうちょっとおばちゃんのところで泣いてなさい」

「ほら泣き止んだ」

その後、おばさまは娘の大声にハラハラしている私に「そろそろかな。はい、お母さんの所に帰りなさい」と娘を戻してくださいました。

するとあれほど大泣きしていた娘が、私に抱かれた瞬間からすぐに泣き止み、スヤスヤ寝息を立て始めたのです。

「ほら泣き止んだ。知らないおばちゃんよりお母さんがいいわよねぇ」

と、おばさまは言っていました。

見ず知らずの私たち親子にとても自然に優しい手を差し伸べて頂いたのに、お礼もろくに言え無かったのが今も悔やまれます。

この出来事は生涯忘れることはありません。今も事あるごとに思い出して感謝しています。

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