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ムード歌謡グループ・純烈が世を忍ぶ仮の姿を持ち、皆の憩いの場である温泉施設を守るヒーロー・純烈ジャーとして温泉の平和を乱す悪と戦うシリーズ第2弾『スーパー戦闘 純烈ジャー 追い焚き☆御免』が全国公開中だ。
ストーリー、スケールはさらにアップ! 巨大ロボ「銭湯巨神・純烈王」の登場、八代亜紀が ”女トラッカー” 役で登場するなど、すでに大きな話題を振りまいている。

スーパー戦隊シリーズや仮面ライダーシリーズの特撮監督を手掛け、前作に引き続き本作のメガホンをとる特撮研究所・佛田洋監督に、遊び心に満ちた本作がいかにして生まれたか、話をうかがった。

>>>『スーパー戦闘 純烈ジャー 追い焚き☆御免』場面カットを見る(写真36点)

――まずは、佛田監督がどういうモチベーションを持って続編に取り組んだか、お聞かせください。

佛田 1作目に自分の面白要素を全部ぶっこみましたから、「どうしよう?」っていうのが最初でしたね(笑)。まず巨大ロボを出そう、というのは決めていた。ますますスーパー戦隊に似ちゃうから実はドキドキだったんだけど、これが通った。なので、前の(小林)幸子さんに負けない敵キャラをと思って、演歌系や東映系の役者さんをあれこれ考えたんですけれど結局ダメで、なら相手も巨大ロボにしようと。で、シロクマジンが生まれたわけです。
▲マイナスカンパニーが開発した巨大ロボ・シロクマジン

それに乗る人が本宮泰風さんになったんですが、普段Vシネでよく観るような感じにするとつまらないじゃない? だからああいう奇抜なキャラを企画者104の松井(大)君に考えてもらったんですよ。あまりにバカバカしいんで、もう即決。結局今回の話って『バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲!』(1997年)と同じでね……。

――ああっ、言われてみれば敵の設定がほぼママですね!

佛田 でしょ、奥さんを失った悲しみを理由に悪の道へ進むところとか。あと、何より大事だったのは八代亜紀さん! 「とにかく話がどんなものになろうとも、八代さんが一瞬トラックに乗って登場して、ピンチの純烈を助けて去っていく場面を入れよう。それを俺は観たいんだ!」と主張して。

――『トラック野郎』の八代さんをどうしても再現したかった、と(笑)。
▲八代亜紀演じる、いなせな女トラッカーも見どころのひとつ!

佛田 で、出演OKの返事を貰って喜びながら脚本作りを進めていたけど、これがまた難航してね……印刷所に入れないとやばいギリギリのスケジュールでやってた徹夜の打ち合わせで、煮詰まったあげく「よし、もう八代さんを巨大化させて『舟唄』歌ってもらおう!」って(笑)。そこから純烈王が凍らされて本宮さんが勝利の美酒を飲むと、巨大化した八代さんが登場するを付け加えたんですよ。

――徹夜のハイテンションがそのまま脚本に反映されたと。しかし、本作の重要な場面がそんな形で決まったとは驚きました。

佛田 それでもう1回八代さんに「実は巨大化して『舟唄』歌ってほしいんですが……」とお願いに行ってね。いやー、OK貰えて良かったよ。

――しかし、毎回よく物怖じせずにそういうお願いをしに行きますね。

佛田 いやいや、いつもめちゃめちゃ緊張してるって! というわけで、今回は本当に時間がなかったのよ。クランクイン1カ月ないくらいまで脚本の書き直しをしていたから。例えば、本宮さんの横にいる幹部キャラも、中村優一君、西銘駿君が出ることが決まったけれどキャラづけする余裕がなくて、中村君は(演じていた)『仮面ライダー電王』の桜井侑斗の「最初に言っておく、俺はかーなーり強い!」をちょっともじって口ぐせにしちゃった(笑)。もう思いつくのはそれが精一杯。
▲純烈ジャーの前に立ちふさがるマイナスカンパニーの3人。左から寒川(西銘駿)、哀須永仁(本宮泰風)、郡山(中村優一)。

――それだけ余裕がなかった、と。

佛田 西銘君も「命、冷やすぜ!」とか考えたんだけどさすがにマズいかと思って、彼は寒いギャグを言うキャラにして、あとはコテコテのお笑い演出でごまかしました。というのも、2作目を作る前かな、明治座に純烈公演を観に行ったんですよ(2021年7月)。観に来ているマダムたちの反応ってどうなんだろうと思ってたんだけど、こっちが「古いな」と思うギャグで結構笑ってるんだよね。だから、これくらいの塩梅で良いだろうと。

――リサーチを基にしたコテコテ(笑)。温泉の女神の見習いを演じた、長井短さんはいかがでしたか。
▲白川の新しい赤の女神として登場する恵美梨(長井短・右)。

佛田 深夜ドラマに出ているのをよく観ていて「面白い娘だな」と思っていて、スケジュールを聞いてもらったら大丈夫で。飄々とした演技が面白くてね、周りでも好評でしたよ。でもね、これも余裕がなかったせいなんだけど、白川君と彼女がどう出会ったかを描けなかったんですよ。鈴村君のナレーションの「いろいろあって」でごまかしちゃってるけど、本当はちゃんとそのエピソードが描きたかったんだよ。そこがちょっと惜しかった。

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――さて、今回は巨大ロボ「銭湯巨神・純烈王」も大きな見どころです。

佛田 (デザイナーの)野中剛さんが好きな「伝説のロボット」系デザインですね。超特急で作業してもらって、当初はパルテノン神殿そっくりのデザインだったんだけど、プロデューサーの塚田(英明)君に「『キン肉マン』にそっくりの超人(パルテノン)がいますよ!」と指摘されて没になった(笑)。あと、肩にステージを作るのも塚田君の案でした。ロボの構造的には嘘になるけど、『大鉄人17』みたいに神殿モードからロボモードへの変型も見せたりして、面白いでしょう?
▲シロクマジンと純烈王の激しいバトル!

――最高でした! あと純烈がお世話になった、昨年閉館した「東京お台場 大江戸温泉物語」の地下に隠れていたという設定も泣かせますね。

佛田 あれもたまたま脚本の打ち合わせ中にニュースを聞いて、本格的なクランクインをする前に純烈のラストライブを撮りに行ったんだよ。勿論続編の情報なんか出ていない時だったから「DVDの特典映像を撮りに来ました」と嘘の言い訳をしてね。

――そういうファンへの目線も大事にされて作業をされているわけですね。前作・今作共に純烈と女神のドラマが中心になっているのも、そういう意識があるわけですか?

佛田 うん、誰よりもまず純子さん(純烈の女性ファン)たちに喜んでもらいたい作品ですからね。今回で言うと「ふせ(えり)さんになりたい!」と思ってもらえるように作ろうと。オフロディーテの存在は実在してるのか幽体なのか何なのか……実は設定をカッチリ作っていないんだけど、今回は白川君となぜかアパートで同棲しているというね(笑)。

――銭湯に行ったり日常風景がいちいち古いのも、マダム目線を意識してなんですね(笑)。
▲赤のオフロディーテ(ふせえり)との甘い日々は突然終わりを告げて……。

佛田 そうそう、令和の世だけど割り切って昭和の青春に(笑)。窓際でギターを弾いてるのは『時間ですよ』の天地真理さんのイメージね。ふせさんは浅田美代子さんの「赤い風船」を歌ってたけど(笑)

――今回のバトルシーンは前作のスーパー戦隊オマージュと違って、楽曲とのリンクが強いミュージカル的な演出が印象的でした。

佛田 あれは竹田(道弘)さんが頑張りました。前作は4人のアクションを個性的に見せたけど、「それと同じじゃつまらないよね。曲を先に貰えたら、ミュージックビデオ風に演出するから!」と言ってくれたので、酒井君が曲を用意してくれてね。まあミュージックビデオというか、昔のスーパー戦隊のED映像みたいだけど(笑)。

――そこが良いんですよ!

佛田 うん、面白いものね。あと竹田さんがこだわったのが「女神にもアクションをやらせたい!」と。本当はラスト近くの純烈が工場で変身するところでも一緒に戦わせたかったらしいけど、スケジュールがパンパンだったから、撮影所内でやってもらって。しかし、中島(ゆたか)さんに銃を撃たせたりした時はビックリしたけど。

――そういうところも含めて、『純烈ジャー』の特撮界での立ち位置はつくづく異色ですね。

佛田 仮面ライダーやスーパー戦隊を撮っている若い監督はアメコミヒーロー映画の影響が強いと思うんだけど、この映画に関しては僕と竹田さんの狙う方向は真逆なんですよ。同じことをやっても仕方ないし、そこは酒井君とも一致した。

――ちなみに、本作以降の今後の展開などは考えていらっしゃいますか?

佛田 まだ3作目ができるかどうかはわかりませんが、やっぱり純ブルーの交代劇があるんでしょうね。小田井君にはNASAかインターポールにでも行っていただいて、代わりに純烈のヨーロッパ支部から新たな純ブルーがやって来る……みたいなね。

――ちょっと待ってください、「純烈の海外支部」ってどういうことなんですか!

佛田 それはこれから考えるんだよ!(笑)
佛田洋(ぶつだ ひろし)
1961年10月10日生まれ、熊本県出身。特撮研究所代表。特撮監督としての主な作品に現在放送中の仮面ライダーシリーズやスーパー戦隊シリーズほか、映画『男たちの大和/YAMATO』(2005年)、TVドラマ『美少女戦士セーラームーン』(2003年)など。前作『スーパー戦闘 純烈ジャー』(2011年)に続き、本作を監督。

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