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 例年よりも少し早めの「1位指名選手」の公表、そして、四軍制の導入。10月10日、福岡ソフトバンクホークスの永井智浩・編成育成本部本部長兼スカウト育成部部長が、オンラインでの会見を開いた。

 そこで語られたのが、チームの近未来像。愛知県・私立誉高校のイヒネ・イツア内野手を1位入札すると明言した。

 「ナンバーワンの評価を集めた。ドラフト1位というのは、その年の一番良い素材に行きたい」

 永井部長はそう称賛した。

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 イツアはナイジェリア出身の両親を持ち、高校で急成長した大型遊撃手だ。

 「ソフトバンクの正遊撃手は今宮健太です。その後釜ということでしょう。でも、今季は投手陣のやり繰りに困ることも多かったので、即戦力投手を指名すると思いました。イツア君は1位でなくても指名できるとも言われていましたが」

 パ・リーグに詳しいプロ野球解説者がそう言う。

 しかし、1位指名選手を巡る各球団の駆け引きはもう始まっているのだ。

 「愛知県の有望球児なので、中日が狙っているとの情報もあります。去年、イツア君の一学年上の先輩投手、川嵜陽仁が巨人に育成枠で指名されています。その絡みで、巨人がかなり早い段階からイツア君を見ていた、と」(在阪球団スタッフ)

 遊撃手・坂本勇人の後継者として、巨人も上位指名を考えていたのかもしれない。

 前出のプロ野球解説者の「1位でなくても」発言だが、それは現時点でのイツアの正当な評価だろう。だが、ソフトバンクには1位指名しなければならない理由があった。

 今さらだが、ドラフト会議の2位以下の指名は下位チームからの完全ウェーバー制となる。2位指名はパ・リーグ最下位の日本ハムから始まり、2番目がセ・リーグ最下位の中日。セ4位の巨人は6番目、パ2位のソフトバンクは9番目だから、イツアは残っていないだろう。

 「即戦力投手の補強を諦めて、というよりも『育成のチーム』の方針を貫いたのかもしれません」(前出・同)

 今オフはエース・千賀滉大のメジャーリーグ移籍も囁かれている。「四軍構想」は第2、第3の千賀を育てるためだが、こんな指摘も聞かれた。

 「育成枠でもいいからプロに行きたいと話す球児もいますが、『進学か、社会人に進んで支配下での指名を待つ』と考える高校生も少なくありません。三軍よりも厳しい四軍となれば…」(ベテラン記者)

 昨年、育成14選手を指名した。史上最多であり、さらに3人の外国人選手とも育成契約を交わした。40人近い育成選手が必死になっていたが、今季、支配下登録70人に昇格した選手は4人だけだ。

 永井部長は「去年と同じくらい」と今年も育成選手の大量指名を示唆していたが、「四軍よりも進学」と言い出す球児が本当に出てきそうだ。中日、巨人との駆け引きも興味深いが、ソフトバンクは2チーム分の選手を抱える“大帝国”となる。(スポーツライター・飯山満)