「誰かを好きになったら夢中になっちゃう」アイドル、俳優、クリエイター…職業を超越する伊藤万理華の恋愛観

クズ男に沼る4人の女性の恋愛を描いた映画『もっと超越した所へ。』(10月14日公開)で、彼氏に染まるギャル・美和役を演じている伊藤万理華。アイドルから俳優、クリエイターへと活躍の場を広げている伊藤に、役との向き合い方、自身の恋愛観、これからの展望を聞いた。

相手に依存しない、遠慮しない強さを持ちたい

『もっと超越した所へ。』(2022)で美和を演じた伊藤万理華さんと、泰造を演じたオカモトレイジさん
©2022『もっと超越した所へ。』製作委員会

――映画『もっと超越した所へ。』(2022)では、元アイドルのイメージを覆す、金髪ギャル・美和役に挑戦した伊藤さん。役とはどう向き合いましたか?

美和は、登場人物の女性で一番心が弱いかもしれないです。自分の考えを強く言い出せなくて、彼が好きだから相手に染まってしまう。私も夢中になるとまわりが見えなくなることがあるので、その気持ちはすごくわかります。でも、強く見られたいから容姿に頼るしかないんだろうな、と。つけ爪をしたり、金髪にしたり、風貌を変えることで美和を作り上げました。

あとは、実は情が深いというか、軽いようで軽くない。相手に一生懸命合わせている美和もかわいいなと思いながら演じていました。

――彼氏役のオカモトレイジさんとのやり取りがすごく自然でした。

レイジくんとはもともと知り合いだったんですが、偶然相手役になったのでこの機会にもっと仲良くなりたいと思いました。まずは、レイジくん自身をもっと知ろうと、私がインタビュアーのような感じで「なんでドラマーになったの?」だったり、結婚したときの話などを聞きまくりました(笑)。

そして私自身も知ってほしかったので、美和を演じる私のことをレイジくんがどのくらい興味を持ってくれるか探ったつもりです。普段から友達を含めて遊んだり、たくさん話をして、この機会にすごく仲良くなれました。お芝居でそれがみなさんに伝わっていたらうれしいです!

――女性4人の恋愛模様が描かれた映画でしたけど、とくに印象に残ってる女性キャラは?

真知子(前田敦子)のセリフがすごく刺さりました。「好きなものや、趣味がないから依存するんじゃないの?」のようなセリフがあるんです。それを自分も言いたいし、言われたらそう思うかもと(笑)。私はたくさん趣味があるのに、誰かを好きになったら夢中になってしまう。もう両極端なんです! だから真知子みたいに強くなりたいけれど、その強さは私にも美和にも足りないかもしれない。

好きになったら相手に遠慮してしまうこともあるので、そうならない強さを持つ真知子に憧れます。自分の空間を大切にできる、それが一番理想的で、健康的な恋愛だと思います。

――作品に出てくる女性4人は、「ただ幸せになりたい」という思いを強く持っています。伊藤さん自身、自分が幸せになるためにこれだけは欠かせないものってありますか?

家です。「大好きなもので囲まれた場所にいるために頑張るんだ」と思いながら仕事をしてます(笑)。そういう場所がないと仕事へ行ってもきっと不安定になってしまう。だから、安心できる場所は作っておきたいタイプです。帰宅して自分が好きな本や映画、植物などいろんなものを見て「私にはこれがある」と再確認できる場所は欠かせないです。自分の空間で過ごす時間を作り、自分を忘れないようにしてます。

職業やジャンルを超越した人になるのが目標

――感情を爆発させるシーンもありますけど、最近演技以外で感情を発散させたことはありますか?

今、自分で制作中のものがありまして。毎週のようにスタッフさんたちとリモート会議をしています。その会議でめちゃくちゃ泣いたことです(笑)。

自分の不甲斐なさと、考えていることが言葉にできず伝わらなくてどうしよう……という思いで泣いてしまって。でも、スタッフのみなさんはお母さん・お父さんのような目で、「大丈夫だよ」と言ってくださるんです。その方たちに支えていただきながら頑張って進めています。

12月ごろには発表できると思うのでそちらもチェックしていただけるとうれしいです(笑)。

――映画の主題歌はaikoさんが担当。伊藤さんは、乃木坂のオーディションを受けるときに、『カブトムシ』を歌ったそうで、縁を感じますね。

私もびっくりしました! オーディションのとき、父に「歌うなら『カブトムシ』だろう」と言われ、ボイストレーニングの先生に教えてもらいながら一生懸命練習したことを覚えています。そんな過去があり、めぐりめぐって出演した作品の主題歌がaikoさん。すごく縁を感じます。

いつかaikoさんに「私は『カブトムシ』でこの世界(芸能界)に入りました」と伝えたいです。

――アイドル卒業後はおもに俳優業で活躍。伊藤さんにとってのお芝居とは?

自然とお芝居をしている、という感じです。原作と脚本を担当されている根本(宗子)さんとは、舞台でご一緒してそこから何度か声をかけていただき、映画でまた繋がりました。監督は、乃木坂時代にも映画やPVでご一緒したりとお世話になっていた山岸(聖太)さんで。さらに、知り合いだったレイジくんが相手役。いろんなところからの縁が繋がって今がある。すべてのお仕事においてそう感じてます。

だから、これからもお芝居だけでなく、ものづくりなどいろんなことに挑戦したい。誰かを目標にするというよりは、「この人しかいない!」という存在になるのが目標です。職業やジャンルを超越した人になりたいです。

――最後に、作品をどんな人に見てほしいですか?

恋愛をしてる人、恋愛で悩んでいる人にはすごく響くと思いますし、女性が共感できる部分が多いと思います。「好きっていうことを簡単に諦めなくていいんだ」ということがこの作品のメッセージだと思います。

恋愛をしているすべての人が勇気をもらえる作品だと思いますので、たくさんの人に見てほしいです!

取材・文/宮平なつき 撮影/MISUMI ヘアメイク/田中美希 スタイリスト/酒井タケル 構成/松山梢

『もっと超越した所へ。』(2022) 上映時間:1時間59分/日本

原作・脚本は、演劇界の最先端をひた走る劇作家・根本宗子。クズ男を引き寄せてしまう4人の女性の恋愛模様と、彼女たちの意地とパワーが引き起こすミラクルを痛快に描き、2015年に大評判となった舞台『もっと超越した所へ。』を、自ら映画脚本化。家に転がり込んできたストリーマーの怜人(菊池風磨)を養う衣装デザイナーの真知子(前田敦子)。ノリで生きるフリーター泰造(オカモトレイジ)と暮らすショップ店員の美和(伊藤万理華)。プライドが高い俳優・慎太郎(三浦貴大)と、お気に入り風俗嬢の七瀬(黒川芽以)。父親の会社で働くボンボン息子の富(千葉雄大)と、共同生活を送る元子役のタレント鈴(趣里)。それなりに幸せな日々を送っていた4組のカップルに訪れた、別れの危機……。ただ幸せになりたいだけなのに、今度の恋愛も失敗なのか? それぞれの“本音”と“過去の秘密”が明らかになるとき、物語は予想外の方向へ!

10月14日(金)より全国公開

配給/ハピネットファントム・スタジオ

公式サイト

https://happinet-phantom.com/mottochouetsu/

©2022『もっと超越した所へ。』製作委員会

伊藤万理華 いとうまりか

1996年2月20日生まれ、大阪府出身。2011年から乃木坂46一期生メンバーとして活動し、2017年に同グループを卒業。現在は俳優としてドラマ、映画、舞台に出演する一方、PARCO展「伊藤万理華の脳内博覧会」(2017)、「HOMESICK」(2020)を開催するなど、クリエイターとしての才能を発揮。映画『映画 賭ケグルイ』(2019/英勉監督)やTVドラマ「潤一」(2019/KTV)、舞台『月刊「根本宗子」第17号「今、出来る、精一杯。」』、『月刊「根本宗子」第18号「もっと大いなる愛へ」』。2021年は、舞台「DOORS」(倉持裕演出)、地上波連続ドラマ初主演を務めた「お耳に合いましたら。」(TX)に出演。初主演映画『サマーフィルムにのって』(2021/松本壮史監督)では国内映画賞のトップバッターTAMA 映画賞にて最優秀新進女優賞を受賞、第31回日本映画批評家大賞にて新人女優賞を受賞するなど、多岐にわたって活動中。