32年前の8月27日、米ステルス戦闘機「YF-23」が初飛行しました。

スペックは高かったものの……


アメリカ空軍の試作ステルス戦闘機「YF-23」(画像:SDASM Archives)。

 1990(平成2)年の8月27日、アメリカの試作戦闘機YF-23が初飛行しました。同機は本格的なステルス戦闘機としてノースロップ社(現ノースロップ・グラマン)が開発した機体で、エドワーズ空軍基地を飛び立つと、1時間弱フライトしたのち帰還しました。

 そもそも、敵のレーダーに察知されずに攻撃目標へ接近する「ステルス機」の研究は、第2次世界大戦のころから進められていました。その後、コンピューターの登場により完成させる目途が立ったことでロッキード社(現:ロッキード・マーチン)が実用化します。

 こうして生まれたのが世界初のステルス戦闘機であるアメリカ空軍のF-117「ナイトホーク」です。ただ、この機体はステルス性を追求した結果空力的に不安定な形状となり、なおかつレーダー未搭載で空戦能力に乏しく、事実上、対地攻撃機といえる性能しかありませんでした。

 そこでアメリカ空軍は、「戦えるステルス機」の開発に乗り出します。航空機メーカー各社からコンセプトデザインを募集、そのなかから選ばれたのが、ロッキード社のYF-22とノースロップ社のYF-23でした。ちなみに、「Y」は試作機に与えられるコードナンバーです。

 YF-23の一見してわかる特徴は「尾翼がV字型」という点です。通常の戦闘機の場合、垂直尾翼と水平尾翼が別個にあることが多いですが、YF-23では両者は統合され、一対の尾翼が斜めに取り付けられていました。また機体のアウトラインは極力、平行線を意識した形状とされたため、競合機のYF-22と比べると、平べったいデザインとなっており、房状のジェットノズルも相まって魚の「エイ」を思わせる形状でした。

 この形状を活かし、スピードとステルス性能は、ロッキード社のYF-22を上回っていたといいます。しかし、アメリカ空軍は生産性や運用コストなどの観点から、オーソドックスな形状をしたYF-22のほうを採用。これによりYF-23は試作のみで終わりました。

 高性能ながら選ばれなかったYF-23。製作されたのは全部で2機のみです。しかしその特徴あるシルエットゆえにファンが多いことから、アニメやマンガ、ゲームなどでは幾度となく登場しています。