日本人には「今行くのは厳しい」状況は続きそうかも…。

円安は「全体的にはポジティブ」の見立て

 新型コロナウイルス感染拡大により大きな打撃を受けた航空業界ですが、日本をはじめ、多くの国で底を打った状態からは脱却しつつあります。航空需要は、どのように回復していくのでしょうか。

 イギリスの航空データ分析会社、シリウム(Cirium)社のハーマン・チェ(Herman Tse)氏が2022年10月、日本の報道陣に対し、航空需要の現況と今後の見通しについて説明しています。


羽田空港に並ぶ旅客機(乗りものニュース編集部撮影)。

 同社は、日本を含むアジア太平洋地域の今後の旅行市場は、2023年後半には新型コロナウイルス拡大発生前の2019年レベルまで需要が回復すると予測。とくに、日本の2022年9月のキャパシティは2019年同月水準を17%下回っているものの、日本がアジア太平洋地域の回復をリードしている状況だそうです。

「日本では、国内線のキャパシティ(座席供給量)が完全に回復していますが、国際線は現在のところパンデミック前の水準を下回っています。しかし、海外から日本への渡航制限が10月14日に緩和されたことにより、需要が戻ることが見込まれています。日本は外国人観光客に人気のある国であるため、国際線のキャパシティがどれだけ早く回復するかに注目が集まります」(ハーマン・チェ氏)。

 一方で、日本のインバウンド客の20%を占めていた中国については「需要のボラティリティ(変動性)が高いままだ」としつつも、2023年6月の需要回復を見込んでいるとのことです。

 その一方で、同氏は注意も促しています。「世界および地域のマクロ経済の見通しは楽観視できず、ほとんどの指標が需要減少の可能性を示唆しており、回復率に影響を与えると見込まれます。また、航空会社は需要の不確実性と厳しいコスト環境に直面しており、需要リスクを悪化させる可能性があります」とも。

「海外では、航空関係で働く人達の人材が不足していることから給与の引き上げが必要になっています。また物価が高騰していることで、パーツの値段が上がり、整備コストも高くなると予想されます。不透明な状況は続くということで、注視を続けたいと思います」(同氏)

 一方、現在の海外渡航に大きな影響を及ぼしている円安は「(全体的には)ポジティブなインパクトと与えると考えています」とする一方で「海外では誘致や旅行喚起を講じている国はあるものの、日本人の方が海外に行くのには影響があるでしょう」と話します。