近大和歌山からインターハイに出場した坂下は、勉強と部活に“比例関係”があると感じている【写真:宮内宏哉】

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インターハイ柔道、近大和歌山・坂下笑琉が貫く文武両道とは

 柔道の全国高校総体(インターハイ)は5日間にわたって熱戦が繰り広げられ、10日に閉幕した。「THE ANSWER」は文武両道に励み、全国の大舞台に出場した選手たちをピックアップ。10日の個人戦・女子70キロ級には、近大和歌山から坂下笑琉(3年)が出場。和歌山屈指の進学校でハイレベルな学習に励みつつ、これまでに3度の全国大会出場を果たしている。部活と勉強の出来が“比例”するタイプ。両立がもたらすメリットや、継続の秘訣を聞いた。(取材・文=THE ANSWER編集部・宮内 宏哉)

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 過去10年間で2000人以上を国公立大に送りこみ、難関私大にも毎年合格者が出ているなど、和歌山屈指の進学校として知られる近大和歌山。中高一貫校で、柔道部員は男女合わせて10人程度だが、坂下は高2から計3度の全国大会出場を果たしている。

 国公立大に進学できる可能性が高い高校への進学を希望し、和歌山・貴志中から近大和歌山に合格。入試の成績が良かったためか、1年生では選抜クラスに当たる「スーパーADコース」に配属された。ただ、勉強も部活も本当の意味で充実し始めたのは、通常クラスに希望して移った高2の頃からだ。

 スーパーADでは、高い学習レベルに部活をしながらついて行くのが難しかった。通常のクラスより授業数も多く、柔道部の練習には途中参加となる曜日も。さらに自宅で4時間の学習時間を取るように指示されていたが、帰宅して食事などを済ませると夜10時を過ぎていた。

「『やらなあかん!』とも思わずに『おやすみ……』という感じでした(笑)。もちろん最低限はやろうと思っていたんですけど、ついて行けなくなって。中途半端になるなら、通常のクラスで頑張ろうと思いました」

 自宅でも机に向かい、最低限の復習はほぼ欠かさずできるようになった2年生の夏。坂下は和歌山インターハイ予選を勝ち抜き、初めて全国行きの切符を手にした。

 中学時代は指導者が学校におらず、県大会も勝ち抜けなかったが、近大和歌山で一から基礎を教わってみるみる上達。2年冬には、近畿大会で3位に入った。

勉強と部活の充実度が“比例”するタイプ「片方サボると…」

 坂下は勉強と部活の充実度が“比例”するタイプ。「片方サボると、どっちも上手くいかない」。確信したきっかけは昨年秋、選手権予選の団体戦だ。

 後輩2人と決勝まで進出し、チャンスと燃えていた。しかし、大将の自分が勝てば優勝の状況で引き分け、結局代表を逃した。振り返ると、大会前の定期テストの出来も少し悪かったと記憶している。

「先輩として、後輩には柔道も勉強もちゃんとやると示さないといけない。その時期は緩んでいたというか、少し甘かったと思う」

 より文武両道の気持ちが強くなった。毎日の小テストは絶対合格するように、疲れていても自宅で勉強した。「小テストの積み重ねで定期テストの点が取れたり、偏差値が上ったりするので」。昼食など隙間時間も活用し、部活に勤しみながらも学年平均より上の順位をキープし続けられている。

 今回のインターハイも、県予選があった6月に英検2級の2次試験を受験。進学に有利になるケースがあるため受験したものだが、見事全国の切符と試験合格の両方を掴んだ。

「自分には柔道もあるし、勉強もある。行きたいと思った道に進めばいい。クラブが好きだから、勉強がしんどくてもやっている間は忘れられる」

 両立のメリットをこう語った坂下。最後のインターハイは、無念の初戦敗退だった。「ちょっとのミスが負けに繋がったので悔しい。でも柔道を続けて良かったし、忙しくてしんどいときもあったけれど、トータルで見ると楽しくて本当によかった」。団体での国体予選、勝ち抜けば本戦にも出場する予定。志望する国公立大の受験対策と、両立の生活はもうしばらく続きそうだ。

(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)