推し活歴、10年。月1で遠征していた声優ファンが感じた“推し活の変化”

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アラサー独身女性という、おそらく「推し活」を一番謳歌できるであろう層が実際にはどのように推し活を楽しんでいるのかを、「推し」がいないライター・瑞姫さんが「推し活」を楽しむ女性たちにインタビューする企画「令和アラサー女子の推し活事情」。

今回は大阪府在住、みさとさん(29歳・IT系営業職)にインタビューしました。

■推しとの出会いは興味からの“行動力”

みさとさんが推しているのは、声優の宮野真守さんと、岸尾だいすけさん。他にもさまざまな声優さんが好きで推しているそうだが、特に長いのはこの二人だと言う。

その二人の「推し活歴」を聞いてみると「最初に知って好きになったのが10代の頃だったので、ちょうど10年くらい推しています」とのこと。好きになったきっかけは何だったのか。

「大学の課題をやっていた時に、たまたまYouTubeのおすすめに『図書館戦争』のWEBラジオが出てきて聞いていたのですが、パーソナリティを務めていた前野智昭さんと鈴木達央さんがすごく面白くて。気になって調べたら、大阪でその方々が出演する別コンテンツのイベントがあることを知って行ってみたんです。そうしたら、そのイベントに一緒に出ていた岸尾さんを好きになって……。宮野さんはその半年後くらいに好きになりました。声優さんを好きになったのはその頃ですね」

当時まだ学生だったみさとさん。声優が出るイベントに行ったのはそれが初めてだった。

「イベントは『図書館戦争』とは関係のない、乙女ゲームのイベントでした。そのゲームのことは全然知らない状態で、一人で行きました」

その行動力には驚いたが、その当時実際に足を運ばなければ、10年という長い期間推し続けることはなかったかもしれない。ちなみに、みさとさんはイベント後にそのゲームにも興味を持ち、ゲームの本体からソフトまで全てそろえてプレイしたそう。推しがきっかけとなり、「推し活」だけでなく新たな趣味も見つかった。

好きという気持ちが“興味”から始まり、行動によって、より愛が深まっていくのは、恋愛においても「推し活」においても同じかもしれない。

■「仕事」と「推し活」の相互作用

▲朗読劇のパンフレット(提供写真)

声優の「推し活」には一体どんなものがあるのか。みさとさんに聞くと、「声優さんが出ているアニメやゲームのイベントがメジャーです。トークショーや、音楽活動している方だとライブなどもあります。私は朗読劇が好きなんですが、声優さんならではの、感情がこもった読み聞かせはそれだけで泣けたりします」と教えてくれた。

たしかに、朗読劇は声を生業にする声優ならではのイベントだ。聞いていると、会える機会はさまざまなように思えるが、みさとさんの“10年間”と人生の約3分の1を共にした長きにわたる「推し活」は、一体どのようなものだったのか。

▲ライブ前の様子(提供写真)

「イベントが行われるのが基本的に東京だったので、21歳から25歳くらいまでの間は月に1回、最低でも2カ月に1回は推しのイベントの為に東京へ行くという生活を続けていました。学生時代や新卒の時はお金が無かったので、仕事終わりにそのまま夜行バスで東京に行って、イベントに参加して、そのまま夜行バスで帰って、そこから仕事に行く……。ということもしていました」

イベントへ行く為に頻繁に遠征していたというみさとさん。また、25歳のときが一番「推し活」に熱が込もっていたそうで、東京へはもちろん、地方へ遠征することもあったと当時を振り返ってくれた。

「シフト制の仕事をしていたので、1日の休みのために仕事をすごくがんばっていました。当時は営業職だったので、『推しのイベントに行くために結果を出す!』と意気込んでいましたね。仕事で結果を出せばお給料も上がる。そうすると推し活に使えるお金も増えるので、それが原動力になっていました。がんばらなくてもいいけど、仕事も一生懸命がんばった方が、会えた時の嬉しさが増す。だから、今でも仕事は全力でやっています」

改めて、「推し」という存在は日常生活を彩ってくれる存在だなと感じた。仕事への原動力、メンタル的な支えなどと、その推しが存在し、活動し続けてくれるだけで応援している側にとってはプラスになるのだろう。

■長い月日の中での「推し活」の変化

「推し活」は自身の生活スタイルや、心境の変化に合わせて変化していく。長く応援し続けている人ほど、そうかもしれない。

当時実家暮らしだったみさとさんも、一人暮らしをするようになってからは、収入の“3割”を占めていた「推し活」へかける金額や遠征の回数は以前より減っていったという。

「自分で生活していかなければならないので、ある程度『推し活』は制限するようになりました。何度も行って楽しむというスタイルから、本当に好きで本当に行きたいものだけをピックアップして行くようになったことが大きいです」

これまでは気になるイベントには積極的に行っていたそうだが、遠征でさまざまなイベントに行くことを考えていると、モチベーションの維持が難しくなってきたそうで、「『行かなければ!』と義務感に駆られることもあったので、そういう変化に気づいて推し方は変わっていきました」と明かしてくれた。

「近場であるイベントは必ず行っていたので、遠征できなかったイベントでも、プロの人やファンの人が書いたイベントレポートを見ることで『すごいがんばってるな』『幸せな時間だったんだろうな』と満足できるようになりました。それまでは『推し=憧れ』であり、“好きな人”みたいな感じで一直線だったんですけど、少し距離を置くことで、落ち着いて見ることができるようになりました」

自分の生活の中心にあるような、ひたむきに情熱を注ぐ存在から、応援することで自分の日常をより豊かにしてくれる“推し”という存在への変化。自身のライフスタイルを大切にしながら、自分が好きで居続けられる距離で「推し活」を続けることが、大切なのだと感じる。

■推しとの出会いは“百聞は一見にしかず”

推し方は変われど、10年間「推し活」を続け、定期的にイベントやライブに通っていたみさとさん。

インタビューの最後に、私自身に「推し」がいないことを伝え、“どうすれば推しを見つけられるのか”を問うと、「やはり行動するのが一番だと思います。イベントに参加したり、ライブに行ったり……。画面越しや、SNS上ではなく、実際に足を運んで生で見ることで、運命の出会いがあるかもしれない」とアドバイスをくれた。

そして、「私もYouTubeを見て、実際にイベントに行って好きになったので、『この人面白い!』『もっと知りたいな』と思ったら、絶対会いに行くべき。推しとの出会いは“百聞は一見にしかず”です」と、行動力があるみさとさんだからこそ、納得できる素敵な言葉で締めてくれた。

確かに、推し活には“百聞は一見にしかず”という言葉がぴったりだ。「推しは推せる時に推せ!」とはよく言ったものだが、実際に会いに行くことは、自分が推しのことをより知って、好きになるきっかけにもなり、推しを応援することにも繋がる。

「推し活」を楽しんでいる人を見ると、そのキラキラと目を輝かせて話してくれる姿勢がとても魅力的に感じ、「推しが欲しいな……」と思わず思ってしまう。

もし、私と同じように「推し」がおらず、なおかつ「推し」を見つけたいと思っている人がいたら、今回のインタビューでみさとさんからもらったアドバイス通り、一度会いに行ってみることが、かけがえのない「推し」を見つけるきっかけになるかもしれない。

(取材・文/瑞姫)