映画『もっと超越した所へ。』の結末にモヤった人へ。クズ男見極めカウンセラーが説く、男女関係の着地点

大ヒット上映中の映画『もっと超越した所へ。』は、クズ男に沼る4人の女性の物語。最高に楽しめるエンタメ作品だけど、ラストに4人が下す決断に「それでいいの?」と疑問を抱く人が増殖中。クズ男に関する著書があるカウンセラー・見知らぬミシルさんに、もっと幸せになれるかもしれない、別の着地点を聞いた。【※ネタバレを含みますので、ご注意ください】

恋愛に悩む女性たちへアドバイス!

好きな人と上手く付き合いたい、クズなパートナーを引き寄せたくないとは、誰もが願うところ。『成長した女は、その男を選ばない “クズ男”見極め教本』の著者・見知らぬミシルさんが、映画に登場する4人の女性キャラの恋愛傾向を徹底分析。さらに男性キャラの問題点も挙げ、それぞれのタイプ別に対処法を解説してくれました。自分に似ている恋愛タイプを見つけて、恋愛に生かしてみては?

【CASE1】家に転がり込んできたヒモ体質・怜人(菊池風磨)を養う、断れない衣装デザイナー・真知子(前田敦子)の場合

<“断れない”真知子タイプへの提言>

真知子は強引に押しかけてきた怜人をすぐに家に招き入れて、体の関係を持ってしまう、いわゆる断れないタイプ。自分を女性として見てくれて、求めてくれるうれしさがあったから怜人にハマったのかもしれない。でも、それがそもそもの間違いです。

例えば“ランチの1~2時間だけ”など、はじめは家に入れずに、時間の制約をかけて人となりを観察するべきでしょう。自分の見る目に自信がない人は、相手をある程度理解してから距離を縮めたほういい。

断れないタイプには、断れないなりの対処の仕方があるのです。

まずは自分のことをちゃんと理解していないと、男性への接し方を間違えてしまいます。

それと、元カノからお金をもらって生活している怜人に対して、真知子が抱く怒りは正しいのですが、相手のことを理解しようとする姿勢があまり見えず、“一般的な正しい生き方”を怜人に押し付けていると感じました。もし継続的な関係を望むなら、怜人に寄り添い、「一緒に仕事を探そう」とか、「何がいい方法なのか一緒に考えよう」みたいなアプローチをしたほうがよかったかもしれません。ちなみに「私が◯◯してあげる」のように面倒を見すぎるのは、相手の自立を妨げるので厳禁です。

<“束縛する”怜人タイプへの対処法>

怜人は、狭い世界で生きていて、彼女以外と深い人間関係が築けていない。だから、彼女に離れられると困るから束縛する。束縛すると「愛されている」と勘違いして喜ぶ女の子もいるので、それが成功体験だと思い込んでしまう……。この悪循環に陥っている人を変えることは、基本的に難しいんです。なぜなら、怜人は構ってくれる人を見つけると甘えてしまうし、こういうタイプは基本的にモテるから。

愛する人に本気で振られるとか、ある種の拒絶体験がないと学習しません。「人を縛ることはその人の選択を否定すること」、「相手が求めてない優しさは暴力になり得る」ということを、ハッキリ言ってくれる女性がいると、変われるはずです。

【CASE2】ノリで生きるフリーター・泰造(オカモトレイジ)と暮らす、彼氏に染まりがちなショップ店員・美和(伊藤万理華)の場合

<“彼氏に染まる”美和タイプへの提言>

美和は相手のノリにとことん合わせちゃうタイプ。それもすごく大事なことですけど、合わせすぎると、自分の意見が言えなくて、最後には爆発します。美和は、泰造のおもしろキャラが好きなんだろうけど、あまり相手のノリに合わせすぎないほうが自分を見失わずに済みます。

理解することと合わせることは違います。合わせることは、自分を殺して相手に染まる、相手にペースを委ねること。でも、理解することは、きちんとコミュニケーションをとって、“あなたはそういう考え方なのね”と感じた上で、お互いの居心地の良いポイントや、なりたい関係性を探るということです。

ただ、泰造みたいな軽いノリの男性は、やっぱりすごくモテるんです。真面目すぎる男性だと、女性から「つまんない」と思われがちで逆にモテなかったりする。そこが恋愛の難しいところ。泰造みたいな男性との関わり方のコツは、世話を焼きすぎないこと。「あなたの人生は、あなたがちゃんとやって」というスタンスが大事です。

<“とにかく未熟”な泰造タイプへの対処法>

泰造は、空気が読めない、人の気持ちを考えられない未熟さを感じられる性格。そのうえ、妊娠されることが嫌なのに避妊しない、まさにクズ中のクズ。本当にノリだけで生きているんだろうなと感じました。社会の荒波にもまれて成長してもらうしかない。こういうタイプへの対処法は、結局、女性のリテラシーを高めるのが一番かもしれません。

【CASE3】父親の会社で働くあざと可愛いボンボン・富(千葉雄大)と共同生活を送る元子役のタレント・鈴(趣里)の場合

<“相手に執着する”鈴タイプへの提言>

鈴と富(トミー)は共同生活をしていますが、共同生活や同棲は相手が生活の一部になって、その人中心の生活になっていくもの。すると、視野が狭くなって、ほかの人間関係が薄まり、どうしても相手に執着してしまうリスクがあります。

人間関係が固定化されると、他人に対する理解の姿勢が弱くなります。ひとりに執着したり、別れられない人って、圧倒的に普段から関わる人や人間関係が狭い。

その人だけしかいないのではなく、その人しか見ていないんです。

2人だけの世界にとどまらず、外部との関わりを経験して、「人ってみんな違うんだな」、「自分の考え方から外れるような人もいるんだな」と理解できるような環境を作ってほしいです。

鈴みたいなタイプこそ、マッチングアプリをやったほうがいい。そして、“付き合うことがすべてじゃない”という思考にすること。もしくは、「付き合う気がないなら、私はもう一緒にいないからね」と突き放したり、「他に彼氏作っちゃおうかな」と宣言することも、ときには効果的だと思います。

つまり、「私も他の男性と関わるし、ずっとあなたの元に居ると思わないでね」というスタンスを明らかにすること。

“選ばれ待ち”はよくない。自分も“選ぶ側”だと思って接していたほうがいいです。

<“勘違いさせがち”な富タイプへの対処法>

純粋に友達として関わっていたけど、相手から恋愛感情を持たれて、結果的に悪者にされてしまったトミーの心情は、男女ともに共感するところはあると思います。トミーのような仲のいい異性がいたら、相手がどういう関係性を求めているのかをまず明確にしたほうがいいと思います。

もしも自分がトミーの側だった場合、「あなたのことを恋愛対象として見てない」というストレートな言葉は、相手を傷つける可能性があります。ボディタッチはしない、甘やかしすぎないなど、距離感が近くなりすぎないように、行動で示すことが大切です。

【CASE4】プライドが高く、承認欲求の塊・慎太郎(三浦貴大)のお気に入り風俗嬢・七瀬(黒川芽衣)の場合

<“バカにされがち”な七瀬タイプへの提言>

七瀬に関しては、実はあまり欠点が見つかりませんでした。このカップルの場合は、慎太郎が変われば、いい関係になると思います。慎太郎は劣等感が強くて、人の目をすごく気にするタイプ。まわりからの評価にこだわるし、偏見も強い。だから、常連のくせに風俗嬢をバカにしているし、自分の仕事であるエキストラ役もバカにする。

そんな慎太郎に対する七瀬の関わり方は、すごく愛がありました。慎太郎にひどいことを言われても、感情的にならず、慎太郎のことを知ろうとする。偏見もなく、「いいじゃん!」とエキストラの仕事を褒めたところは素晴らしいです。だから、このカップルはゆっくり時間をかけていけば、いい方向にいくかもしれません。

<“プライドが高い”慎太郎タイプへの対処法>

慎太郎は、愛情表現の仕方やコミュニケーションが未熟なために七瀬との衝突が起こりますが、その根底には自信のなさがあります。女性によって自尊心を満たしてもらおうとする慎太郎は、映画に登場する4人の男性の中で、一番厄介かもしれません。

慎太郎みたいなタイプは他人との比較を嫌がるので、その人だけのよさを見つけて褒めるのがいいと思います。それから、自分の失敗談を話して、劣等感や悩みを話しやすい関係性にしていくのもテクニック。例えば、女性側にすごく収入があっても、「仕事は評価してもらえているけど、私ってこういうとこがダメなんだよね」など弱点を晒すと、男性はひがまずにいられます。

過去にしがみつく慎太郎タイプへのアドバイスとしては、誇りを持てない仕事はやめたほうがいいということ。ひとつの仕事に固執しすぎると、価値観も固定化されて、“この仕事で評価得られなかったら自分はダメなんだ”と思いがちに。他の仕事だったら評価が変わって、自信が取り戻せるかもしれません。

【クズ男見極めカウンセラーからの総評】

恋愛がうまくいかなかったとき、女性側は自分には非がないと思いたいので、相手をクズ男に認定しがちです。もちろん、本当に男性がひどい場合もありますけど、自分の良くない部分を認めたくないから、相手を加害者にするパターンもあります。

どうして自分はそんな人を選んだのか、もしかしたら自分がクズ男にしたんじゃないかという視点はきちんと持つべきです。そうしないと、同じことの繰り返しになってしまいますから。

そういう意味で、この映画には、相手をクズ男と認定するだけではなく、女性にも問題があることに気づいてほしいという意図を感じました。

自分が選ぶ相手は、“鏡の関係”と認識しておいてください。人間は、関わる人たちとの関係性で、自己が確立していきます。恋愛相手といい関係性を築くためには、何か問題が起きても、お互いの問題として捉えたほうがうまくいきますよ。

取材・文/宮平なつき

『もっと超越した所へ。』(2022年) 上映時間:1時間59分/日本

クズ男を引き寄せてしまう4人の女性の恋愛模様と、彼女たちの意地とパワーが引き起こすミラクルを痛快に描いたストーリー。それなりに幸せな日々を送っていた4組のカップルに訪れた、別れの危機……。ただ幸せになりたいだけなのに、今度の恋愛も失敗なのか? それぞれの”本音”と“過去の秘密”が明らかになる時、物語は予想外の方向へ!

全国公開中

配給/ハピネットファントム・スタジオ

公式サイト

https://happinet-phantom.com/mottochouetsu/#

©2022『もっと超越した所へ。』製作委員会