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巨大なボディに高い車高で死角が広い

ヘネシー・マンモス・ラム1500 TRXを発進させる。乗り心地は比較的ソフト。タイヤの外径が37インチもある、BFグッドリッチのマッドテレイン・タイヤを履き、巨大な衝撃をなだめこむ、調整式のビルシュタイン・ダンパーがシャシーを支えている。

【画像】1000馬力のモンスター ヘネシー・マンモス・ラム1500 V8のオフローダーと比較 全110枚

アスファルトでもボディが揺さぶられ、細かな振動が伝わってくる。路面から伝わる様々な入力が、筆者の身体のあちこちも震わせる。


ヘネシー・マンモス・ラム1500 TRX(北米仕様)

高速道路へ合流すると、スーパーチャージャーの悲鳴が遠くから耳へ届く。タイヤのロードノイズは大きくなる。脱水中の洗濯機のそばにいるような、そんなノイズだ。

筆者は、古いアメリカ製のピックアップトラックが嫌いではない。むしろ、かなり好きな方だといえる。それでも、マンモス・ラムへ乗り慣れるには時間が必要だった。特に、英国の一般道では。

ボディサイドには大きなドアミラーが付いているが、位置が高くボディも大きく、死角も広い。狭い道をすばしっこく走る、小さなハッチバックが隠れてしまう可能性がある。

交差点へ差し掛かると、一瞬だけ周囲を走るクルマが姿を見せるが、すぐ運転席からは見えなくなる。周囲へ意識を配る必要性が、普段以上に求められる。

ボディが巨大なだけあって、車内は広々としている。ダブルキャブの5シーターだが、運転席に座ると助手席へは手が届かないほど。

激しい加速時はボディのリア側が沈み込む

シートは座り心地が良い。ダッシュボードなどのスイッチ類は、かなりゴツい。カーボンファイバー製のトリムが、あちこちを飾っている。電源ソケットが随所に用意され、ドリンクホルダーは合計14個もあった。

動的能力を高めるべくチューニングを受けた結果、最大積載量は594kgに制限を受けている。通常のラム1500なら、800kg以上は搭載できる。最大牽引重量は、3670kgまで対応するから、大きなキャンピングトレーラーも引っ張れる。


ヘネシー・マンモス・ラム1500 TRX(北米仕様)

甚大なパワーを秘めるピックアップトラックを走らせるなら、バハ・カリフォルニアのような広い砂漠地帯が良い。このマンモス・ラムも、サスペンションのストロークはかなり長く確保されている。

アクセルペダルをフロアへ押し付けると、ボディのリア側が大きく沈み込む。テイクオフ・スタイルになり、ステアリングホイールの感触が曖昧になる。スピードが増すほど、エンジンは轟音を響かせる。

恐らく間違いなく速いのだが、スピード感が伴わない。ジェット旅客機が離陸時に240km/h以上まで加速しても、機内に座っていると余り速いと感じないのと一緒だろう。路面から高い位置にキャビンが位置しているためだ。

それでも、大量のガソリンを燃やしている。燃料系の針は、想像以上に早く傾いていく。1日の取材を終えて燃費を確認してみると、メーターパネルに3.6km/Lが示された。

不思議と多くの人が共感してくれる

体格の良いマンモス・ラムが、英国の狭い一般道で本調子を出せないことは明らか。だが、昨今の地球上では、本領を発揮できる国の方が少ないかもしれない。それでも、30分くらい走ったところで、オートバイに跨ったライダーがサムアップしてくれた。

赤信号で停まると、隣に並んだトラックの運転手が話しかけてきた。ハッチバックのドライバーにも、興味を持ってくれた人がいたかもしれない。運転席からは、様子を見ることができなかったけれど。


ヘネシー・マンモス・ラム1500 TRX(北米仕様)

ブリストルの歩行者が手を降ってくる。アクセルを吹かして、轟音を聞かせて欲しいと要求してくる。マンモス・ラムへ、多くの人が共感してくれているように思えた。不思議なことに、明らかに嫌悪感を示す人には出会わなかった。

日が傾き始めた頃には、このピックアップトラックがひと回り小さく感じらてきた。しかし、英国に住んでいる筆者が買うかと聞かれれば、答えはノー。アメリカに住んでいたら、一瞬悩むかもしれないが、それでも間違いなくノーだ。

それでも、どこかの国のどこかの街でヘネシー・マンモス・ラム1500 TRXを見かけたら、立ち止まって笑顔で挨拶しようと思うだろう。200台限定の貴重なモンスターに。

ヘネシー・マンモス・ラム1500 TRX(北米仕様)のスペック

英国価格:15万ポンド(約2505万円)
全長:5915mm(標準ラム1500 TRX)
全幅:2235mm(標準ラム1500 TRX)
全高:2054mm(標準ラム1500 TRX)
最高速度:196km/h
0-100km/h加速:3.2秒
燃費:3.6km/L(試乗時)
CO2排出量:−
車両重量:3538kg
パワートレイン:V型8気筒6166ccスーパーチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:1026ps/6500rpm
最大トルク:133.7kg-m/4200rpm
ギアボックス:8速オートマティック