タピオカブーム終焉でもコロナ禍でも店舗数はどんどん増加…「ゴンチャ」が根強い人気を誇るワケ
■タピオカブーム終焉でも店舗を増やすゴンチャ
空前の大流行を巻き起こし、社会現象にまで発展したタピオカブーム。「タピる」や「タピ活」といった言葉も生まれ、メディアやSNSを大いににぎわせた。
それが今では「ひと頃の勢いはどこに?」と思うほど、かつて街中で多く見かけたタピオカ専門店が見当たらない。ブームの下火から、タピオカ自体の輸入量も激減している。財務省貿易統計によると、2019年に1万6772トンだった輸入量は、2020年は5133トン、2021年は2641トンに落ち込んでいる。
渦中の企業だった「ゴンチャ」も、タピ活なき苦境にあえいでいる……かと思いきや、コロナ禍で店舗数を倍増させているという。
代表取締役社長の角田淳さんに理由を聞いた――。
■ブームの終焉、コロナ禍でも店舗数は増加
ゴンチャは2015年9月に日本へ上陸。2018年ごろから始まったタピオカブームも相まって続々と店舗数を広げた。
2年ほど続いたブームが落ち着いた矢先にコロナ禍が到来。外食産業は大きな打撃を受けた。だが、ゴンチャは出店ペースを落とさなかった。2019年時点の店舗数は57だったが、2020年に90、2021年に113と増やし、2022年11月現在で国内123店舗を構える。
タピオカブームの終焉(しゅうえん)やコロナ禍で人流が減ったなかでも、なぜゴンチャは店舗網の拡大を続けることができたのか。
■出店ラッシュを支えているフランチャイズ
「FC(フランチャイズ)に加盟するオーナーの出店意欲が高いんです」
角田さんはそう話す。
「テイクアウト専門のティースタンド型店舗からゆっくり座れるティーカフェ型店舗まで、出店立地によって選べるため、FCパッケージの柔軟性が高い。かつグローバルで約1800店舗と急成長を遂げているポテンシャルが評価され、コロナ禍であってもゴンチャに魅力を感じてくださる方が多く、加盟を希望されるオーナーさまが増え続けているような状況です。
また、約7000億円の市場規模があるプレミアムカフェ市場(コーヒー・カフェ業態の市場)のうち、座ってお茶を飲めるティーカフェ市場は300億円くらいと言われており、そのなかでもゴンチャの店舗数は国内ティーカフェチェーンの中でトップを誇っています。そこに今後の成長の余地を見いだせているのも、FCオーナーに注目される要因だと思っています」
台湾発の「グローバルティーカフェ」を標榜するゴンチャだが、直営店の割合は2割ほどで、出店ラッシュを支えているのはFCに加盟するオーナーの増加が推進力になっているという。
■外でお茶を気軽に飲めるカフェは少ない
「カフェや喫茶店ではティーバッグのお茶が主流であり、どのタイミングで飲めばおいしく味わえるのかがわかりづらい。ゴンチャではそれぞれの茶葉に合わせて最適な抽出方法でいれたお茶を、4時間以内に提供していて、いれたてのお茶を一番おいしい状態で提供できるよう努めています。
『上質なお茶をカジュアルなスタイルで楽しめるティーカフェ』へのニーズに応える存在として、ゴンチャが先陣であると考えています。さらに、タピオカブームをきっかけに甘さの選択やトッピングの追加などさまざまなお茶の楽しみ方、ティーカルチャーが受け入れられたことも追い風になったと思います」
お茶は、煎茶や麦茶など物心つく前からご家庭で見慣れ、親しんでいる方が多い。ところが、大人になってご家庭の外で飲もうとすると、コーヒーを飲めるカフェは数多あるものの、外でおいしいお茶を気軽に飲めるカフェは限られている。
そこにタピオカブームが来たことで、甘くて飲みやすいお茶のニーズが生まれ、ゴンチャのようなティーカフェが支持されるようになったのではないだろうか。
■なぜゴンチャに人が集まるのか
また、FCパッケージの柔軟性、顧客に支持される商品力に加え、FC加盟を後押ししているのが「人材採用の強さ」だ。
飲食業界における人材不足が深刻化するなか、店舗によっては募集人数に対して大幅に上回る応募が集まるという。
「現在、最も頻繁にゴンチャをご利用いただいているお客さまは、同時に店舗で働くクルーの層とも一致していて、“ゴンチャ好き”の方が『店舗でずっと働きたかった』と言ってもらえることも多いんです。飲食店を運営する上でクルーの確保は非常に重要ですが、幸いにもゴンチャのブランド力や認知度の高さによって比較的、採用の苦労が少ないことも、順調にFC展開できている一因になっていると思います」
コロナ禍以降に出店した新しい店舗は、商業施設やショッピングモールへの出店が目立つ。
出店の形態や戦略はどのように考えているのか。
「不動産デベロッパーが立てるMD計画の中で、集客力を見込める飲食店の誘致が大事になってきます。商業施設やショッピングモールへ訪れるお客さまが『お茶を飲んで休憩する』というニーズがあるため、デペロッパー側から『出店いかがですか』とお声がけされることも多い。現状ですと利便性の高い駅ナカや商業施設などを中心に出店していますが、今後は路面店やパーキングエリアへの出店などさまざまな場所への展開をしていきたいですね」
■他のカフェチェーンとの違い
タピオカブームを下支えしたタピオカミルクティーの売上比率を聞くと、「人気絶頂の時は9割を超えていて、現在でもトッピングにタピオカを加えるお客さまは8割に上る。最も人気が高いのは『ブラックミルクティー+パール』」と角田さんは答える。
一過性のタピオカブームで消えることなく、今もなおゴンチャが支持されているのは「ティーを中心とした商品ラインナップを拡充してきたから」だという。
「ストレートティーやオリジナルミルクティーといった定番商品やキャンペーン商品も含め、全てお茶をベースにした商品の訴求ができることが他のカフェチェーンとの差別化につながっています。
ティーなのでフルーツとの相性も良く、ゴンチャではタピオカ以外でもナタデココやミルクフォーム、アロエのトッピングを用意していて、その日の気分に応じて味を変えられる。これはコーヒーでは比較的ないので、ティーカフェならではの強みになっています」
■売れているのはタピオカだけではない
そして2021年12月からは、さらに顧客の日常利用を増やすため、甜品(甘いお菓子)やデザートといったティードリンクに合うフードメニューも取り入れた。
小腹がすいたシーンでデザート感のある期間限定メニューやタピオカドリンクを注文するニーズに加え、レジ前やレジ横のフード商品も訴求することで、売上単価アップを図っている。
「フードメニューに関しては、どんな商品であればお客さまに喜んでもらえるかを試行錯誤しながら商品を展開しています。不人気の商品は落としたりと、PDCAを回しながら取り組んでいます。こうした努力もあって、ストレートティーを注文するお客さまを中心にフード商品を組み合わせる需要が伸びていて、なかでも叉焼メロンパン(チャーシューメロンパン)やエッグタルトが好評です」
前社長の原田泳幸氏から経営を引き継いだ角田さんは、顧客の要望に最大限応える方針へと切り替えた。
以前は「氷少なめ」や「ミルクフォーム抜き」といった要望には応えていなかったが、そのルールを撤廃。
また、効率性を高めるためにタピオカを入れた「ブラック ミルクティー」に注力するなどメニューを絞っていたのを、より多くの顧客ニーズを取り込むため、幅広い商品ラインナップを取りそろえるように転換したのだ。
2022年3月からはレシートのQRコードでアンケートを取得し、顧客の意見を店舗にフィードバックするような仕組みを作っているという。
■「店舗クルーがゴンチャの一番のファン」
こうした顧客目線の店舗づくりが大切で、目標達成に向けては「顧客満足度と店舗クルーの満足度を最も意識している」と角田さんは述べる。
「店舗クルーがゴンチャの一番のファンでいてくれること。これこそ、成長の原動力になると考えています。いわばゴンチャの魅力を広める伝道師なわけで、その視点が抜け落ちないようにしていきたい。
やりがいを持って働ける成長の機会や環境を用意しないといけないと思っています。お客さま視点を忘れないよう、現場に毎週1日程度は行くようにしていて、働く店舗クルーとコミュニケーションを取るように心がけています」
また「店舗数よりもゴンチャが好きなファンの数を追っている」と続ける。
「現在、1店舗における1日あたりの利用者数は平均400人くらいで、500人を超える店舗が出てくれば、その近くのエリアにもう1店舗出店する目安になります。
ただ、新規出店は物件次第なところもあるので、お客さまに寄り添った形でサービスや商品を提供し続けることが何よりも大切だと捉えています。
ゴンチャを利用するお客さまの約8割は女性ですが、男性のお客さまも増えている。日本上陸から7年が経過してさらなる飛躍を目指すためにも、お客さまと共に成長していきたい」
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古田島 大介(こたじま・だいすけ)
フリーライター
1986年生まれ。ビジネス、ライフスタイル、エンタメ、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている。
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(フリーライター 古田島 大介)