前期優勝を決めた楽天モンキーズ【写真提供:(C)CPBL】

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「楽天」が地元ファンの前で悲願…激動の前期シーズンを制す

 前後期各60試合制の台湾プロ野球で、楽天モンキーズが7月10日に本拠地・楽天桃園球場で味全ドラゴンズと対戦し、前期優勝を決めた。大歓声の中、チームカラーのクリムゾンレッドの紙テープが一斉にグラウンドに投げ込まれた。

 楽天は開幕からロケットスタートを切り、5月19日には、史上3位タイとなる28試合目での20勝到達、優勝は濃厚と思われた。しかし、台湾で新型コロナウイルスの市中感染が急拡大していた中、地方遠征なども重なり、チーム内でクラスターが発生。1軍の選手・首脳陣がほぼ全員感染する事態に見舞われた。

 チームは失速し、6月13日には2位・統一セブンイレブンライオンズとのゲーム差ゼロに。しかし、ここで首位の座を死守すると、離脱組の復帰もあり次第に復調。最後は統一との天王山2連戦に連勝するなど4連勝で逃げ切った。

 前期シーズンは、各チームが新型コロナによる離脱や主力の負傷といった不測の事態に翻弄された。こうした中、楽天と優勝を争ったのは統一と中信兄弟であった。

 昨季に手堅い野球で台湾王者となった元阪神の林威助監督率いる中信は、躍進を支えてきたブルペン陣が不振に陥り、投手の運用に悩まされる事になった上、打撃陣も長打力不足に泣いた。前期シーズンは首位から4.5ゲーム差の2位で終えたが、前期重用してきた外国人先発3本柱のうち、7勝のモリマンドが7月10日にKBOへ移籍。5勝のスタンキビッチは7月15日に家庭の事情で帰国。ここに来て相次いで2人が退団し、新外国人加入まで台湾人先発投手の奮起が必須となる。

 7月12日に1軍昇格した元楽天の牧田和久は、前期は2試合に登板し、1回1/3で被安打5、2失点とまだベストコンディションとはいえないが、まずは中継ぎでチームの窮状を救う活躍が求められる。

 台湾プロ野球では今季から、台湾シリーズ進出をかけたプレーオフが毎年実施されるようになった。前後期の優勝チームが同じ場合は年間勝率の2位と3位のチームが対戦。前後期の優勝チームが異なる場合は、優勝2チームのうち勝率の低い方の優勝チームと、残り3チームのうち年間勝率が最も高いチームが対戦する。22日からの後期シーズンも熱戦が期待される。

ハーラートップ8勝のコービーや防御率2.20の黄子鵬ら先発陣が安定

 楽天モンキーズの前期の戦いぶりに話を戻そう。「暴力猿打線」と呼ばれる強力打線が売りのチームである楽天は、公式球の反発係数低下を受け、今季、各チームが外国人野手を獲得した中で唯一、外国人選手を投手のみで揃えた。

 林泓育、陳俊秀、朱育賢の主砲3人の調子が今ひとつだったが、前期打率.350、8本塁打、52打点で打撃3冠王となった「台湾の山田哲人」の異名を持つ林立、そして打率3位、リーグトップの16盗塁と今季ブレークした成晉らがチームを牽引。伏兵も活躍し、リーグ随一の打線を構成した。

 投手陣もハーラートップ8勝のコービー、6勝1敗で防御率2.20の黄子鵬ら先発陣が安定。ローテ陣で7割近い勝率をあげたほか、ホールド数トップ2の陳禹勳と朱俊祥、リーグトップ17セーブで防御率0.97をマークした守護神ヘーゲンズなどブルペン陣も踏ん張り、防御率は2.92とリーグ唯一2点台を記録した。怪我新型コロナで長期離脱した昨年のドラフト組や、元ロッテの陳冠宇や元メジャーの曾仁和が後期に期待通りの働きをすれば、投手陣はさらに盤石となるだろう。

曾豪駒監督は涙にじませ「ようやく手に出来た」

 楽天グループは2019年9月、球団身売りを発表していたLamigoモンキーズを買収。ファンの思いを尊重し、本拠地・桃園の「園」と同じ音である「猿」が由来のチーム名を残し、「楽天モンキーズ」に生まれ変わった。モンキーズは2017年前期から2019年前期まで5期連続優勝。2017年から2019年まで台湾シリーズで3連覇しており、豊富な資金をもつ親会社への売却で「楽天王朝」への期待は高まった。しかし、予想に反して一昨年、昨年と半期優勝と台湾シリーズ出場をいずれも逃す結果となった。そのため、楽天にとってこの半期優勝は「至上命令」に近い形であった。

 前身のLaNew、Lamigo時代、チームを7回の台湾一に導いた名将、洪一中監督からチームを引き継いだ曾豪駒監督にとっても初の半期優勝に。試合後、涙をにじませながら「2年間待って、ようやく手に出来た。次の目標は台湾王者だ」と語った。

 楽天モンキーズは、外資が親会社の球団として半期優勝を果たした初のチームとなった。川田喜則CEOは、コーチ陣や選手の奮闘に加え、春季キャンプ前から綿密な戦略を立て、これをしっかり執行できたことが大きかったと振り返り、今後も補強の手を緩めないと強調。NPBの楽天ゴールデンイーグルスと共に、この秋日台の「楽天」が頂点に立つことを希望した。

 そして、今回の前期優勝の大きな鍵と言われているのが、「楽天人脈」による日本人指導者の加入である。昨年10月、まず川岸強氏が投手コーチに就任、1、2軍を巡回し投手力の見極めを行うと、今季は2軍投手コーチに就任し、若手の底上げを図った。

 また今季から、昨季まで3年間、同じ台湾プロ野球の富邦ガーディアンズでバッテリーコーチを務めていた古久保健二氏が1軍ヘッドコーチに、西村弥氏が1軍の守備走塁コーチに就任した。曾豪駒監督も、特に走塁や守備面の意識、そして戦術実行において、日本人コーチのサポートは大きかったと感謝した。(「パ・リーグ インサイト」駒田英)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)